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マイペースに異世界暮らし  作者: 汐琉
実りある秋

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20/20

呼ばれて飛び出て……

サブタイトルに何かを続けたくなった方は、もしかしたら私と同年代かもです(笑)


あけましておめでとうございますm(_ _)m


本年も拙作をよろしくお願いいたします(^^)

●10月✕日



 先日、ゆるいお兄さんの車に乗って話していたところをお隣のおじさま──ではなく、奥様であるおばさまに目撃されてしまっていたようで……。


 ゴミ捨ての時に捕まり、まぁまぁあのイケメンどなたかしら? からのよく知らない相手だと答えたら、キャピキャピから真顔に変わったおばさまからお説教をいただいてしまった。


 幼児に言い聞かせるように「知らない人に話しかけられてもついていっちゃ駄目なのよ? お菓子を貰っても駄目よ? あ、おもちゃでもよ?」という真剣な顔でのお説教は、おじさまのお説教より胸にキた。


 色々な意味で、だけど。


 それでも不安だったのか、おばさまからは帰り際に一枚の紙をいただいた。

 明らかに小学生ぐらいの相手を想定したであろうひらがなばかりで『いかのおすし』と書かれた紙を。

 食べる方の『いかのおすし』ではない。

 フリー素材のイラストをふんだんに使ってわかりやすく、不審者に遭遇した際の対処法を書いてあるのだ。

 その頭文字をとって『いかのおすし』らしい。



 とてもわかりやすい書き方で、感心してしまったのだが、おばさまには私がいくつに見えているのか……。


 疑問は尽きないが、好意でいただいた物なので、いかのおすしの紙は少年からいただいた紙の隣に貼り付けておいた。


 押さえるマグネットは、誰かのハワイ土産のハイビスカス柄のアロハシャツの形をしたマグネットである。




 そんなご近所交流を経て、カッパ危険説が否定された秋晴れある日、家庭菜園の片隅でピクニックシートを敷いてカッパくんと寛いでいると、茂みの中でゆらゆらと揺れる二又の尻尾を見つける。


「あれ? 黒猫さん?」


「きゅわ? きゅーわ、きゅわ!」


 私の視線を追ったカッパくんも同じ物を見つけたらしく、私と同じように首を傾げてから、あれは違う的な事を私へ訴えてくる。

 そう言われてよく見てみると、確かに尻尾の太さは黒猫さんより細く、長さも黒猫さんより短い……気がする。


 何より毛色が違った。


 尻尾の先を見て黒猫さんだと思ったのだが、よく見ると黒いのは先っぽだけで途中には白と茶色の模様がある。

 三毛猫さんだぁと内心ときめきながら、怖がらせないように平常のテンションを心がけて「チッチッチッ」と舌打ちをして呼びかけてみる。


「んにゃにゃ」


 応えてくれる声も黒猫さんより高くて可愛らしい。

 と言っても勘違いして欲しくないのだが、黒猫さんの声ももちろん可愛い。

 なんとなく自分の脳内で自分の発言に自分でフォローをいれるという意味のわからない事をしたりしながら、


「おやつもあるよ」


と、黒猫さん用に常備されているおやつをポケットから取り出し、軽く振りながらさらに呼びかけてみる。


 現金なもので即座に、


「にゃあ」


と応える声と共に、茂みの中からするりと姿を現す猫が一匹。


 やはりチ◯ール最強かもしれない。


 茂みから見えていた尻尾でわかっていたが、二又の尻尾と同じで体の毛色も黒白茶の三毛猫さんだ。


 私の主観だが綺麗な三色の配色の毛皮を持つ美人さんだ。

 特に顔の配色の具合が美しい。

 某大御所ミステリー作家さんの有名作品の美人で賢い三毛猫さんを思い出して、ひっそりと微笑む。


 ただ少しあちらと違うのは、私の手からおやつを貰ってうにゃうにゃしている三毛猫さんのサイズはほぼ中型犬だ。


 黒猫さんよりは可愛らしいサイズ感だけれど、私の知っている猫とはかけ離れている。

 ちなみにだけど、太っちゃって巨体になっている訳ではなく、すらりとしてしなやかなそのままの体型の猫を大きくした感じだ。三毛猫さんも、黒猫さんも。

 私的には大きいと感じてしまうが、こちらの世界の猫の標準的な大きさがこれぐらいなのかもしれない。

 ピクニックシートに座っていた私の膝の上に跨るように乗ってきた三毛猫さんを撫でながら、そんな風に納得する。


 隣からこっそり撫でようとして、三毛猫さんから睨まれてすごすごと手を引っ込めるカッパくんが可愛い。


 そうだね、もう少ししたら慣れてくれると思うから、それまで我慢して欲しい。


 そういえばだけど、このプチピクニックにはてまりさんは参加していない。


 誘ったんだけれど、首を横に振って座敷の中から出ようとはしなかった。

 

 この間ゆるいお兄さんがやって来てからだから、まだゆるいお兄さんの事を警戒しているのかもしれない。


 何日かすれば安全だとわかって出て来てくれるだろう。


 どうしても駄目だったら、カッパくんを連れて一緒に「遊びましょ!」とでも声をかけてみよう、おやつ付きで。


 サツマイモといえば、芋羊羹に茶巾絞り、スイートポテトもありだよね。


 和菓子が好きなてまりさんにはやっぱり芋羊羹かなぁと考えながら、膝の上の三毛猫さんをなでなでしてゴロゴロ音を楽しむ。


 そのままボーッと惰性で撫で続けていると、隣からドスンッという音が聞こえてきて、ハッとしてそちらへ顔を向ける。


 そこにはぺたりと地面へ座り込んだカッパくんがいて、力なくきゅわきゅわと声を上げている。


 一瞬何があったかわからなかったが、どうやらカッパくんは三毛猫さんのパシパシと勢い良く動き回る尻尾を目で追いかけ、最終的に目を回して尻もちをついてしまったらしい。


「カッパくん、怪我はしてない?」


「きゅぅわ……」


 ふらつきながらもたしっと元気よく挙手をするカッパくん。


 何ともなさそうで何よりだ。


 しかし、こんな無邪気なカッパくんが呼ぶ相手が危険って、一体何が現れるんだろう。


 もしかしてカッパだし、生物ではなくとんでもない豪雨を招くとか?


