表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/13

8葵翔のこゝろ(上)

〝「私は寂しい人間です」と先生が言った。「だからあなたの来てくださることを喜んでいます。だから、なぜそうたびたび来るのかといって聞いたのです」〟


これは『こゝろ』の上 先生と私 七に書かれている先生の台詞である。


葵翔は『こゝろ』を読み進めるにつれ、つくづく「先生」の言葉に共感していた。先ほど載せた「先生」の台詞だって、葵翔の状況を表すのにぴったりだった。


言うまでもない、七瀬華のことだ。


彼女は席替えをして、葵翔の隣席となった人だ。華はコミュニケーション力が高く、溌剌とした明るい性格でクラスのみんなに好かれている。いつでも笑顔を振りまいて、心の底からみんなと仲良くなりたい、楽しみたいと思っているゆえ、自然と彼女の周りには人が集まる。更には他人の気持ちを推しはかり、雰囲気を読んで行動するのがとても上手い。褒め上手で絶対に悪口を言わない華は、自然とグループの中心的な存在になっている。華がいるだけで周囲が明るく、華やかになる。


更に、個人的に華への評価ポイントが高いのが、彼女はとても正義感が強いということだ。それは葵翔が愛してやまない燈華と共通する性格だった。


例を挙げよう。先日、自習の時間があり、自習監督がいなかったことがあった。この状況ならば、よほど優秀な生徒の集団クラスでない限り、誰かしらが騒ぎ始めるだろう。葵翔ならば鬱陶しいなぁ、と心中でぼやきながらも見て見ぬふりをするが、華は違う。そんなことをしたら周りから疎まれても仕方がないだろうに、先生がいなくても静かにするべきだ、と自ら発言したのだ。華がそう言った時、葵翔はクラス一のぼっちの身であるにも関わらず、クラス一の人気者である華を心配して内心焦った。しかし、そんな葵翔の心配は杞憂に終わった。うざったい注意を受けたにもかかわらず、騒いでいた者は素直に従い、その後も華に対する言動を変えなかったのだ。陰口を言っている人も見たことがない。葵翔は改めてクラスのムードメーカーの力を思い知ったのだった。


華の正義感の強さの例は他にもある。雑用を押し付けられるだけの、誰もやりたがらないクラス委員に自ら申し出たり、班活動で仲間外れになっている人をさりげなく輪の中に入れたり。他にも数多く見られる。葵翔はそんな華を心の底から感心して見ていた。まるで燈華そのものだ、と自分の想い人を彼女に重ねて。また、華は葵翔の憧れる〝陽〟の塊だったのだ。


それに対して、一方の葵翔はどうか。生まれてから今日までずっと染み込まされてきた言葉や過去の経験から、他人を信頼できなくなっていた葵翔は、いつからか他人との関わりを避けるようになっていた。


嫌味でなく、自分はどうやら顔が整っているらしい。それは周囲からの態度によって、幼少期の時点で気づいていた。しかし格好良いというよりかは可愛いと見られているらしく、男として生を受けたものとしては少し遺憾だった。嫌味ではない。端正な顔立ちをしていて得したと思う機会も多々経験しているし、この顔に産んでくれた母親に感謝している。だが良いことづくめというわけでもない。顔が良いという理由で興味を抱いて葵翔に近づいてくる女子はこれまでに何度も目にしてきたのだが、いや、女子に限定した話ではないのだが、そこで問題が起こる。


葵翔は自分の人生の軌跡から、自分に声をかけてくれる人のことを心のどこかで疑ってしまい、心を開かずに口先だけで話していた。そのうちに、彼ら彼女らはつまらない葵翔に飽きて去っていってしまう。その上っ面な喋りもへたっぴで、自分自身に自信がないからか、尻窄まりになる上に弱々しい口調でしか話せない。背中を向けていく人々を見るたびに、葵翔はさらに自分自身に失望し、自信喪失していくのだった。


