焼き芋美味しい
リアルがゴタゴタしてまして、更新出来ず申し訳ありませんm(_ _)m
生存しておりました。
やっと焼き芋編終了です! 感想でいただいた焼き芋バターは、あの子がしれっと食べちゃってます(*´ω`*)
●続々々・9月▽日
いくら軍手をしているとはいえ、ここで直に手を突っ込むなんてワイルドさはないので、トングでサツマイモを火の中から探り出す。
全体的に黒っぽくなったアルミホイルの塊を、軽く灰を払ってからお皿の上へ置く。
二つに割って焼き加減を確かめたいので、まずはアルミホイルと新聞紙を剥ぎたい。
あちあち言いながらサツマイモを転がしていると、伸びてきた手がサツマイモを手に取り、手際よくアルミホイルを剥いでサツマイモをパカッと二つに割ってくれる。
「ありがとう、少年。熱さに強いんだね」
「……鍛えてますから」
手の主──少年へ向けて笑顔でお礼を伝えるが、微妙な距離を感じるのは何故だろう。
ぴかぴかだった笑顔も曇っちゃってるし。
まさか、きゅうさん…………火起こし技術で少年にマウントでもとったのか?
「少年はとても素晴らしくて……その、いい子だと思うよ?」
フォローしようと思ったのだが、あいにく少年を誉める内容が思いつかず、我ながらかなり薄っぺらいフォローとなってしまった。
「ありがとうございます」
それでも笑ってくれた少年は、本当にいい子だ。
曇っていた表情も輝きを取り戻したようで何より。
そして、そんなにアピールしなくても、カッパくんもてまりさんもいい子だからねぇとアピールの激しい二人を撫でていると、少年もいつの間にか混ざっていたので頭を撫でておく。
それでいいのか成人男子。
カッパくんとえへへと笑い合う少年も可愛いので問題ないか。
あんな曇った表情をされるよりは何倍もマシだし。
可愛いに囲まれて、焼き芋実食タイムだ。
きゅうさんも混ざれば良いと思うのだが、両手に焼き芋を持ってなんともいえない微笑みを浮かべて去っていってしまった。
たぶん、美人さんへ届けに行ったんだろう。…………目の前で自慢しながら食べるとかいうドSな所業をしにいったとかじゃないと信じたい。
「あきゅ……っ!」
「あぁ、冷まさないから……っ」
私のちょっとした心配は、熱々の焼き芋で口内を火傷したカッパくんと、そのカッパくんを心配する少年の声で吹き飛ばされる。
元から大した内容の心配じゃないんだから、今はカッパくんの方が優先だ。
初めて聞いた「あきゅあきゅ」という鳴き声を披露するカッパくんに、慌てて屋内へと駆け戻って氷水をコップへ入れて再び外へ。
駆け寄って氷水の入ったコップを手渡すと、熱さで目を白黒させていたカッパくんはそれをぐびっと一気飲みする。
しかし今度は冷た過ぎたらしく「きゅわっ!?」と驚きの声を上げて、その場でパタパタと足を動かして足踏みをするカッパくんを、少年が心配そうに見つめている。
てまりさんはというと、少し離れた場所で一人まったりと焼き芋を味わっていた。
いつの間にかバターまで持ち出して、味変までして堪能しているようだ。
私と目が合うと、あっ! という表情をした後、にこりと艶やかに微笑むてまりさん。
これは魔性の幼女だ。
「てまりさん、美味しい?」
私がそう問いかけると、ぶんぶんと首を縦に振る無邪気な幼女へ変わる。
てまりさんは本気で魔性の幼女かもしれない。
まぁ可愛いから良し!
