古の石から開放せよ
長らくです。
テストが近いので遅々として進んでくれません。
遅くなって申し訳ありませんでした。
それからのリャスの説明は長かった、途中何度も脱線しかけたが、そのたびにレイとラスに軌道修正されていた。ぶっちゃけ何回もラスに殴られつつも話し続けるリャスはレイには不気味にも見えた。
要約するとこのような話であった。
「通称虹の七色って呼ばれとる。赤橙黄緑青藍紫や。
順番に下から教えてくで、
赤、全然魔法の才能が無い奴や、剣士とか魔法を使わん職業に就くのが大半やな。あと、アホ面しとる奴が多い。
橙、人間は大体橙やな、《火球》とか簡単な魔法を使えるようになるから魔法剣士に多いな、補助として使うてはるわ。
黄、これは魔術師見習いとか魔力を付与する職人あたりがおる。どっちになるか迷って大変らしいで。
緑、さっきも言った気がするけどこの色は魔術師に多いな。あと魔族とかもそうやったと思う。この辺から数が激減するんや。
青、こん辺りから人間やったら一流の魔術師呼ばれるな。竜族やダークエルフがだいたいこの色やったで。
藍、これはもう人間には無理やな、伝説の魔術師! とかやったら藍に行くか行かんかやったんやろな。種族的にはエルフは青と藍の中間ぐらいやからワイの紫がかった藍はすごいんやで。
最後に紫なんやけど、この至高の色はもはや失われたって言っても過言やない。」
とかなんとかこれでも要約したほうだ。
「最後の紫色を持っとったんはセレス国の国王、そして最後のハイエルフであった太陽王フォイボス。
彼が突然亡くなってはや百年、セレス国に王はおらん。セレス国の国王になる一つにして絶対の条件には紫を持つことが必要やからや。
でも、もう王がおらんのも限界に近い、国王がおらんかったらいくら宰相らが頑張っても国は弱体化する。
昔からセレス国を狙っとったグリムリ国が最近不穏な空気を漂わせているっちゅー話やさかい、一秒でも早く誰かが紫をもっとる奴を見つけるためにセレス国を一歩でも出る住民は虹晶を持つことが義務付けられているんや。」
やから、試してみてくれへんか? 二人やったら紫がでる気がするんや。
頼む。
常の飄々とした空気は鳴りを潜め、真剣に、熱望するように二人を見詰め、テーブルの上に置いていた虹晶を捧げるかのように差し出した。
『そう言われても、私たちは異世界人ですし、第一そんなに私たちに魔力があるとは思えません。』
「いいんや、別に王になっても旅とかしてくれたらいい、紫ってだけでグリムリ国への威嚇、抑止力になるんや。
それに、たとえ紫やなくても自分の色を知っておくのは大事やで、ギルドに入るときとかに優遇されたりするで上位者は。」
「ふうん、国に縛られないのか。
ところで、今さら過ぎるんだが、お前ってセレス国の者だったんだな。」
内心、話を聞きながらレイを国に縛り付けようとするなら殴って気絶しているうちにレイと逃げようと考えていたラスが話に加わる。
そんなことも知らす暢気にリャスは
「そうやで、ワイはセレス国の王都セイレーンに住んどる。
職業は学者兼魔術師。昔はフォイボス王付相談役もしとった。幼馴染ってやつ。
種族はエルフや。」
ほれ、とエルフ特有の尖った耳を見せる。確かに髪で今まで隠されていた耳は人外のものだった。
「話を戻すで、とりあえず、もう何でもええからこの虹晶を触ってくれ。
大丈夫、痛いとか危険なことはないから。ほい。」
二人が頷くのを見てリャスはポンっと大事にしている割には気軽にラスに向かって放り投げた。
空中で虹晶はその色を除々に白く、透明に戻していくが、ラスが受け取った瞬間に先ほどよりもより濃い色へと変化してゆく。三人が息を潜めて見守る中、その色は限りなく紫に近い藍でとまった。
「惜しい! あとちょいやったのになあ、それでもワイよりかは魔力保持しとるんやな、大体藍紫くらいか?
王都に戻ったらもっと高性能なんで色を更に分けれるやつがあるんやけど、赤赤から紫紫まで。
ワイは藍青、ラスは多分藍紫やな。」
地団駄を踏んで悔しがっていたが、すぐに学者らしく分析に熱中しだした。
ラスはそう言われても基本剣ばかり使うのであまりピンとこないようだ。
ふうん、と気のない返事をして、隣で虹晶を覗きこんでいたレイに早々に渡そうとした。
リャスは本命のレイが手を触れるのを固唾を呑んで待つ。
『きっとラスより少し上ぐらいの魔力ですよ。そんなに期待されても………!?』
ピキ……パリン!
…やっと……出…
レイがラスから虹晶を受け取ったと同時、あっという間に色が紫に染まった。
それだけに留まらずヒビが入ったと思うと数多の破片となって割れてしまった。
レイは目を瞑っていたので、ラスとリャスはそもそも見えないので、誰も見ていなかったが、割れた瞬間何かが虹晶から出て消えていった。