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第1章 紬と夢來

ファンタジー小説と言っておきながら、第一章から思いっきり普通の学園モノです。

途中から異世界転移するので、それまでごゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

ー私の名前は桜川夢來。いたって普通の女子だけど、自分が嫌い


私は顔の前にかかる髪の毛を指でかき上げながら、菜穂花とその周りに戯れる女子達を眺めていた。

 

「ねぇ聞いて、ウチのお父さんってひどいんだよぉ。この前、この限定バッグを買ってもらったとき、『いい加減、そんな高いものばかりねだるな。みんなもっと質素なんだぞ。ブランドだけ欲しがるなんて恥ずかしい...』ってネチネチ。買ってくれたくせに嫌味言うの。ひどいと思わない?」

 

 菜穂花は眉をハの字にして口をとがらせながら言う。すると周りの女子たちが

 

 「え~ かわいそう」

 「そのお父さんひどいね」

 

と同情の意を向ける。

私、呪いにも似たような力があった。

それは〝話たことのある相手の過去を見ることができる〟というもの。

菜穂花は伸ばした髪をハーフアップに結い上げ、高級ブランドの服を着重ねしている。

一見明るく、面白い天然の菜穂花はクラスのリーダー的存在だ。

私や以外のほとんどは、そんな彼女に気に入られようと、休み時間のたびに彼女を取り囲む。

自分が心の底から仲良くしたいと思える友達と一緒にいた方が絶対いいはずなのに……。

でもどうやら他の女子の思考は私とは大きくずれているようだ。

みんな、菜穂花の事を強いと思ってる。

でも菜穂花の過去を見てしまったからこそ変わっている視点で菜穂花たちの事を見てしまうのかもしれない。

過去の真実を知ると、目の前の人間が信じられなくなる。

表面的な言葉や振る舞いだけを受け入れられなくなる。

だから私は誰とも心から親しくなれない。

 前に一度このことをお母さんに話したことがある。

この能力のことではなく、自分の考えが変わっているのか。それともおかしいのか、と。

 

「それはそうかもしれないけど、その子たちの事はその子たちなんだから。そんなひねくれた考え方で

友達関係を考えてばっかりじゃ嫌われちゃうわよ?」

「そうかもしれないけど…」

 

言い換えしのしようもない。事実、もう変わり者として嫌われているからだ。それは自分でもわかる。

だからといって、菜穂花に好かれたい訳でもないのだが。

 ……………………………………………………………………………………………………………………

あれこれ考えすぎるのが私の癖。

リフレッシュリフレッシュ!

私は長い間座りっぱなしでよく攣ることもある足を引きずるように立ち上がると、ガンガンする頭を1発殴ってから歩き出した。

 

「ねぇ、桜川さんってさ、いつも暗くて一緒にいずらいよね」

 

私は足を止めた。女子の会話だ。そこまで気にする必要はない。

でも自分が傍からどう思われているのかは興味アリだ。…………聞いてやろう。

 

「わかる、でも頭はいいよね。頭でっかちって言うんだよね、そういうの(笑)」

「まぁでも桂島さんよりいいんじゃない?桂島さんってさなんか話しかけても何にも答えてくれないじゃん?桜川さん、受け答えは出来るじゃん。」

 

どっと笑いが起こった。

 

「ウケる~!そういう域いっちゃってるじゃん」

 

私は廊下へ急いだ。まあこんな感じで思われてるんだろうなぁってくらいだよ。想定内。自分に言い聞かせる。小学生の時より良い。友達からはしょっちゅう殴られて、先生にも嫌われて、とにかく居場所がなかった小学生の頃よりかは。ふと熱いものがこみ上げてきた。クラスメートから必要とされていないのは今も前も一緒だ。クラスメートの事を友達と思ったこともない。

私は時計をちらっと見ると重い足取りで教室へ戻った。次は英語。私の得意分野。

 

「Hello.Now, let's start the lesson. Today is a conversation class. Let's talk about your friends from   elementary school.」