そんな葵翔にも、華は例外なく笑顔を向けて接してくれた。正義感の強い彼女のことだ。きっと、常に一人でいる葵翔を気遣って話しかけてくれているのだと思う。葵翔はそんな嫌味な解釈で、華の行動を何処か達観した様子で見ていた。しかし、正義感で動かされている華は、すぐに葵翔に飽きて背中を向けるだろうと思っていたが、彼女は一ヶ月以上葵翔に構ってくれている。葵翔は嬉しいという感情の前に、なぜという疑問を抱いた。


葵翔は華が話しかけてくれることを単純に嬉しいと思う。けれど、常に華の豊かなコミュ力と比較して、自分の喋りが情けなくなる。それに彼女もいつか自分に愛想を尽かしてしまうという仄かな恐怖と疑いの念を心の奥で抱いているため、こんなに親切にしてくれる彼女に対しても、どこか距離を置いてしまう。


そんな自分が嫌だった。


また、華のことも善い人だと思うものの、完全に好きにはなれなかった。心を開くなんて尚更。自分と比較して情けなくなるし、いつだってこの笑顔の裏には何か隠しているんじゃないか、と疑いの目を向けてしまう。それに読書中に声をかけてくるのはできるだけ控えて欲しいし、更に驚かしてくるのは本気でやめて欲しかった。心臓に悪い。


また、こころで「先生」もまた、自分を嫌う結果、世の中まで厭になったのだと書かれている。つくづく「先生」に共感する。


葵翔は帰り道をトボトボと歩きながら、ついさっきのことを思い浮かべる。


「葵翔くん、また明日!」


葵翔が先ほど、帰りの支度をして席を立つと、隣席の華が満面の笑みで両手をぶんぶんと振って、そう挨拶をしてくれた。ここ最近、華は元気がなかったのだが、なぜだか今日急に回復していた。そして、昼休みからはさらに元気に満ち溢れていた。そこにいるだけで後光が差しているように、きらっきらに輝いていた。その溢れんばかりの元気は放課後まで続き、葵翔を盛大に見送ってくれた。葵翔は思わず笑いをこぼし、小さく手を振ると、華はより一層顔を綻ばせていた。


(てかそれよりも今日は、なんかおかしなことが続いたなぁ…。いや、そんなにおかしくもないけど、日常的にも起こらないというか…。)


ズバリ言うと、今日は作られたような美少女と二度も遭遇し、彼女らがやたら葵翔との距離が近かったのだ。一人目とは廊下の角でぶつかって少し演技じみた様子で葵翔の手を握ってきて、二人目も顔を近づけてきて、物理的にやたら接近してきた。偶然だろうが、変な一日だった。それにしても、あそこまでの美少女ならば、顔を見たら二度と忘れないだろうに、学校でこれまで目にした覚えがなかった。


(僕、初対面の人に燈華が好き、って言っちゃった…! いや、彼女からしたら、ただのリアコに見えてるからそんなに恥ずかしい話じゃないけどさ…! まぁ、イタい奴には変わりないけど…。う〜、変なとこに拘ってるけど、ほんとにリアコじゃないんだけどなぁ…。燈華の唯一の親友なのに…。)


葵翔はそんなふうに頭の中で考えて、う〜、と悶える。


(てか僕、口に出して燈華が好きって言ったの初めてじゃん…!)


そう認識すると、葵翔は顔の火照りが止まらなかった。頭の中で燈華の屈託ない笑顔がフラッシュバックされる。大人びているけれど、どこか抜けている同い年の謎めいた少女。蒼太を励ましてくれた心優しい少女。今では親友、相棒として背中を預けあい、一緒に退治することが当たり前になっている。燈華に会うたびに気持ちが募ってどうにかなりそうだった。


そう、葵翔は蒼太として、燈華の事がずっと好きだった。弱くて情けない自分を変えたくて、蒼太として活動する時は自分自身が望んでいた性格を演じようと決めた。今はすっかり定着しているものの、始めた頃は演じること自体が恥ずかしく、燈華がいなければ、蒼太は元の性格同様になっていたかもしれない。