「きゅーわぁ」
てまりさんを愛でながら焼き芋をちびちび食べていると、やっと口内の火事が鎮火した涙目のカッパくんがやって来る。
その手には新たな熱々の焼き芋。
おかわりのようだ。
私を見て相変わらず純度百パーセントのニパッという擬音付きの笑顔を浮かべたカッパくんは、手にした焼き芋をパカッと割ってかじりつく…………のを阻止する私。
きょとんとこちらを見てくるカッパくんの手から、熱々の焼き芋を没収する。
学習能力を何処に置いてきたんだろうね、カッパくんは。
ガーンッ!? という擬音ぴったりに落ち込むカッパくんの前で、明らかに食べるのに適していない温度の焼き芋を少々我慢しながら持ってふーふーと息をかけて見せる。
こうするんだよと言って、すぐカッパくんへ返すつもりだったんだけれど、何故か嬉しそうにキラキラとした目で見てくるので、結局適温になるまで焼き芋へ息を吹きかける事になってしまった。
「はい、もう大丈夫だよ。次は自分でふーふーして食べる事」
そこでなんで再びガーンッ!? ってショックを受けてるのかわからないけど、カッパくんは今度は火傷をせず焼き芋を食べられたようだ。
「きゅわ!」
「どういたしまして」
笑顔のカッパくんに微笑んで返していると、私の服を引く小さな手が一つ。
少年──な訳はなく、振り返った先にいたのは可愛らしく微笑むてまりさんだ。
その小さな手にはトングがあり、その先には新たな焼き芋が挟まっている。
かなりの量焼いたので、てまりさんが食べられるならおかわりするのは全然構わないのだが……。
なんでそれをぐいぐいと私へ渡そうとしてくるのか。
なんて鈍感系やってても仕方ないので、てまりさんの差し出した焼き芋を受け取って、あちあち言いながら二つに割って息を吹きかける。
何が楽しいのか、カッパくんとてまりさんが並んでニコニコと見てくるのは可愛いが、ちょっと微妙な気分だ。
二人が喜んでくれてるので止めるという選択肢はないけど。
メイド喫茶とかで『もえもえきゅーん』とかやってもらって喜ぶ感じのノリなんだろうか。
「あの、俺のも……」
そして、はにかむ少年。さっきの再現だろうか。
そこでノリの良さを発揮しないで欲しかった。
ほんのりと頬を染めて焼き芋を差し出すんじゃありません! 可愛いじゃないか!
可愛いの過剰摂取に脳内で荒ぶりながら焼き芋ふーふーを終わらせた私は、てまりさんの手によってバターマシマシにされた焼き芋を食べる。
とても美味しいけれど、明日はたぶん胃もたれする。
そんな予感がした。
格好良く格好悪い事を脳内で呟いてみたが、それより火事が怖いので皆でしっかりと焚き火の後始末をする。
たくさん焼いた焼き芋は、私とてまりさんが食べる用に二個だけ残して、残りはカッパくんと少年に持ち帰ってもらう事にした。
少年はさかんに「謝罪に来たのに……」と言って恐縮していたが、食べ切れる気がしないのでしっかりと紙袋を押しつける。
焼く前の状態のサツマイモもついでに渡す……というか無理矢理持たせた。
カッパくんも欲しそうだったが、生で食べそうだったので渡すとしてもきゅうさんがいる時にしよう。
少しシュンとしたカッパくんを見送ってから、少年を見送るため一緒に玄関へと向かう。
てまりさんは家の中へ入った瞬間、サササッと姿を消してしまったので少年と二人きりだ。
「サツマイモ、ありがとうございます」
「こちらこそ、手伝ってもらって助かったよ、ありがとう」
お礼を言い合って、笑い合ってお別れの挨拶を、と思っていたが、笑顔だった少年の顔が不意に曇る。
ちらりと裏庭の方へと視線を向けて真剣な表情をした少年は、しばらくためらう様子を見せてから、
「あの……少し待っててください!」
と言い残して外へと飛び出した。
開いた玄関の引き戸から見えたのは、バイク……というより原動機付自転車──原チャリだ。
しかも高校生が乗ってるようなやつではなく、一昔前の出前持ちが乗ってるイメージのある無骨なやつだ。
その原チャリへ駆け寄った少年は、そこから何かを取り出して戻って来る。
「これ! よかったらどうぞ!」