 

英語と数学の授業中は私の気晴らしでもある。自分が菜穂花達より唯一上のものだから。

他のものはどんなに劣っていてもいい。でも数学と英語だけは譲れない。

 

「Please talk to the girl sitting next to you. I mentioned the topic earlier.」

 

小学生の頃の友達なんていない。話しようがない。私はとりあえず指示された通り隣の席の子と向かい合った。

川村美知恵。さっき、私の事を頭でっかちと言っていた子だ。

そう思われているなら徹底的にわからせてやろう。

 

「私英語とか全然わからないからさ、夢來ちゃんは得意だよね。」

「いや別にそんなことないよ。私もあんまりわかんないしー。」

 

ふふふ。ここはまずヘリ下っておくのが礼儀ってもんだよねぇ。

 

「じゃあ、お題だすね。Ms. Kawamura, please tell us about your friends from elementary school.」

 

徹底的にわからせてやる作戦1、発音をめっちゃよくする。

 

「ええと……My best friend is Sakura.」

「すごいね。isをwasにかえたら完璧だと思うよ」


美知恵ちゃんはえへと笑ったが、その一瞬に表情にでた、私に対してのうるさいなぁという感情を見逃さなかった。

 

「次は夢來ちゃんでしょ。私お題とか言えないからそのまま答えてよ。」

「え、うん。」

 

さあ力の見せ所。私の英語脳がびんびんと冴えてくる。ここで差をつけてやるんだから。

 

「My best friend when I was in elementary school was Kaede. The child was so cute, kind and perfect.    

But since I moved, I don't see him at all now, and I haven't heard from him.」

 

 見ろ。私の能力を。もちろんそれを口にすることはない。

 

 「すごいねぇホントに。教えてほしいよ。」

 

 本当はそんなことかけらも思っていないくせに。でも清々した。単純だよね私って。

 ………………………………………………………………………………………………………………………………

 私は学校指定のバックを肩に背負うと遠くの方に見える海をぼおっと眺めながら帰路を歩いた。

 ガァッガアッガアッ……           ピ~ヨロロロロロロ……

 私は群れで飛ぶ鳥とその後ろに飛ぶ猛禽を眺める。どちらにもなりたくない。

 猛禽ほど強さを持っているわけではないけど、いつも1人でいる猛禽は私みたいなものだ。

 でも、群れで飛ぶ鳥たちも菜穂花達を連想してしまう。2羽くらいで飛ぶカモメが一番いいかな。

 

 「夢來っお前前見て歩けよ。上見てたら転ぶぞ。」

 「さくちゃん……⁉」

 

この王子様登場のさくちゃんこと桐生朔夜は私の幼馴染。

友達がいない私の唯一の話し相手……なのだが、口うるさい。

幼馴染だからといってずばずば言い過ぎですよっと言いいたい私との奮闘劇がよく始まる。

さくちゃんは、近くの諏訪神社の宮司の息子。

巫女見習いと、宮司見習いということでまあ似たところだ。

あと、口うるさいさくちゃんにはもう1つ面倒くさいところがある。

妖気や神気の量などが分かってしまうのだ。だから私が巫女修行をさぼるとすぐばれる。

 

 「夢來、巫女修行さぼっただろ?」

 

 ……ほらね?こういう時は無視が一番。ほんと、無視という概念を作った人に感謝しております。

私はわざとさくちゃんを軽く突き飛ばすと、家でもある稲荷神社へ向かった。

 

 「お母さん、ただいま。稲荷書ちょうだい。」

 

 稲荷書とは巫女修行のために読めとお父さんから前に渡されたつまらない書だ。でも、さくちゃんに

 負けたくない(神気量で)。

 

 「どうしたの、稲荷書なんて夢來が読むと思わなかったわ。まぁいいんじゃない。お父さん喜ぶはずよ。いつか読みたいって言いだすまでってお父さんの書院にしまってたから言えばくれるはずだけど……」

 「お父さんは…… 本堂に行ってくる。」

 

