恐ろしき事実を忘れ去れ
今日は私の誕生日なんです。
誕生日に投稿できるってうれしいです!
これからもよろしくお願いします。
『それにしてもラス、このお金、とっても見覚えがあるんだが、私の気のせいだろうか。』
注意深く金貨だけを見つめ、技術、《分析》を使ってからはぼんやりと眺めているレイが尋ねた。
実はラスも気付いていた。
「現実逃避したいのは一緒だが、あえてはっきりと言おう。
この金貨とオレたちが月の王で使っていた金、しかも最小単位は一緒だ。
もっと言ってしまえばオレたちの所持金は6000万F越えだ。一時期稼ぎまくったからなあ。
単純計算したら……いや、やっぱ止めよう。兆って出てきた気がする。6兆とか、ないだろ。
そうだよな、月の王で1Fが分かりやすいように金貨でも現実で1Fが金貨だったらどんだけ金が安いんだってなるよな。
はあ、どうするこれで使えてしまったら一気に億万長者だぜ。」
ハハ、でかすぎて使い道とか思い浮かばねえな、と現実を突きつけながらも自分の言っていることの現実感のなさに笑い出したラス。
一億円なら見たことあるぞ、と慰めているのか余計に混乱させているのか分からない相の手をいれるレイ。
一言でこの状況を言うとしたら混沌である。
カチャ、パタン
「どうしたんや、ワイがおらへん間にずいぶんと憔悴しとるけど。」
『いえ、大丈夫です。
それより、これを見てもらえますか。』
リャスが部屋に入ってくる少し前に金袋を出して、月の王で使っていた硬貨を取り出してリャスに渡す。
受け取ったからには、とじっくりと鑑定して、やがて本物やな、これがどないしたんや、ってより金もっとったんかい、突っ込んだ。
『実はこの金貨は向こうの世界で使っていた物なんです。』
「それは良かったやないか。」
『それが最小単位だったり……』
ピシッっという音が聞こえてこないのがおかしいほどにリャスは瞬間的に凍結した。
おとなしく二人のやり取りを聞いていたラスはご愁傷様とばかりにリャスの肩を叩いた。
すがるようにラスを見るが無情にも首を横に振る。
「じょ、冗談きついで…そんな、まさか、本当で?
…いくら持っとるん?」
除々に現実を受け入れだしたリャスが、何故か右手の親指と人差し指を曲げて引っ付かせて丸を作る。
とはいっても事実をそのまま伝えるわけにはいかないので現実で使っているサイフの中身を思い出してそれを伝える。
「確か……二、三万だったような。」
リャスはムンクの叫びのような格好をしている。
「二、三万! ってことはえっと二、三億ってことやろ。
大金やなあ、盗まれんように気をつけるんやで。
特にレイ! 一緒に浚われんなや。」
言われなくても分かっている、とばかりにラスは立ち上がってイスに座ったままのレイを抱き込む。
(所持金が一千万を超えていると言ったらどうなっていたのやら。)
まあ、考えても詮無いことを、と頭を振って思考を切り替える。
「ところで、この世界での魔法の一般的水準はどのくらいなんだ?
ちなみにオレらの世界ではさっきの《圧搾》とかは一般的だったぜ。」
「ええなあ、そっちは魔法が発展しとるんやな。
魔法は得手不得手あるけど皆使えるで、魔術師って名乗っとる奴らの平均はだいたい緑色やな。
ち・な・み・にこのスーパーダイナマイトデンジャラスなワイはなぁ、なんと藍色なんやで! しかも若干紫色がかった! どや、すごいやろ?」
…………
「……なんや?」
『…すいません、何ですか、緑とか藍とか、何かの程度だとは分かるんですけど。』
リャスはレイの話を聞くなり隣の、どうやら隣に泊まっているようだ、部屋に駆け込み、しばらくガサゴソという音が聞こえてきていたが、音が止まるとまたすぐに二人の部屋に飛び込んできた。
手には出るときには持っていなかった握りこぶし大の結晶を持っている。とても綺麗な藍色で少し紫がかっているようにも見える。
その結晶を二人の前に置き、説明しだした。
少し興奮しているのは今から話す話が好きな分野なのだろう。
「これが魔力を計ることの出来る結晶で魔力の保持量によって色を変える特性を持っとるちゅう珍しい結晶、虹晶や。今は藍色に紫がかってワイの色になっとる。
色は下から順に赤橙黄緑青藍紫と変わってく。世界の比率的には赤:橙:黄:緑:青:藍:紫=20:40:20:10:8:2:0ぐらいか。
たとえば、魔力がからっきしない奴やったら赤やな。この世界はたとえどんなに少ない奴でも魔力を持つから。」