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第2章 友情

ファンタジー小説と言っておきながら、まだ思いっきり普通の学園モノです。

途中から異世界転移するので、それまでごゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

あれ?菜穂花と紬と、他のみんながいない……。いつもだったら放っておいたはずだけど、今日は何となく探した方がいい気がする。

 

 「これが感ってやつなのかな……」

 

 私は教室を出た。廊下……いない。トイレ……いない。いない?ん?いたぁっ!!個室に、紬と菜穂花達。

 私は一瞬声を掛けようとした。……?いつもの和やかな雰囲気じゃない。私は陰からストーカーのように覗いてみる。

 

 「ねぇ紬。昨日夢來と帰ったんでしょ~?」 

 

 え!?私の話⁉菜穂花が尋常じゃない笑みを浮かべながら紬に問う。

 

 「え……うん。まあね。」

 

 紬がたどたどしく答える。私の手が汗で濡れる。

 

 「え~ひど~い。そうやってウチのこと捨てるんだ。ウチよりも夢來のほうがいいんだ。ひどいよぉ~。」

 「そ、そんなつもりじゃない!人聞きの悪い事言わないでよ!」

 「……紬って最悪。ウチが悪いってわけ?」

 

 私の頭の中で、昨日見たな他の過去に出てくる女の子達と今の菜穂花が繋がる。

 さっきまでの可哀そうぶりが一転して凄みのまじった表情になる。

 

 「ウチの事捨てた上に、ウチらを責めるわけ?ぶっ、信じらんない。」

 

 菜穂花が紬に1歩近づく。

 

 「せ~っかく今まで仲良くしてあげてたのに……」

 

 声がいつもと違う。ここに居ちゃダメだ!夢來は出来るだけ足を立てないようにその場を離れた。

 3時間目のチャイムが鳴る。数学の先生はもう教室に来ているのに、菜穂花達はまだ帰ってきていない。

 

 「おい、やけに人が少ないな。誰か知っているやついねぇか?」

 

 さあ……と他のクラスメートたちが首をすくめる中、夢來はおそるおそる手を上げた。

 

 「あの……さっきトイレで見かけました。」

 

 言い終えた後で夢來はしまった……と思った。もしかしたら、菜穂花達に陰から覗いていたことがばれちゃうかも⁉あぁ、神様、仏様、雷様ぁ……。

 

 「おぉそうか。ありがとな夢來。ちょっと見に行ってくる。」

 「おい菜穂花、紬、お前ら何やってるんだ?もう受業始まってるぜ?」

 

 先生……ノリ、軽いです。菜穂花、何て言うんだろう。自白はしないだろうけど。

 

 「あ!せんせぇ!みんなで押し蔵まんじゅうしてたのぉ。チャイムに気が付かなかった。てへ。」

 

 菜穂花のおっとり口調が聞こえてくる。菜穂花の裏を知る先生はいない。

 

 「そうか。これからは気を付けるんだぞ?まあ、平和なのはいいことだ。」

 

 先生、ぜんっぜん平和じゃないですけど...。菜穂花、紬一行が教室に戻って来る。

 

 「よし。じゃあ起立!礼!」

 「よろしくお願いしまぁす。」

 

 菜穂花の声が後ろから聞こえてくる。紬の方を見た。いつもは明るく色で表したらオレンジって感じの紬が青ざめている。私は……関係ないよね?算数のノートを開く。どうしよう。不安で、心配で、怖くて、授業が頭に入ってこない。

 

 「じゃあ夢來、この問題説明しろ。」

 「えっ、ええっとですね……」

 

 まっさらな頭をたたいてみた。うひゃ。余計に頭悪くなりそう。慌てて黒板に書かれている図形を目に

 焼き付けた。

 

 「えっと、関数y=ax²のグラフは放射線で軸はY軸で頂点は原点です……」

 「そうだな。夢來さっきからどうしたんだ?ちゃんと受業聞いとけよ。」

 

 ふ~。心臓が口から飛び出る‼まあ私は頭がいいから答えられたけど。

ちなみに、私前回のテスト、放物線の放を方って書かなければ100点だったし!

