第6章 神気を身に着けて
ファンタジー小説と言っておきながら、まだ思いっきり普通の学園モノです。
途中から異世界転移するので、それまでごゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。
「磯良姉ちゃ~ん!」
私、夢來は磯良姉ちゃんがいる3年2組の教室に飛び込んだ。
「あ、チビだ」
真横から聞こえた声に私は身がまえる。右に立っていたのは自称磯良姉ちゃんの彼氏、一木戸隼だ。
何であんな完璧人間の磯良姉ちゃんと最低な一木戸隼。どうしてその2人が付き合うんだろうか。
分からん。
「チビじゃないです!隼君は呼んでない‼磯良姉ちゃんを呼んだの‼」
「あっそ、磯良ね。」
隼がクラスの奥の方に向かっていく。しばらくして磯良姉ちゃんが来る。
「待たせてごめんね。あとで隼は怒っとくからさ。で?どうしたの?」
「ううん。あのさ、磯良姉ちゃん‼私ね紬が立ち直れるように頑張ってるんだ!」
「そう。上手くいってるの?」
「うん。紬、会うことは絶対に拒絶するからプレゼントをお母さん越しに渡してもらったの。それで、そのプレゼントの中に私のLINEIDを書いた紙を入れておいたの。そうしたらLINE繋いでくれたんだ」
磯良姉ちゃんがフーンと興味のなさそうな声をあげる。
「磯良姉ちゃん?」
「それじゃあ道のりは遠いわね。夢來はLINEを繋いで何をしようとしたの?」
思わず口ごもる。それは……
「紬をLINE上で励まそうとしたんでしょう?」
「そうだけど、何か悪いの?」
「LINEのデメリット。それはLINEを読んじゃったら鋼のメンタルがない限り返事をしなきゃいけない。紬目線で考えてみなさい。もし夢來が励ましのメールを送ったつもりだったとしても、そのメールに対して紬ちゃんが返信をしたくなかったら、紬ちゃんは対応に困っちゃうでしょ?だから、夢來は手紙に書くべきだったのよ。そうしたら、返事を書きたかったら返事を書いていたし、返事を書くことが嫌だったら返事を書かなくてもいい。そうしたら紬は自由になるでしょ?今紬は混迷状態になってるのよ。そういう子には選択肢と自由が必要なの。」
磯良姉ちゃんに言わせるとなんでもスッと心に入って来る。
「でももうLINEを繋いじゃったんでしょ?」
「うん。じゃあどうすればいいのぉ」
「LINE上では素朴な話とか雑談しかしないことね。それなら紬も気を使わなくていいからさ」
「分かった。ありがとう」
ちょっと厳しめだった磯良姉ちゃんの目がすこし優しくなる。
「応援してるからさ。いつでも相談しに来なよ。頑張れ‼」
磯良姉ちゃん……神!磯良姉ちゃんがさっと私の前から立ち去る。磯良姉ちゃん?
