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マイペースに異世界暮らし  作者: 汐琉
実りある秋

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18/20

おそろしいとは……。

相変わらず一人ズレた所をとことこしている主人公です。

●9月▲日



 さぁ聞くぞと意気込んでみたが、間の悪い事に肌寒い秋雨の日が続き、カッパくんはしばらく姿を現さなかった。

 代わりになのか、ザァザァと雨の降りしきる中、美人さんがやって来て、いつものなんちゃって温泉卵と蒸かし芋を食べて帰って行ったりなんてイベントはあったが、やはりカッパくんは現れなかった。



 ──あれだけの雨だったのに、美人さんは全く濡れていなかったのは、さすが(?)美人さんだと思ったりしながらカッパくんを待つ日々が過ぎていく。



 やっと会えたのは、そろそろ十月の声が聞こえてくる久しぶりの秋晴れのある日。

 サツマイモは家庭菜園的にもやり過ぎたと思ったのか、雨が止む頃には掘り残していた分は影も形もなくなっていた。

 カッパくんが寂しがるかと思ったが、そういえば在庫は売るほどあるので問題ないだろう。

 そんな事を考えながら、サツマイモから大根と白菜の物へと変わっていた畝を眺めていると、きゅわわわーという声と共に腰辺りに軽い衝撃がぶつかってくる。


「やぁ、カッパくん。久しぶりだね」


「きゅわ! きゅわわ、きゅぅわぁきゅわ!」


 なんとなくカッパくんの喋っている事がわかるようになったと思っていたが、どうやら錯覚だったらしい。

 何を言ってるか、ほぼわからない。

 身振り手振り付きで、何かを訴えているのはわかるけれど、何を伝えたいかわからない。

 わからないけれどカッパくんが楽しそうなので、ひとまず笑って受け流しておこう。

 きゅわきゅわ言っているカッパくんの頭を撫でていると、天の助けな声の聞こえてくる。


「焼き芋が美味しかったので、サツマイモを分けて欲しい……と言ってますが可能でしょうか」


 ゆっくりとした足取りで現れ、落ち着いた口調で通訳をしてくれたきゅうさんのおかげでカッパくんの言いたい事がわかって何よりだ。


「もちろん、大丈夫だよ。あ、でもカッパくん、サツマイモは生だとあまり美味しくないよ?」


「きゅわっ!? きゅわきゅわぁきゅわわ?」


 私の言葉を聞いて目を真ん丸くしたカッパくんは、今度は手をぶんぶんとさせながらきゅうさんへ詰め寄っている。

 今度はなんとなくわかる。

 火を使う許可を欲しがってるんだろうけど、やはり水に棲まうカッパと火という取り合わせは不安を覚えるな。

 ゲームとかの属性の相性なら、水は火に勝てそうだけれど、この間思い切り熱々の焼き芋食べて口の中火傷してたし。


「……わかりました。私か、あの方がいる時になら」


「きゅわっ!」


 カッパくんのキラキラお目々の上目遣いにきゅうさんが負けた。


 勝利者のカッパくんは、その場でくるくると回って勝利の舞を踊っている。


 うんうん、カッパくんは今日も可愛いなぁ。




 家庭菜園の隅にいつの間にか出来ていた赤い屋根に白い壁に茶色の扉という、幼児のお絵かきの具現化のような小屋から、段ボールに入れて保存してあったサツマイモを取り出す。

 ちなみにこの小屋、外から見た感じより中が広く、換気扇や空調施設もないのに室内の空気に埃っぽさはないという不思議な小屋だ。

 そもそも一晩で出来た物だから、


「きゅわっ」


 笑顔のカッパくんが唐草模様……よくアニメとかで泥棒が持っているイメージな風呂敷を差し出して来たので、包める限界までサツマイモを乗せて包む。

 それを漫画の泥棒のように肩へと担ぐカッパくん。

 ちょっとふらついてるが、問題なく持てている。

 その姿を見ながら、私は少年がくれたあの紙に書かれていた事を思い出す。

 今ならきゅうさんもいないから聞きやすい。


「カッパくん……あの……カッパくんってなんか特殊な力とかあったりするかな?」


 君っておそろしい存在? と訊ねるのはさすがに失礼だし、そもそも答えづらいだろう。

 無害……ではないが無力な人間な私だって動物からすれば『おそろしい』存在といえる。


 少しだけそんな真面目な事を考えながら、きょとんとしているカッパくんの答えを待つ。


 シパシパと数度瞬きをしたカッパくんは、何かを思いついたのかニパッと満面の笑みを浮かべて大きく頷いて胸を叩いてみせる。


 本当に何かそんなおそろしい力がカッパくんに……? とカッパくんの言葉を黙って待っていると、背負っていたサツマイモを下ろして、その場で両腕を左右時間差付きでぐるぐると回し出す。


 内心、うん? と首を捻りながら見守っていると、腕ぐるぐるを止めたカッパくんは、やり遂げた表情で私の方を見てくる。

 先ほどのきゅうさんはこのキラキラお目々に負けたんだなぁと無言でカッパくんを見つめていると、カッパくんの表情が段々と曇っていき、最終的に俯いて地面を軽く蹴り始める。

 あからさまに『拗ねてます!』と言わんばかりの様子に、私は大慌てだ。


 カッパくんが拗ねた理由がわからないので余計慌ててしまう。


 私はカッパくんに特殊な力があるかと訊ねて、カッパくんはあるよ的な反応をしてから、腕をぐるぐるした?

