エピローグ「豪華な祝福と未来への光」
春の陽光が、帝都の中央にそびえ立つ大聖堂のステンドグラスを通り抜け、床に七色の光の模様を描き出していた。
今日は、ガルディナ帝国皇帝マルコと、その伴侶となるルシアンの結婚の儀式が行われる日だった。身分や種族を問わず、帝国中から集まった貴族や有力者たちが、祭壇へと続く赤い絨毯の両脇に整列し、息を潜めて二人の登場を待っている。
重厚な鐘の音が三度鳴り響いたのを合図に、大聖堂の巨大な扉がゆっくりと開かれた。外から差し込む圧倒的な光の束を背に受けて、二人の人影が姿を現す。
マルコは皇帝の威厳を示す純白と金糸の軍服風の礼服に身を包み、堂々たる足取りで前を見据えていた。そして彼のエスコートを受け、腕を組んで歩くルシアンの姿は、この世の誰よりも美しかった。
銀糸で緻密な花の刺繍が施された純白の衣装は、歩くたびに光を反射してきらきらと輝いている。ルシアンは緊張からか少しだけ指先を震わせていたが、マルコがその手にそっと自分の手を重ねてくると、すぐに穏やかな微笑みを取り戻した。
赤い絨毯をゆっくりと進みながら、ルシアンは周囲の景色をまぶしそうに見つめていた。
ルシアンの心にはもう、過去に対する怒りも悲しみも残っていなかった。彼の中にあるのは、今この瞬間の圧倒的な幸福と、隣を歩く愛する人への深い感謝だけだった。
祭壇の前に到着すると、最高位の神官が重々しい足取りで二人の前に進み出た。
「ガルディナ帝国皇帝マルコ。そして、その伴侶たるルシアン。神の御前において、汝らは互いを永遠に愛し、病める時も健やかなる時も、支え合うことを誓うか」
神官の問いかけが、石造りの壁に高く反響する。マルコはルシアンの方へと向き直り、その両手をしっかりと握り込んだ。
「誓う。私の命と魂のすべてを懸けて、この者を永遠に守り抜く」
マルコの言葉は、低く、しかし揺るぎない力強さを持って大聖堂の隅々にまで響き渡った。ルシアンは瞳を潤ませながら、真っすぐにマルコの黄金の瞳を見つめ返した。
「私も、誓います。私の生涯のすべてを捧げ、マルコ様とともに歩んでいくことを」
澄み切った声が空気を震わせた瞬間、ステンドグラスから差し込む光が、二人を祝福するかのようにいっそうの輝きを増した。
マルコがゆっくりと顔を近づけ、ルシアンの唇に誓いの口づけを落とす。触れ合う唇の温かさと、鼻先をかすめる愛しい匂いに、ルシアンはそっとまぶたを閉じた。
参列者たちから、割れんばかりの拍手と歓声が湧き上がる。それは、帝国の新たな未来を祝福する希望の音だった。
唇を離し、マルコが愛おしげにルシアンの髪を撫でる。ルシアンは満面の笑みを浮かべ、マルコの腕にしっかりと身を寄せた。
絶望の淵から救い出してくれた、この強く優しい手。もう二度と離すことはない。冷たい雨の夜から始まったルシアンの旅は、最も温かく光に満ちた場所で、永遠の安らぎを見つけたのだった。