 …………………………………………………………………………………………………………………………………

 「今日の復習、ちゃんとやっとけよ。起立‼礼‼」

 

 終わった~。紬に何か悪いことしたかな……?紬の席へ向かった。

 

 「え、あ、あのぉさ?」

 「………………」

 

 きっ気まずい!助けてぇ。

 

 「紬……?」

 「さっき見てたんでしょ?」

 

 紬が私を上目遣いでにらみつける。

 

 「え?見てたっていうか、ただ通りすがったっていうか……」

 「うそつき。私知ってるんだから‼ずっと見てたじゃん!夢來のせいなんだよ⁉

 なんであの時助けてくれなかったの?助けるまではいかなくても、せめて先生に報告するとか、方法あったじゃん!それで大丈夫って遅いよ。大丈夫なわけ……ないじゃん……」

 

 紬の言葉の回数だけ、胸を劈くような衝撃が走る。胸がズキリと傷んだ。

 

 「……ごめん」

 「ごめんで済むなら怒ってないよ。今更あやまる必要ないから。もういいよ。あっち行ってくれる?」

 「……うん」

 

 申し訳ないのと、これ以上傷つきたくないのとで、私は顔を合わせないようにしながら席を離れた。

 紬のいう通りだ。私が悪いのに。

 

 「あれぇ?夢來さん、何で紬なんかと話してるのぉ?私たちと話そうよぉ~?」

 

 なんか?昨日まであんなに仲良くしてた紬の事を、ちょっと別の人と帰ったからって〝なんか〟って

 いっちゃうの⁉

 

 「……い、今は……」

 

 ガタンッ。紬が音をたてて立ち上がった。

 

 「紬?」

 

 紬は私のことを1度にらみつけると、教室から走り去っていった。

 

 「ほぉら、夢來さん、一緒に話そうよ~」

 「……う、ん」

 

 声が震えた。断れない自分がただ憎らしかった。

 女子達の話題はすぐに紬に移る。

 

 「紬ってサイテーだよね。」

 「マジそれな。菜穂花があんなに仲良くしてあげてたのにねぇ」

 

 私、今どういう状況?私のことを遠回しに悪いっていってるの?

 

 「でもね、夢來ちゃんは何にも悪くないんだよぉ」

 「うんうん、確かにね。」

 「そうそう。」

 

 周りの人は菜穂花に合わせて行っているだけなんだろうけど、その言葉に安心した。

夢來は笑顔になろうとしたが、脳内に昨日の帰り道のことが浮かんだ。初めて本当の笑顔で一緒に帰ろうと話しかけてくれて、どれだけ嬉しかったんだろう。私って...身勝手だな。

 

 「……ちょっとトイレ」

 「……あっそ、いってら」

 

 紬を見つけて、紬にあやまらなきゃ。じゃないと罪悪感に揉まれてこれから過ごすことになってしまう。

どこにいるんだろう。トイレ?……いない。職員室?……いや、いない。図書室は今の時間帯鍵かかってるし体育館は閉まってるはずだし。だとすると?……屋上?嫌な予感しかない。でも、他に行く場所として思いつくのは屋上しかない。行ってみる価値はあると思う。屋上へ続く最後の1段を踏みしめると、正面から涼しい風が吹いてくる。風に抗いながら屋上へでると、人影が見えた。紬だ。逆光で見えないけど、シルエットからして、絶対に紬だ。

 

「つっ...紬!」

 

 初めて、心から〝紬〟という名前を読んだような気がした。

 

 「夢來ちゃん……?」

 「だっ、ダメだよ早まっちゃ‼」

 「えっ?はぁ?」

 

 紬の頭の上にはてなマークが浮かんだ。

 

 「だって、え?屋上に来る目的って……そのぉ」

 「……ぶっ」

 

 紬は呆れも交じったような顔で吹き出した。

 

