1/12
プロローグ
「これでさようならね」
「ああ、この旅が俺等の別れだ。」
一ヶ月前、私達に草書で書かれた不思議な招待状が届けられた。
半信半疑でここに来てみたが、こんなホテルの一室に何があるというのだろう。
ここの場所は北の外れにあるひなびた温泉街だ。
ここはスキー場も併設された温泉施設で、冬がかき入れ時なのか宿泊客も多くいた。
その中に、これから別れてしまう二人が来て、何になると言うのだろう。
でもこれでスッキリするわ。長年この人と付き合ってきたが、もう辞めたい。自分の将来の為に、この人とはお仕舞いにしなければ。
彼は、妻帯者だ。所謂不倫関係の私達に未来はない。
余りにも長く関係が続いてしまって、お互い言い出せなかった。これで、踏ん切りがつくだろう。