 つまり、あの腕ぐるぐるがカッパくんの特殊な力?

 というか、あのぐるぐるって左右同時に回さず、ずらして回していた。


 あの動き、どこか見覚えがあるような……。


 脳裏に浮かんだのは、夏の日差し、塩素の匂い、生温い水、焼けた地面。


 連想ゲームのように懐かしい景色が脳裏を過り、カッパくんの謎行動の意味を理解する。


 理由がわかったからにはすぐ謝らないといけない。

 地面をつま先で蹴り蹴りして拗ねているカッパくんと、屈んで目線を合わせる。


「ごめんね、カッパくん。カッパくんは泳ぐのが得意なんだね、きっと速いんだろう、尊敬しちゃうなぁ。泳ぐところが見られないのが残念だ」


 これはお世辞じゃなく心から思った事なので、言い淀む事はなくするすると言葉が口から溢れていく。

 するとカッパくんの蹴り蹴りしていた足がぴたりと止まり、窺うような眼差しでちらちらとこちらを見てくる。

 なので、私は言葉が本当だとわかってもらうため笑顔で頷いておく。


「きゅわっ!」


 その途端、パァッと笑顔になったカッパくんが勢い良く突進してくる。

 いつものように足へ抱きつこうとしたんだとは思うけど、迎える私の体勢が悪かった。

 拗ねたカッパくんと目線を合わせようと屈んでいた私。


「うわっ」


 結果、見事に体勢を崩して、カッパくんごと後ろ向きに倒れそうになる。

 私の体幹はそこまで強くなかったようだ。


 知ってたけどさ。


 そんなズレた事を考えながら、私は後頭部と背中を襲うであろう衝撃と痛みを想像して身構える。


 しかし、いつまで経っても衝撃も痛み襲ってくる事はなく、代わりに固い地面ではないしっかりとした何かに受け止められた。


 そのまま背後から両脇に腕が差し込まれ、バックハグ状態で抱え込まれて体勢を立て直してもらう。

 足にしがみついたカッパくんも、まんまるお目々のまままとめて一緒にだ。

 そんな結構な腕力を披露してくれた腕の持ち主は、相変わらず感情の読めない美しい面で私とカッパくんを見下ろしている。

 

「ありがとうございます、美人さん」


「きゅわっ」


 バックハグ状態のままお礼を伝えると、一度ギュッとされてから解放される。


「怪我がなくて、よかった……」


 いつも通りの無表情かと思ったが、よく見るとちょっとだけ眉尻が下がって困り顔になった美人さんからそんな言葉をいただいて申し訳なくなる。

 さっきの『ギュッ』は怪我がないか確認してくれたんだろう。

 いくら私でもそこまでか弱くはないんだけど、美人さんから見たら人間はか弱く見えるのかもしれない。


 きゅわわなカッパくんに対して無表情のまま、めっ、と叱ってる姿を見ると、ただ私もカッパくん枠に入ってるのかもなんて思ったりもする。


 どちらにしろ悪感情ではないので、気にしないでいい事だ。


 慈しまれて嫌な気分になるほど私は捻くれてはいない。


「きゅわぁ……」


 しゅんとして上目遣いでごめんなさいをしてくれるカッパくんに、私は心臓にちょっとしたダメージを受けながらなんとか微笑んで気にしてないと頷いてみせる。


「次は気をつけてね、カッパくん」


「きゅわっ!」


 キメ顔でたしっと挙手をするいい子の頭をなでなでしていると、美人さんがこちらをじーっと見つめている事に気付く。


 美人さんもカッパくんの頭をなでなでしたいのかと手を止めて、どうぞどうぞと譲る動作をすると、うっすら微笑んだ美人さんの手が伸びて来て……、



 私の頭を撫でる。



「まさかのわたくしめですか」



 驚きのあまり、謎口調になってしまったのは仕方がないと思う。





 結局、カッパがおそろしい存在なのかという疑問は解消されなかったが、カッパくんの上目遣いはなかなかの威力だという事はわかった一日だった。



いつもありがとうございますm(_ _)m


感想などなど反応ありがとうございます(^^)とても嬉しいです(*^^*)


おそろしいとはなにかについて考えさせられるシリアスな回でしたね←

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― 新着の感想 ―
ごめんなさいのできるカッパくんは 良い子可愛い(*>ω<)ノ カッパくんごと抱きとめたりよしよししてくれる 美人さん優しい 本人に対して美人さん呼びの主人公ちゃんさすが 大変良いシリアスでした(…
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