不可思議な話の正体を掴め
ライカの暴走を誰か止めてください!←オイ
キィ……パタン
「おぉ、やっときたか。」
ラスがドアを開けて入ると、ライカがイスに座ってくつろいでいた。
のんきなものである。
「まあ、とりあえずその辺に適当に座ってくれ。」
ライカは立ち上がり、
部屋に置かれていた紅茶のような飲み物を新たに2人分淹れ、テーブルの上に置いた。
テーブルを囲うように置かれているイスの1つに座ると、ラスに自分の前の2つのイスを交互に指差し、次いで、笑いながら左隣のイスをぽんっと叩いた。
「レイはこっちで。」
レイが言われるまま素直にライカの隣に座ろうとすると、ラスがレイの腕を掴んで引きとどめ、
ライカの正面に座り、レイを自分の隣に座らせた。
『ラス、どうかしたのか?』
ラスはレイの疑問に答えずに、無言のままレイをじっと見詰めながら口を開いた。
「レイ、ああゆうのは無視していいんだ。
いや、しなさい。
ああいう好色なのは無視してないとヤバイことになるからな?」
レイはそういうものなのかと納得し、言われた通りラスを無視した。
ラスは
え? 俺? 無視するの俺なの? ライカじゃなくて? レイ? ちょっと、レイさん? おいコラ、ライカ! 無視するな。
と慌てていたが、ラスはいない(設定)ので、レイとライカ(ああゆうの扱いされたので密かに怒っていたらしい)は反応しない。ついにラスがイスの上でレイに向かって泣きながら土下座し始めたのでレイは渋々ライカに頷くと、満足したのかライカは話し始めた。
「さてと、
いきなりの話だが、ギルドのクエスト受注のボードを見たか?
少し前から段々と北の国の辺りのクエストが増えてきていたんだが、すっかり今では五分の一のクエストが北の国に関するものばかりが貼られているんだ。
北で近々何か大きなイベントがあるかもしれない。
住民たちが噂しているのさ、北の国の森がおかしいってな」
レイとラスはその情報に顔を見合わせ、考え込んだ。
モンスターが増加しているとは、はたして鬼が出るか、蛇が出るか
「ただ…」
ライカは何か言いよどんだ。
レイは中空に向けていた視線を戻し、柳眉を潜めて、訝しげに訊いた。
『どうしたんですか?』
ライカは頭を振ると、諦めたかのように言い出した。
「実のことを言うとな、勿論、少し変わっただけのイベントなのかもしれない。
ただ、情報が少なすぎてあまり分かっていないことなんだけど、今回の異変はどこかおかしいんだよ。
住民たちは皆NPCだが、噂話に関しては、結構人間的になるようにプログラムされているのは有名だから知っているだろう?
だから分かったんだが、珍しく住民たちが本気で困惑を表してしているんだ。
こっちはあまり知られてないが、住民はバグには困惑を表すように設定されているからな。」
だからもしかしたら厄介なバグかもしれない。
そう言うライカにラスが突っ込む
「可笑しいだろ。そんな騒ぎになるようなデカいバグを放っておくか?
いくらなんでも誰か、たとえば月の王のプログラマーたちが何か処置するだろう。」
あいつら優秀だし、レイはどう思う?
考え込み、黙ったままのレイに訊ねた。
レイは考えを纏めたのか、
テーブルの上のコズカというお茶に似た木からできた紅茶を一口飲み、口を湿らせてから口を開いた。
『今の段階では、まだはっきりとしたことは言えないが、
いつものイベントかは、住民の本気の困惑のことがあるから、多分違うだろうし、
バグだったとしたら、今までプログラマーに直されていないことから、相当深刻なものなのかもしれない。
どちらにしても、相当やっかいなものになるだろうな。』
ラスとライカは話が重くなり始めたことにげんなりとなる。
ラスは空気を軽くするために努めて明るく言った。
「じゃあ、レイ、俺たちで異変のあったところにでも行ってみようぜ。
何か分かるかもしれない。」
ライカがどうするんだ? とレイを見ると、
レイも行ってみたかったのか、すぐに返事をした。
『そう、だな。
情報も少ないし、私たちなら何か出てきてもそうそう遅れを取ることも無いだろう。
今日はもう時間が無いから一旦終了して、明日にでも行こう。』
明日の夜10時に月の王を始めよう。
ライカは2人を交互に見た。
2人共行く気満々のようなので、少しでも役に立てばと情報を教える。
「一番、異変が多いのは北の国より少し西にあるセレスの森だそうだ。
俺も北の国の首都にちょっと用事があるから途中まで一緒に行くよ。」
セレスの森と言ったとき、一瞬レイの紅茶を飲んでいる手が止まった。
『セレス…』
じゃあ、俺、先に終了するな。
おつかれー、とラスが月の王から去った。
ライカが先ほどのレイの動揺に気付き、声をかけようとするが
『それでは、ライカ、明日の夜10時に街の砦の門のところで待ち合わせしましょう。』
また明日に、とレイが先に消えてしまった。
後には残されたライカが残っているのみだった。