 私は家から見える近さの本堂へ向かった。お父さんはいつもここにいるから、夜にお父さんのところに行くのはかなり怖い。

 

 「お父さん、夢來だよ。稲荷書かして」

 

 お父さんはお経を読むのをストップするとこちらに向かって歩いてきた。

 

 「どうした夢來。まさか自由帳がなくなったから稲荷書を自由帳代わりにするとかいう魂胆じゃない

 だろうな?夢來が自分から稲荷書を読みたいなんて。信じられない。」

 「ひどいなぁ、そんなんじゃなくて本当に読みたいの。もう一度巫女修行やろっかなって。ちゃんと」

 「本当か。だったら稲荷書じゃなくて稲荷神記のほうが読み甲斐があって面白いぞ」

 

 お父さんにとって神書は漫画か何かでしょうか?

 私はそこらへんに投げ捨ててあった巫女衣装を合わせてみた。……似合うじゃん。

 よし、これを着て毎日祈祷をして神書を読んでやる。そしたら、さくちゃんを越せるはず。

 それに……それに、友達関係もそこまで気にならなくなるだろう。

 ………………………………………………………………………………………………………………………………

 「桜川さん、私たちとおしゃべりしないの?あなたがいないと寂しいの。」

 

 …………はぁ!?突然何言ってんの!?

 突然の菜穂花の言葉に私は思わず絶句した。何なのこいつ。昨日の話を私が聞いていなかったとでも思ってんの!?今はいい。そういうつもりだったのに……。心情と発言は違った。

 

 「うん。」

 

いつのまにか、うんとうなずいていた。心のどこかで寂しいと言ってもらえたことに喜びを感じていた。

 

 「桜川さんの顔って可愛いよね。」

 

 私は恥ずかしくなって思わず顔を伏せる。

一瞬でその場が凍り付いた。あれ……?私まずい事したかな?

 すると私の耳元で川橋さんがささやきかけてきた。

 

 「こういうときはありがとうっていうのが礼儀でしょ?」

 

 私はあわてて顔をあげてありがとうと上ずる声で言った。菜穂花はたちまち笑顔になった。でも私は

 怖かった。その笑顔はすぐに壊れてしまいそうで。

 その日の帰り、私は生まれて初めて一緒に帰ろうと誘われた。相手は森田紬。菜穂花と仲良くしている子だ

 紬に話しかけられる前は、菜穂花と仲良くしている紬の事をどうかしてるって思ってたんだけどね……。

 帰り、紬と私はぺこりと頭を下げると玄関を出た。

 

 「ねえ森田さん……」

 

 紬は私の方をちらっと見ると「紬でいいよ~」といった。

 

 「え……?あ、うん。じゃあ紬……」

 

 あ~、快感!

思わず舞い上がりそうになった。こうやって名前を呼び捨てにするのも、こうやって帰ろうと声を                                                                         かけられたことも全部菜穂花のおかげなのかな…… そんなわけないよね。

 私は一度大きく息を吸った。

 

 「ねえ紬、あのさ、今までは誰と帰ってたの?」

 

 紬はしばらく口をぽか~んとさせていたが、しばらくしてぶっと吹き出した。

 

 「あはは!びっくりしたよもぅ。もっと深刻なこと聞かれるのかっと思った。言い回しが固いよ~?」

 

 私はぷくぅっと頬を膨らませた。はっと我に返る。こうやって喜怒哀楽を人前で見せるのも初めてだ。

 

 「今までは……菜穂花と帰ってたよ。でも夢來はどんくさそうで案外面白そうだな~って思って。」

 

 う……、ずばっずば言ってくるな。

 

 「私も菜穂花の方から声を掛けられて仲良くなったんだ。親友って感じ。もう3年くらいになるかな。」

 「へぇ」

 

 私は上目づかいで紬を見た。紬は成績優秀で根っからのお嬢様だ。実際両親は億が付く億万長者なんだとか

 

