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月の王の冒険  作者: ユマニテ
第二章  《惑星セレネミス編》
22/33

違和感に気付き思考せよ


『・・・セレス国では、虹晶(イリスシュタイン)や魔石、ダイヤモンド等の宝石などの鉱山資源のほかに野菜類や畜産などの食物資源、さらには歴史的建物や景勝地などの観光資源と、ほぼ完璧な国である。

しかし、国王不在のため国内の出生率がここ数十年減少の一途を辿っている・・・?

なぜ王がいないと出生率が低下するんだ?

・・・またグリムリ国では・・・。』


ラスが起きたときには既にレイがリャスに貰った冊子を開き読んでいた。

新しいページを読んでいるようで、ラスには聞き覚えがない。


「はよ、レイ、どうだ、飲み込めたか?」


『おはよう。だいぶ、豆知識とかも書かれてて面白かった。うん、満足。』


満ち足りた猫のように目を細め、レイはそうのたまった。


『朝食ならもう出来てる、いま解除するから食べて。』


テーブルの上には出来たばかりに見える料理が置かれていた。

不思議なことに湯気が出たまま固まっている。


『《時間停止解除(タイムストップリリース)》』


詠唱することなく短縮されたそれは短縮呪文スピードスペルと呼ばれる物で、通常よりも多く魔力を使うためあまり多用されない、しかも、時間や時空に関するものは例外以外は上級魔法(アッパーマジック)に属する物である。

ラスでさえ、《時間停止タイムストップ》以外は詠唱するのが基本だ。《時間停止(タイムストップ)》は何故かLv300を超えれば簡単に使えるようになる。


そんなものを片手間に、しかも朝食にかけるなどどいう他人が見れば説教物だが、ラスも似たようなものなので気にしない。

こうして二人の非常識は誰にも知られぬ間に続いていくのだった。




「おはようさん。もう快眠やったわ。

んで、ここで話すか、部屋で話すか?」


二人が食堂に向かうとリャスとガリオスが朝食を取っていた。

リャスは昨日と同じオートミールのような物を、ガリオスはパンに野菜と肉を挟んだ物を。

先に食べ終わったガリオスが食堂を見渡し、ため息をついた。


「我としては部屋で話したい。ここでは少し話しづらい。」


「わはった。あつまふとしたらお二人さんのとほがいひばんひろひからほほでいいな?」


食物を口に含んだまま話すので聞き取りづらいことこの上ない。

ガリオスにいたっては顔をしかめて心持ちリャスから離れている。


「マナー違反だぞ。んでもってオレらの部屋だな、分かった。先に行ってるからゆっくり食べてから来い。

ガリオスも一緒に。」


「む、ならば一度我の部屋に寄ってもらってもよいか?

今日立つのだろう、荷物を持ってゆく。」


イスを引いて立ち上がったガリオスは朝食を返してくるとそう頼んだ。

勿論三人に断る理由など無かったので、リャスを残し、ガリオスの部屋に向かった。



「ここだ、入ってくれ、すぐに仕度する。」


ガリオスはそう言うと、広げていた地図や筆記具を片付けていった。

ラスは腕を組んで見守っているだけだったが、レイは触っても差し障りもなさそうな物をガリオスに渡している。


『これは・・・?』


レイがふと取った物は二人には見慣れない形をしていた。

なんとなく腕に付けるリングだとは思うのだが、短い間に感じたガリオスが実用性の無い物を旅に持っていくとは考えられなかったレイには不思議に思う。

銀色の美しい二つ揃いの三連のリングは互いに繋がっており、腕に潜らせることが出来るようになっている。


「それか、それは腕に付け、剣を受け止める時に使う物だ。

見た目がアクセサリーだから誰も気にしないと思って持ってきたんだが、我には似合わんし、不要の物だと旅立った後に気付いて処分に困っている。

そうだな、レイ、レイなら似合うと思う、貰ってはくれないか、繊細な見た目に反して頑強な作りになっているから。

レイは後衛型だろう? もしものために付けるといい。」


受け取ったリングを再びレイに渡そうとするが、審美眼が確かなレイには高価な物だと分かるため首を横に振った。


(冗談ではない、そんな高価な物を貰えるか。)


「レイ、貰っとけよ、どうせ受け取らなかったら捨てるつもりだぜ。」


レイの心情など知らず、気楽なラスの言葉にガリオスは無言で頷いた。

やはり、無駄な物は持たない主義のようだ。


「うむ、さよう。受け取らないなら捨てるぞ、どうする?」


ニヤリと意地の悪い笑みをみせ、レイに形ばかりの選択を迫る。


『(この狸共め!)うぅ、分かりました。ありがたくいただきます。』


納得がいかないまでも、レイはリングを受け取り、左右の腕に付ける。

潜らせるまではレイには大きかったリングが付けると縮み、ピッタリとあった。

魔法が掛かっていたようだ。

そういう魔法を知っていた二人は気にならなかったが、なぜか元の持ち主であるガリオスは気付いていなかったようで、驚いている。


「む、そんな魔法が掛かっていたのか、どうりでピッタリと合ったわけだ。」


謎が解けたとばかりに頷くガリオスに二人は釈然としない思いを抱く。


「さて、これで仕舞いだ。さあ、ゆこう。」


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