 「もお、夢來ったら。物騒な事ばっかりいわないでよね。私がこっから飛び降りると思った?」

 

 ん?私はポカーンとした顔で紬を見つめた。

 

 「飛び降りなんかしたくないよ。せっかく友達ができたのに。」

 

 友達……?それって、私のこと?心が温かくなる。映画のワンシーンじゃん。これ。

 

 「空を見に来たの。母さんが好きだったから」

 

 母さんって、昨日私が見た紬の過去の中に出てきた人かな。あんなにちっちゃかった頃のこと、覚えてるんだ。

 

 「あ……今言ったこと、忘れて!」

 「私も、空、好きだよ。」

 

 紬が私のことをまじまじと見つめてくる。

 

 「本当だよ?空って不思議じゃない?どんなときにもどんな所にも必ずあって。だし空って見る度に違うし。空の色っていうのも、そんな単純じゃないじゃん?」

 「夢來ってこんな詩的なこというんだ。……意外。」

 「意外とは失礼な……。」

 

 私はムスッとほっぺを膨らませた。感情を出すってこんなに気持ちいんだ。本当の自分でいられる気がする。

 

 「あ、そのさ、さっきごめんね。その、いっぱいいっぱいで」

 「ううん!」

 

 私はあわてて紬の言葉を遮った。

 

 「悪いのは私。ホント、助けられなくてゴメン。」

 「夢來、もっと自分に自信もちなよ。」

 

 紬の一言に、肩の荷が軽くなるように感じた。

 …………………………………………………………………………………………………………………………………

 「紬ってさ、最近どんどん性格悪くなってるよね。」

 

 紬と夢來の真横でまた菜穂花達の女子トークが始まる。

 

 「ね、ホントそう思う。でもあんな紬と仲良くしてる夢來さんもどうかと思うけど。」

 

 昨日から、私はきっぱりと菜穂花と話すのをやめた。やっぱり、菜穂花は最初思っていた通り、最低な子だっ

 たんだ。紬。1人でも心を許せる友達がいれば、周りなんか気にしない。

 

 「紬、今日さ帰りにアイス食べて帰ろ?」

 「もっちろん」

 

 紬が言いかけた時だった。

 

 「ねぇ夢來さん、来てよ。どうせ紬なんかと話してても楽しくないでしょう?」

 

 もう菜穂花の本心は分かってる。私と話したい訳じゃない。私を利用して紬を嫌がらせているだけなんだ。

 

 「…………」

 「ど~したの?夢來さん」

 「あ、あっちいって!」

 

 う、私の語彙力のなさ……

 

 「はあ……⁉」

 

 菜穂花と周りの女子達が、信じられないと話し出す。

 ああ、これで菜穂花達にとって私と紬は同じ立場になったな。でも、間違ったことは言ってない。

 

 「ひどいのは……菜穂花でしょ⁉」

 「わ、私⁉なんでよぉ?悲しいよぉ……」

 「紬のことを寄ってたかって責めて!紬は何にも悪くないのに!」

 「ゆ、夢來、もういいから」

 

 紬が私を止める。でもここで諦めたら昨日みたいに紬のことを助けられなかったことに後悔する……

 

 「そう……そうやってウチを悪者にするんだ」

 

 菜穂花が豹変する。これ……みんなで紬を責めてた時と同じだ。

 

 「もういいや。行こう?」

 

 私はふぅっとため息をついた。

 

 「ありがとうだけど、あんなに言ってくれなくてもいいのに。夢來が悪者になっちゃうよ?」

 「いいの。紬がいてくれればね。」

 

 私たちの背後からまた話し声が聞こえてくる。

 

 「夢來ちゃんってあんな子だったんだねぇ‼」

 「紬と一緒にいて頭おかしくなっちゃったんじゃな~い?朱に交われば赤くなるっていうし~」

 

 笑い声がうるさい

 

 「それに……」

 

 紬が沈んだ顔で私を見つめる

 

 「私のことも色々言われそうだし……」

 

 不穏な空気が漂った。

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