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月の王の冒険  作者: ユマニテ
第二章  《惑星セレネミス編》
13/33

この世界の常識を叩き込め

ためておいた小説を一気に消化しました。

事態の重さを本格的に悟った二人はこうなったからには、と腹を据えてリャスを睨むように見つめる。

気圧された感のあるリャスは若干腰が引けている。


え? なんかワイ食われそう…


「おふたりさん? 目が、目が怖いで、もうちょっとリラックス、リラックスせなあかへんで。

とりあえず、あんさんらが異世界人だと仮定して、この世界のことを説明しとくな。

この世界は大小……いくつや? まあ数十の国がある。大国で言うと、東西南北の国、中央にあるギルド主体のツンフト国、北西にエルフや竜族が集まって暮らしてるセレス国、ツンフト国を間に挟んでセレス国の反対側の南東にあるダークエルフや魔族、知能のある高位モンスターがおるグリムリ国。あとは小さい国やな。

どや、ここまでで知っとるのはあるかいな。」


どうやらまったくの知らない世界ではないようだ。だが、セレス国、グリムリ国というのは月の王の世界には存在していない。

そのことを話すとリャスは難しい顔をして部屋にあった机から地図を持ってきてテーブルに広げた。レイとラスは密かに技術(スキル)、《暗記(メモライズ)》を使って地図を新しく登録した。


「これがこの世界セレネミスの地図や、セレス国とグリムリ国が無いちゅーことは、五大国と小国だけか、基本的には戦争してないことは一緒やな。他には……」


世界が違えば常識も変わってくるようだ。

たとえば、挨拶で頭を下げると相手への隷属を示したりするので間違えたりしたら大変だ。

 

「はー、これは超天才学者なワイが常識を叩き込んどいた方がええな。」

『できればお願いしたいです。』

「分かった。とりあえず誰でも知ってそなことだけ教えとくわ。

この世界の共通通貨はフェザー言うんや。」


ジャララ…コトリ


「いいか、見てのとおり左から銅貨、銀貨、金貨、んで、ここにはないけど白金貨、晶貨や。

銅貨一枚が1(フェザー)、銅貨百枚で銀貨一枚分、銀貨百枚で金貨一枚分、以下省略や。簡単やろ?

ん? どんくらい価値があるか? そやな、この辺りの村やったら、メシ食うのに銀貨四、五枚あったら十分やで。

一般的な初心者の冒険者用の剣やったら金貨一枚あったら買えるとちゃうんかな。曖昧? ワイ剣なんて使わへんし、知っとるのは杖ぐらいやで。

じゃあなんで剣で説明しようとしたか? 知らへんよ、そんなん、なんか天の声? が聞こえてきたんやもん。

なんやねん、電波系って、冗談に決まっとるやろ。

……何の話しとたっけ? ああそうや、杖は金貨二枚はいるで、どうしても魔法触媒(マジックカタリスト)を付けて魔力を付与せなあかんから割高になるんやってさ、これ武器職人の友人の受け売り。」



……………………


…………



「…ご苦労さん、こんくらい覚えとけば、あとは遠いところから来たって言えば誤魔化せるやと思うで。


そういえば、もうこんな時間か、三時間も話しとったんやな、今日はここに泊まるやろ?

宿のオバちゃんに言ってきたる、ここ二人部屋やからここでえやろし。

戻ってきたら何かお金と交換できそうなんと交換したるわ、ほなチャッチャといってくるから待っとき。」


キィ…パタン


返事をする気力も無いのか、一気に沢山の知識を詰め込まれ、ラスはテーブルに突っ伏して手だけをヒラヒラ振っている。

さすがにレイも頭が痛いのか、情報を処理しているからか、米神のあたりに手を当てている。


『本当に私たちは異世界、もしくは月の王という0と1の世界にきてしまったみたいだな。

夢か何かだと否定するにはここは現実リアルすぎる。

世界観が月の王に酷似しているらしいことが救いだな、これでわけの分からない世界だったら目も当てられなかっただろう。』


先ほど《圧搾コンプレッション》で出していたセキルのジュースを飲んで、頭を使いすぎてほてった身体を冷ましながら、レイはどこか自分に言い聞かせるように呟いた。


いつの間にか雨は止んだのか雨音は聞こえず、夜独特の静寂と共に、下の階のおそらく食堂の辺りから人のざわめきが聞こえてくる。どうやら夜は酒場と化すようだ。

と、いきなりラスが顔を上げてレイに太陽のような笑顔を惜しみなく見せる。


「とりあえず、目下の目標はどうやったら帰れるか探すこと! んでもってせっかくの異世界だ、楽しまなきゃ損だ!

でも、死んだら帰れるとか生き返れるとかは分からないから試せないな、蘇生魔法(リヴァイヴマジックがあるかはあとでリャスに聞いといたほうがいいな。

とはいえ、ま、気楽に行こうぜ、ケ・セラセラだ。

レイ、そんなに気にしてもどうにもならない、気をもむなよ。」


どうやら何かふっ切れたようだ。

元から楽観主義のきらいのあるラスは、レイに危険のあることでないかぎり気楽である。

既にこの世界に胸を躍らせている。

そんなラスを見ていると、レイはなんだか自分だけ真剣に考え込んでいるのが馬鹿馬鹿しくなってきた。


ああ、ラスは…


『ふふっ、そうだなこうなったらとことんまで探索してやろう。

頼りにしているよ、ラス?』


意味深な笑顔で見つめられ、蛇に睨まれたカエルの気分を味わいながら、あ、これはちょっと早まったかも、とラスは早くも少し後悔した。

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