 「紬は菜穂花とつるむ……ごめん、仲良くするようになる前は、菜穂花のことどう思ってたの?」

 

 すると、紬は、う~んと可愛げに首を傾げた。

 

 「そおねぇ、大してどうも思ってなかったというか……でも、まあ憧れではあったよ。カリスマ性があるし。」

 

 そ……そうですか……。

 

 「でも夢來ちゃんもうまくやっていけると思うよ!」

 「うん、ありがとう。」

 

 私は手を振った。紬って、意外といい子だったな。でも、相当な人間不信の私はまたすぐに不安になった。

 でも、あんなに私の事を悪く言ってた菜穂花達がどうして突然仲良くして来たんだろう。何か企んでる?

 

 「考えすぎだよね、きっと気が変わったんだよ」

 

 私は私の家でもある稲荷神社に帰って来た。本堂からお経が聞こえてくる。頭はそこそこ良い私はだいたい

 覚えてしまった。

 

 「お母さん、ただいま」

 「あ、夢來、お帰り。今日は何かいいことあったの?やけに嬉しそうだけど……」

 「そ、そんなことないよ」

 

 私は赤らむ顔を隠すように自分の部屋へと駆け出してしまった。なんか疲れた。クラスメートと仲良く話すの

 は本当に初めて。あれ……?何か頭の中の容量がどんどん少なくなっていく感覚。

 私は思わずその場に座り込んだ。すると、突然頭の中がかっと熱くなった。

 

 「菜穂花……?」

 

 最初に頭に浮かび上がったのは、菜穂花の幼少期だ。1年生くらいだろうか。

 菜穂花と思われる女の子は他の女の子に囲まれて泣いている。

 

 「菜穂花ちゃんってブスだね。」

 「そこまで言ったら可哀そうだよ~(笑)」

 

 菜穂花は何を言われてもひたすら泣いていた。周りの女の子達に敵意の眼を向けながら。

 

 「ブス子に菜穂花なんて名前贅沢なんだよ」


ふと、菜穂花の心の声が聞こえてくる。

(仕返ししてやる...絶対に...!)


 これは菜穂花の過去。にわかに信じがたい。今ではあんなに目立ち、敵などないような立ち位置にいる

 菜穂花が除け者にされるはずがあるだろうか。でも……。あの敵意の目は恐ろしかった。

私も小学生時代はいじめられていたけれど、仕返しをしようと思ったことはなかった。出来るとも思っていなかったのだが……。そこが、違いなんだろうか。


あれ……?これは……紬?紬だ。間違いない。

夜、紬の母の膝枕で紬はう~んと眠そうな声を上げながら父の帰りを待っていた。

ガチャ……。

そこにいたのは顔を真っ赤にしたいかにも居酒屋帰りの父だ。

その父を見た瞬間母は険悪な表情になり、手にギュッと力を込める。

「もういい。勝手にして」

母はそう吐き捨てると、夜の闇に消えていった。

残された紬は、状況が飲み込めないまま「うっ……ううっ……」と泣き出し、やがて激しい泣き声に変わった。

しかし父は、泣き叫ぶ紬にすることもなく、ただ忌々しそうに舌打ちをする。

そして冷蔵庫からビールを取り出すと、一気に飲み干した。

前に、紬は両親は億万長者だって言ってたのを聞いた事があるんだけど……。あれは何だったんだろう……。

次に頭の中に浮かび上がったのは小5くらいの紬。今も良くつけている銀色のシュシュで髪を1本に纏めてい

る。父の横にいるのは前に参観日に来ていたのを見たことがある、1人の女性だった。あれは、再婚相手

だったんだ。紬はその2人を見つめながら何とも言えない表情をしていた。


 紬の過去はここで終わりか……。壮絶だった。臨場感がすごい。ちょっと短編映画を見させらえれた後って感

 じ。短時間に2人分の過去を見るのは初めてだ。情報量が多い。休憩しようかな。

 私がその後宿題をほったらかして寝てしまい、お母さんから盛大に雷を落とされたのは言うまでもない。

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