 なんて、違うか。


 一人で悩んでても答えは出ないし、カッパくんに確認すればいい話だ。


「カッパくん、カッパくん。カッパくんって、何かを呼べるって聞いたんだけど、どういう感じなのかな? 雨が降るとか、雷を鳴らせるとか、まさか地震起こす?」


 最後のはナマズかと脳内で自身に突っ込みつつ、カッパくんに質問してみる。


 私の質問を受けたカッパくんは、くりくりとした目をゆっくりと瞬かせていたが、すぐパァッと笑顔になると任せておけとばかりに自らの胸を叩く。


 やたらと気合の入ったカッパくんの様子に、ドキドキしながら見守る。


「きゅーわ!」


 ビシッと立ち、腰に手をあてた体勢で高らかに声を張り上げるカッパくん。


 私はシートに座ったまま、カッパくんの勇姿を見守る。


 んにゃんにゃ言っている三毛猫さんを撫でながら、ただただ見守る。


 いつの間にか隣に美人さんが座ってたりもしたが、スルーしてさらに見守る。



 そのまま誰も何も喋らないまま数分経過し──。



 カラスと言うには大きな鳥が「カァー」という鳴き声と共に頭上を過り、世紀末覇者かと思うぐらい気合を入れて佇んでいたカッパくんがやっと動く。



「きゅ?」



 可愛い気の抜けた声と共にこてんと首を傾げたカッパくんが、私の隣にあぐらをかいて座っている美人さんに気付いてパァッと笑顔になって駆け寄ってくる。

 駆け寄ってくる勢いのまま抱きついたカッパくんを、うっすらとした微笑みを浮かべて受け止める美人さん。

 かなりの衝撃だったと思うのに、美人さんの体は少し揺らいだだけで難なくカッパくんを受け止めている。


 美人さんは体幹まで素晴らしいようだ。


「きゅわきゅわ、きゅわ!」


 カッパくんの言葉を静かに頷いている聞いている美人さんの姿は、絵画のように美しい。


 三毛猫さんを撫でながらほっこりしていると、美人さんの目が私の膝の上にいる三毛猫さんを見る。



 スッと細められた瞳は、光の加減か瞳孔の形が変わった気がして、確認しようと覗き込んでみる。



 覗き込むのに夢中になっていたら、ゆっくりと覗き込んでいた先が近づいて来ていて──。



 鼻先が触れそうな距離感に気付いた時には、三毛猫さんはがしっと首の裏を鷲掴みされて、茂みの方へと放り投げられていて。



「あぁっ!? 三毛猫さん!」



 いつかの再現のような光景だが、見慣れる訳はなく思わず悲鳴じみた声を上げてしまう。

 まぁ慌てていたのは私だけで、投げられた本猫も投げた本人もしれっとした顔をしている。


「……なんで毎回猫さん達を投げちゃうんですか?」


 美人さん相手に怒鳴る事も出来ず脱力気味に質問すると、返って来たのはこてんと傾げられた首の動きだ。


 初対面の猫と会ったらぶん投げるのが、この世界の常識なんだろうか。


 思わずジト目になって見つめていたら、美人さんがゆっくり瞬きをしてボソリと呟く。


「……虫をはねのけただけ」


 かなり小声だったので聞こえたのは後半のこれだけ。前半は聞き取れなかったけど、どうやら美人さんは少し潔癖症なのかもしれない。

 確かに野良猫ならノミとかダニとか付いてそうではあるけど。

 だからといって、ぶん投げるのはいいのだろうか。


「んにゃーん」


 少しもやっとしたが、被害者である三毛猫さんがけろっとしてるので、私は言おうとした言葉をそっと飲み込んでおく。



 私の常識と彼らの常識は違うのかもしれない。



 そう思うと少し寂しくなって、私はそっとカッパくんの手を握る。



「きゅわ? きゅわわっ! きゅー!」



 私が少し凹んでいる事に気付いてくれたカッパくんにより、美人さんへのお説教が始まり、その優しさと可愛らしさに私の凹んだ気分はあっという間に戻ってしまった。



 最終的に美人さんがぶん投げた三毛猫さんへ、


「次は警告してから投げてやらないこともない」


という謝罪(?)をし、それを満足そうにドヤッとカッパくんが見守っていて。



 ──やっぱり、カッパは可愛くておそろしい。



 そう思った秋の日だった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(。>﹏<。)


カッパくんの呼び出しは失敗したのか、はてさて。


ちなみに『いかのおすし』って、皆様知ってる体で特に説明してないですが、全国共通なのかと今さらながら思ったり……。

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― 新着の感想 ―
今回もカッパくん可愛いなぁ。 呼び出せるモノを呼び出そうとしてもそりゃあその本人が既にいるなら呼べないよなぁ…… 前話でカッパの危険度は呼び寄せるモノ込みの危険度と。 つまりはうるみさんがヤバい………
呼ばれて飛び出て…ジャジャジャジャーン!! 思わず続けてそう読んでしまいましたー! 『焼き芋したい。』からまとめて読ませていただきました〜!いやぁ、相変わらずカッパくん可愛いな!!カッパのきゅうさんが…
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