3 魔法のスカーフ
セス(セバスチャンの呼び名らしい)は、珍しく女を連れ込んできた。
私は何時ものクッションで寛いでいた。そこにセスが来て私を別の部屋に押し込んだ。
多分あの女とイチャイチャするためだろう。
私の耳は地獄耳になってしまったので、どこにいても二人の会話が筒抜けなのに、意味が無い。
「ねえ、何時から飼っているの猫。」
「三ヶ月になるかな。でも、ちっとも大きくならないんだ。小さい種類なのかも知れない。よく食べているから、病気では無いと思うんだけど。」
「ふーん。大きくならないって言えば、貴男どうしたのよ・・・」
それから先は聞かないようにした。これ以上聞いたら、いけない場面になりそうだ。私は早寝を決め込んだ。と言っても殆ど一日中寝てばかりだけれども。
女は次の朝帰ったが、私にプレゼントだと言って、自分の持ち物から宝飾品を置いていった。
綺麗なブルーの宝石が付いたアンクレットだ。
私には少し大きいようだ。直ぐ首から外れてしまうだろう。
「ティモ、このスカーフ汚れてきたから捨ててしまおうな。代わりにこれを付けてあげる。綺麗だろう。」
と言って私が初めからしていたスカーフをはずそうとしたが、何となくいやだったので、激しく抵抗した。
「どうしたんだ、ティモ。そんなに暴れて。怪我をしてしまうよ。分った、分ったから。これはこのままにしておく。もう暴れないで。」
セスは私を抱き上げて頬ずりする。伸び始めの髭がいたい。前足で押しのけようとしてスカーフの中に前足が入ってしまった。そこから、ビスケットが落ちてきた。
「こんな処にビスケットが落ちている。カラの奴が置いていったのかな。」
セスがそのビスケットを持っていった。捨てに言ったのだろう。
でも、私は驚いていた。確かにこのスカーフから出てきた。あのビスケットは一体何だろう。大きめのビスケットだ。この小さな布切れには収まりきれないはずだ。試しにもう一度前足で触ってみると、また出てきた。何度も何度も出てくるので、面白くなってしまった。
その内、私の前にビスケットの山が出来ていた。
私は、こんな不思議なところに来たのだ。なら、魔法のスカーフだってあり得る。と納得した。
他にはどんな機能があるだろう。魔法なのだ。何でもありだろう。私の身体も、若しかしたら人間に戻れるかも知れない。セスのいない時を狙って試してみよう。
「ティモ、どうしたんだ!このビスケットの山は!」