未知の領域に歩を進めよ
この世界での料理法は大きく別けて二種類ある。
一つは、直接切って、煮て、焼いて、ようするに普段とかわりない料理法である。
もう一つは、料理スキルを使って短縮するというやり方だ。
こちらは時間が掛からないが、若干直接作った時よらも味が劣ってしまうので、もっぱら料理の上手な人や、忙しい時にしか使われない。
今回は疲れているので後者の料理法を取ることにした二人は、手慣れたように食材を適当な大きさに切ってゆく。
『どちらがやる?』
「レイの方が料理スキル高いからレイで。」
『ん、分かった。料理』
二人に切り刻まれた食材がフワリと浮き上がり、淡く発光した。食材は集まると回転し出し、一瞬強く光ると目の前にはシチュー皿に入った四人前のチャウダーがでんと置かれていた。
同じようにパンやサラダを作り、後片付けをした。
まだ湯気の立っている料理を運び入れると、腹が減っていたのだろう、リャスとガリオスは歓声を上げた。
無理もない、今日一日歩いていたのだから。
料理の味は好評だった。是非またの機会に食べたいとまで言われて、ラスもレイも満足した。
そのあとは代わる代わる風呂に入り、二つあった寝室を当然の如く二人(レイとラス、リャスとガリオス)ずつ分け、早々と四人は部屋に籠もった。
ラスはさっそくウインドウを開くと、武器を出したり道具を出したり、果てには指先一つで喚び出せる小モンスターを喚び出したりしては首を傾げていた。
やっていることがムチャクチャなラスにレイは疑問を浮かべるが口には出さず、日々の日記を綴った。
《今日一日で大分進んだ。危険な道だったから早く通り抜けたかったそうだ。
そのためだろうか、明日からはペースを落とすらしい。これから何事もなければ一週間ちょっとほどでつくそうだ。
パシエンシアの花を使ってみたところ上質のハイポーションが出来た。これは結構役にたちそう。
明日は皆より早く起きて散歩がてら摘んでおこう。山小屋の辺りには魔物の気配の気配もしないし一人でも大丈夫そうだ。
さて、さすがに明日も早いのでそろそろ筆を置くことにする。》