少年が勢いよく差し出してきたのは一枚のチラシのような物で。
首を傾げてチラシを受け取り、軽く目を通してみる。
一番最初に目に入ったのは『こんな事で困っていたら防衛隊へ』という大きく書かれた題字だ。
題字の隣には『◯◯版』というこの地域を字が
その下にはどんな時に防衛隊へ連絡すべきかというのが何点か具体的に挙げられていて、フリー素材っぽいイラストの女の子が笑顔でこちらを見ている。
そのイラストの女の子には吹き出しがつけられ、ここへ電話してね的なメッセージと電話番号が書かれている。
それを見た私は、緊急の際の電話番号を調べようと思って忘れていた事を今になって思い出していた。
「ありがとう、少年。冷蔵庫にでも貼っておくよ」
「あの、裏面も見てください」
緊張したような表情の少年の様子を訝しみながら、私は言われた通り手の中の紙をひっくり返す。
裏面に書かれていたのは、フリー素材なイラストと共にカラフルに色分けされた表だ。
災害の時の避難の目安になる警戒レベルが書かれているのかと思ったが、それぞれの警戒レベルの横に書かれていたのはモンスターや妖怪の名前で、思わず少年の顔を見てしまった。
「それは、各モンスターの脅威度レベルをわかりやすく表にした物です。見ての通り下の方がレベルが低く、上へ行くほど脅威度のレベルが上がり、危険度も上がります」
「なるほど……」
わかりやすくて良いが、対応している避難行動が全て自宅待機なのは大丈夫なんだろうか。
「危険地域にある建物には、しっかりとした防護策がとられていますから、屋内が一番安全なんです。走って逃げてもすぐ追いつかれてしまいますし、車でも追いつかれる可能性が高いですから」
口から疑問が駄々洩れていたのか、私の表情を見て察したのかは不明だが、私の疑問は少年によってすぐ解消し、それはそうかと納得する。
安全に対する保証がなければ、いくらお金が貰えるとしても住みたくはないな。
一人でうんうんと頷きながら警戒──ではなくよく見たら脅威度レベルだった──に書かれたモンスターの名前を目で追っていた私の目は、ある一点でピタリと縫い付けられたようにそこから離れなくなる。
巨大なクマとか鮭とかはこちらの世界のただの野生動物だから載ってないとかは、ちょっと前に知っていたので今さら驚かない。
私の目を縫い付けたのは、脅威度レベルの一番上に赤字で強調するように書かれたモンスターの名前だ。
それは──先ほどまで一緒に焚き火を囲み、一緒に焼き芋を食べていた無邪気な笑顔の可愛い隣人の名前。
「カッパって、脅威度レベル……」
なんでこんなに高いの? そこまでは口から出なかった。否、出せなかった。
口にしたら、カッパくんが、きゅうさんが、なんだかとてもおそろしい生き物へ変わりそうで、出せなかった。
「……騙したみたいなやり方してごめんなさい。口で言っても伝わらないかと思って」
申し訳無さそうな少年の言葉になんと答えたかは覚えていない。
気付いたら少年はいなくて、私は座敷にへたり込んでいて、心配そうなてまりさんが隣に寄り添ってくれていて……。
今はその温もりがありがたかった。
あのやり取りを忘れたかったが、私の手にはしっかりとあの紙が握られていた。
念の為、もう一度紙を確認する。脅威度レベルの表には、やはりカッパという文字がある。
「カッパくんっておそろしい存在……?」
呟きと共に浮かんできたのは、初対面から変わらないカッパくんの屈託のない笑顔だ。
私はこんな紙切れの情報より、自分の目で見た事を信じたい。
信じようと思う。
ね、念の為、本人に確認だけはしておこうと思うけどね!
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(^^)とても励みになります!
焼き芋編、やっと終わらせられました。
ちょっと不穏で終わりましたが、まぁうちのこの作品はほぼシリアルになる事ないので……。
そして、サラッと予測変換がシリアスを拒否して、シリアルになっていたというシリアス脱走案件でした(笑)




