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月の王の冒険  作者: ユマニテ
第二章  《惑星セレネミス編》
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最初の目的地を定めろ

寒くなったり暑くなったり、まさに三寒四温ですね、身体が弱いほうなので毎日微熱が続いていますが、負けずにがんばりたいと思います。

本来、虹晶(イリスシュタイン)というものはとても硬質で、ダイヤモンドで地道に削っていくしか方法はないと言われている。

しかし、魔術師の間では半信半疑ながら脈々と受け継がれてきたもう一つの方法がある。

それは


「ハンパない魔力を一気に注ぐ、やな。

まさか本当やったとは思っても見いひんかったわ。」


呆れたように、しかしリャスは眩しい物でも見るようにレイを見た。


「ハンパない、ね。ま、オ……レイだしな。

逆に言えばレイで割れなかったら誰が割るって話なんだけどさ。

レイは魔法に関することなら知識面でも技術面でもあっちの世界では随一の力を持ってたぜ。」


『オの次に何が来るのかは聞かないでおいてやる。

まあ、魔法に関することがハイエルフの特性でしたから。デメリットを補って余りあるメリットということです。』


その言葉に一応納得したのかリャスはもう一つの方法を話し出した。


「もう一つの方法はな、いや、その前にまず、基本として赤の平均魔力保持量を一とする。

橙はその四倍の保持量の四、黄は十六、って感じに四を掛けていくと分かりやすいで、紫で赤の四千九十六倍、つまり紫一人で赤の者の四千人分の魔力を持っとるってことや。

それだけですごいってことが分かるやろ?

そんで、配られとった虹晶(イリスシュタイン)は赤の五千倍以上の魔力を注がれると砕ける……らしい。」


最後のほうは自分の言っていることの滑稽さに気付いたのか小さくなってゆく。

さもありなん、レイ自身も半信半疑なのでしょうがない。


『つまり、私の魔力保持量はまだ未知数ってことですか?』


「言ってしまえばそういうこっちゃな。でも王都に行ったら簡単に分かるで。

王都セイレーンにある王城の中には虹球こうきゅうの間っちゅうところがあってな、その名のとおり部屋の中には大人一人半ぐらいの球体の虹晶(イリスシュタイン)が真ん中に安置されとるんや。

虹球は二段階目、つまり藍紫とかやな、まで計れたり、紫紫以上までも計れたり、それを数字に出したり出来る物なんや。」


ま、言うたら虹晶(イリスシュタイン)のスゴイ版やな、と、どや顔で見てくるリャスに、パチパチと気のない拍手を送るラス、そして二人を頭の片隅に置いたまま一人マイペースに考え事をしているレイ。

まったくもって協調性がないことこの上ない。


しばらくはそのままだったがふとリャスが固まり、次いで叫ぶ。


「せや! 危うく忘れるところやった。あかん、あかんで!

あのな、セイレーンで思い出したんやけど、お二人さん、すまんけど一緒にセイレーン城まで来てもらうで。」


何を言い出すかと思えばそんなことかと、曲がりなりにも国王になるのだから当然そのつもりだった二人にとっては何を今さら、なことのため、心配して損したと安堵して息を吐いたのだが、

そうとは知らないリャスは二人のついたため息を誤解し、慌ててその理由を述べた。


「あのな、藍以上の色が出た者は一回虹球の間で詳しく計ることが義務付けられているんや。

これは国際会議で決められたことやからどこの国でも同じやで。

虹球の間はたいていの国には作られとるからそこんとこどこでも計っていいんやけどな。

ま、セレス国の虹球が一番デカくて精度が高いんやけど。ふふん。

やから、レイだけやなくてラスにも計ってもらわなあかんねん。」


ふうん、とやはり魔法をあまり使わないがゆえに興味がないことが丸分かりなラスの返事とは対照的に、

先ほどからどうにかして虹晶(イリスシュタイン)を手に入れて解析してみたいと好奇心で一杯のレイ。

そこにレイにとっては朗報が。


「レイ、レイ、アレやったらセレス国で採れるから結構他所より簡単に手に入るで。」


ぱああ、とレイの周りに花が散る幻覚が見えて慌ててリャスは首を振る。

あれー、おかしいな、寝不足でワイ一瞬幻覚が見えたで、とラスに言おうと横を向くが当の本人はほのぼのと喜んでいるレイ(幻覚付き)に悶えていた。

変な人おるでー、レイー、逃げやー。


いつ何時グリムリ国との間で戦争が起こるかもしれないという暗い世情の中、ほのぼのとした雰囲気が漂う。(若干一名疲労困憊しているのは無視)

藍二名に紫超えが一名というまさしく人外魔境。

事態は始まる前から既に決していたと、後に苦労することになる王の側近は語った。

最強ともいえる三人がこのような状況のため、意外と未来は明るいかもしれない。

とりあえず、まだ見ぬグリムリ国に黙祷を捧げておこう。



「あかん、ラスは一見ツッコミに見えてボケやった。そやかてレイは天然ボケやし。

ワイには荷が重過ぎるんとちゃうか?」


どよよんとした雰囲気で哀愁に満ちたリャス。



「ゴホンッ、えーとな、明日にでもこの村を出発したいんやけど。」


会話も終わり、レイが出したティーセットで食後のお茶を楽しんでいると、藍色の美しい手帳に目を通していたリャスがそう切り出した。


『明日、ですか。随分と早いですね、もう少しこの村で常識を学んでおきたかったんですが。

分かりました、何か理由があるのでしょう、後で食料でも買い込んでおきますね。』


「何で早く出るんだ?」


別にどうでもいいが一応のために聞くラス。


「出来るだけ早く王位につけたいのもあるんやけど、実はこん村ん中にダークエルフがおるみたいなんや。見つかって騒ぎにならん内に出よう思ってな。」


ダークエルフは肌の色が黒く、エルフより少し力が強く、逆にエルフより少し魔力が弱い以外はエルフとそう変わりはない。

そのため普通の住民には区別がつかない者が多い。

幸いこの村はセレス国に近かったためエルフとダークエルフの不仲について知っていたのでリャスに教えてくれたのである。


「教えてくれたおっちゃんによるとな、一人でセレス国に入国しようとしとるらしい。しかもセイレーンを目指しとるらしい。

で、そいつよりも先に着いた方がええと思ってな。」


何ともまあ物騒な香りのする話である。開戦間近と言われている敵国に一人で乗り込む。

すわ宣戦布告かと男が聞くと、どうやらそうではないらしい。

むしろ和平を申し出に行くとのことだったそうだ。


「何と言うか、急展開な話だな。」


『…何かがあったのだろうか。』


「分からん、分からんから先に着く必要がある。もしくは監視も含めて一緒に行くか、やな。」


リャスの言葉を聞いてレイが微笑む、その瞬間ラスは立ち上がり一歩引き、リャスも背中に氷塊が落ちる思いがした。

反応の仕方に経験の差が出ている。


『……何ですか二人ともその反応は。』


「「いや、別に。」」


さっと二人はあらぬ方に目を逸らした。

じっとレイは二人を見つめていたが


『はぁ、別に変なことは考えてないですよ。

ただそのダークエルフと会ってみたいな、と思ってただけで。』


((十分たいしたことなんじゃ……))


ガタ…コツコツコツ…


『部屋に戻っていますね。』


「まて、レイ、オレも行く。」


コツコツコツ…パタン


「……つまりそいつ探して来いってことかいな、しゃあないか、はぁ。

いくらこん村が小さくても一人を探し出すのは大変なんやけどな。」


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