「コラ!隼⁉夢來に何って言った⁉」
「あたっ!なんだよ磯良!チビとしか言ってねーし!」
「だからチビって言うなってことを言ってるんだって分かんないわけ⁉」
あ……磯良姉ちゃん、隼のこと本当に叱ってくれちゃった。
「磯良!分かった!分かったから!もう言わないって。この通りだ!許してくだちゃい~!」
「あんたね!そういう時だけ可愛くするんじゃないわよ!」
うん。相変わらず磯良姉ちゃんは強いなぁ。頼もしいんだけどね……
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「夢來ちゃんって最近紬がこないからって落ち込みぶりやばくない?」
紬と2人で菜穂花達の話を聞いてるときはそこまで気にしてなかったけど1人だとやっぱり気にしてしまう。
「分かる。私たちが誘ってあげてた時に私たちと仲良くしておけばよかったのにね。」
「ま、もう遅いけど。誘ってあげた時意地張って私たちを拒絶してたもん。」
でも、菜穂花達と仲良くしないようにしてることにはなんにも後悔してない。
うっ⁉なにこれ……頭がグワングワンする。誰かの記憶を見ているわけでもないのに頭の中がどんどんパンクしそうな感じになる。これ、なに?病気?それとも神力関係?……
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「桜川さん大丈夫ですか?」
「う……ん、ここは...えっと。あっ!浅田先生!」
あれ?私気持ち悪くなって、その後どうしたんだろう。ここ、保健室じゃん。
「突然倒れたから診てくださいって6年の宮本さんが担いできたけど」
磯良姉ちゃんが⁉ありがたいけど何で私が倒れてることに気づいたんだろう。
中2の教室と中1の教室って離れてるよね。たまたま通りすがった?まさか……
「どう?もう気持ち悪かったりしないかな?」
「はい。もう大丈夫です。そのぉ、私なんで倒れたんでしょうか……。病気じゃないですよね」
「今は良く分かんないけど、とりあえず帰ったら病院に行ってみなさい。今もう16時だから仲良いお友達と一緒に帰るといいわ。安心でしょ?」
「はい。色々とお世話になりました。すみません」
磯良姉ちゃんと帰りたいけど、磯良姉ちゃんは確か委員会で居残りだって言ってたし。
仕方がない、朔ちゃんと帰るか……。でも、こっちから朔ちゃんを誘うのもこっぱずかしいんだよなぁ。
私には1度朔ちゃんと私の熱愛報道をされたという苦ーい思い出があるのだ。
「じゃあ、さようならって……」
ドアを開けた先に立っていたのは朔ちゃんだった。
「朔ちゃん⁉ちょっ、なんでこんなところにいるわけ⁉」
「お前が突然倒れて宮本さんに運ばれて心配しない幼馴染がいるかよ……」
「う...」
後ろをチラッと振り向くとニヤニヤとした顔で浅田先生がこちらを見つめていた。
うっ、誤解しないでね!
先生同士の間で変な噂広げないでよね‼これ以上みられて誤解をされたくはない!
私は慌ててドアを閉めた
「夢來、ちょっと話したいことがあるんだ」
朔ちゃんの話したいことってお説教くらいしか思いつかないんだよなぁ。耳タコだよ。
「お前のソレ、神力関係だと思うんだ」
ん?ソレって突然気持ち悪くなったこと?
「それ、俺も経験したことがある。俺の場合は10歳くらいの時のことだ。神力はいつも一定に増えるわけじゃない。もちろん、中々思うように増えない時期もあれば突然爆増する時期もある。一度突然倍増する。たぶん、それが今回だ。俺の時の場合は目眩だけで済んだが、お前の場合はより増える量が多いのか?まあ良く分からないが...。1か月程度後遺症が残る場合もあるが、夢來の場合は大丈夫かもしれないな。」
「……ちょっと待って。いったん整理‼えっと、要するに私はこれから神力が爆増するから具合が悪くなるってこと、なの?えええ‼困るんだけど‼もし後遺症のこっちゃったら......もうすぐ体育祭じゃん!」
「うるさい。でも、神力が増えれば新しい能力も付く。俺の場合はテレポーテーションだな。」
「テレ....ポーテーション?」
「瞬間移動のことだよ」
「シンプルに言ってくれればいいのに。へんに難しい言葉使ってカッコつけないでよ」
「カッコつけたい訳じゃない」
でもさ、今私元気じゃない?後遺症のこらないタイプかも!
「でも私めっちゃ元気、ほら。今だって普通に話してるし歩いてるじゃん」
私は手をブンブン振り回して見せる。朔ちゃんがはぁ~とため息をつく。
「調子に乗ってると神力の病も先天性のバカも悪化するぞ」
「朔ちゃん?2個目何って言った?」
気づくと朔ちゃんが消えている。まったく。都合の悪い時にすぐ逃げるんだから。
そういうの、逃げ足が早いって言うんだよ。




