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4 俺はオオカミだ

あの、四阿から転げ落ちた後、俺はどうやらオオカミになっていたらしい。自分の手を見て前足になっているのに気がついた。

白い大きなオオカミ。目の前に小さな猫がいる。腹が減っていた。これは、喰っても良いかな。

喰っても腹の足しにならないだろうか。

考えている間に、猫は逃げて仕舞った。

仕方なく、雪山を歩きながら、餌になりそうなものを物色する。

まるでオオカミだ。俺は自分の今の姿に妙に馴染んでいる。若しかして本来の、俺の姿が俺の本質が出たのかも知れない。

あの、怪しげな、招待状のせいであるのは明らかだ。俺は何故か、嬉しくて仕方が無い。

人間でいるよりも自由だ。俺はこのまま、此処で暮らして行けたら幸せだ。家に帰ったとしても、冷えた、夫婦の関係が待っているだけなのだ。もう、彼女に癒して貰うことは出来ない。

むなしく、夫婦関係を維持し続けなければならない。仕事のため、生活のため、贅沢のため、子供のため。

俺のためには、彼女がいれば良かったのに、もういなくなってしまうのだ。

そう言えば彼女は何処だ。すっかり忘れて居た。

探してみても、彼女の匂いが分らない。折角オオカミになれたのに、匂いを覚えていなかった。あの、猫の匂いしか残っていない。

彼女は此処には来なかったのだ。きっと一人で宿に帰ったのだろう。もう、関係は終わらせたのだ。

他のもっと別の男とでも一緒になるのだろう。

女なんてそんなものさ。何時も安定を欲しがる。今が良ければ良いじゃあないか。金はあるんだ、贅沢はさせてやれないが、遊ぶ金に不自由はなかったはずだ。

色んなものを買ってやったのに、別れて欲しいだなんて、俺はどうすれば良いんだ。次が見付かるまで、また面白くない日常が待っているだけなんだぞ。

結婚を迫られたことはなかったが、子供が欲しいと言われたことはあった。

とんでもないことだ。子供など作ってしまったら、地獄だ。今でも子供には苦労させられているのに。

彼女は独り身だから、子供がどんなに手の掛かるものか分っていないのだ。自分の時間などなくなる。

反抗してくるし、かわいげもなくなる。只の金食い虫だ。

子供なんて持って、彼女は一人で育てるつもりはあったのだろうか。

絶対俺に養育費を、請求したに違いない。

今考えると、別れて正解だった。

子供を産んだ女なんか、女でなくなる。俺の妻を見てみろ。酷い変わり様だぞ。

は、は、これは神様が俺に教えてくれて、結果に違いない。


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