燈華は蒼太の活動初日に、偶然同じく活動を始めた少女だった。燈華は声をかけられないでいた蒼太に、これからよろしく、と微笑んで手を差し伸べてくれた。不特定多数の学校の同級生とは異なり、魔法少女として同い年の彼女は唯一だ。たまたま近所で、たまたま同じ日に活動を始めた少女。葵翔の目からはどう見てもそんなふうには見えなかったが、燈華も初日だから不安だ、一緒に頑張ろうと言ってくれた。その言葉は葵翔を安心させ、勇気を与えた。こんな葵翔でさえも一緒に戦ってくれる、頼ってくれるのだと。


葵翔は胸が温まるようだった。是非とも彼女と今後も関わっていきたい。今後同じ区域で活動するにあたって、彼女にまで見限られるのは辛い。彼女は幼いにも関わらずしっかりとしていて、このままでは彼女に失望させてしまう。そう強く思った結果、葵翔は無事に自分のなりたい自分を演じきることができたのだ。


美しい思い出を追憶していると、ありし日の退治後、燈華と平生のように他愛もない話をしていた時、彼女は私達は何故だか遭遇率が高い、と口にしていた事をふと思い出した。


(偶然なんて、こんなにも頻繁にあるわけないのにな…。)


葵翔は苦笑する。そう、決して偶然ではない。遭遇率が高いのは、葵翔が燈華に会いたくて、いつも燈華が向かったという退治先に駆けつけているからだ。燈華はいつだって葵翔の方が遅くやってくるという事実に気づいていないのだろうか。


(燈華はしっかりしてるように見えて、実は大雑把だからな…。)


葵翔は近くでしか知り得ない彼女の性格を思い出して、クスッと笑った。


名前は出していないけれど、口に出して燈華を好きだと言ったのは初めてで、顔の火照りが止まらなかった。頭の中で燈華の屈託ない笑顔がフラッシュバックされる。大人びているけれど、どこか抜けている同い年の謎めいた少女。蒼太を励ましてくれた心優しい少女。今では親友、相棒として背中を預けあい、一緒に退治することが当たり前になっている。燈華に会うたびに気持ちが募ってどうにかなりそうだった。


(けど、僕は彼女の何も知らない…。)


お互いに悩みを相談できる仲ではあるけれども、葵翔は燈華の本名さえ知らない。本当の彼女を知らずには、これ以上親しくなることはないだろう。だが、そのきっかけを掴めずにいる。五年も互いの個人情報を話さずにいたら、自然と日常のことは口に出さなくなった。出会ったばかりの頃ならまだ、その幼さも相まって自然と聞き出せただろうに。葵翔にはそれが歯痒くて仕方がなかった。


「ただいま。」


その後、葵翔は自宅に到着し、そう声に出す。すると、一階の一番奥の部屋から、


「おかえり、葵翔。」


と、小さいけれど温かみのこもった声で返事が返ってきた。葵翔はそれだけで、胸の奥で火が灯ったように気持ちがパッと明るくなる。葵翔は荷物を背負ったまま、一目散に奥の部屋へと駆けて行く。


「母さん、体調は平気?」


奥の部屋の扉を開けると、葵翔の母親・日葵がベッドの上で上半身を起こし、朗らかに微笑んでいた。


「平気よ。今日はずっと調子がいいわ。心配してくれてありがとうね。」


日葵のその言葉に、葵翔はホッと息をつく。


日葵は葵翔のたった一人の大切な家族だ。葵翔に父親はいない。いや、いないという言い方には語弊がある。存命だけれど、一度たりとも葵翔の父親をしていた事はない。日葵は女手一つで葵翔を今日まで育て上げてくれた。


日葵と葵翔の父親は婚約していたそうだが、結婚式直前になって父親から衝撃の事実を伝えられ、絶望して父親を拒絶した日葵によって結婚は中止となったらしい。式直前に結婚をやめるなんて、いったいどんな重大な秘密を伝えられたのだろう。葵翔は当然、その内容が気になり、これまでずっと尋ね続けてきたのだが、日葵は頑なに口を開かない。なんでも、その内容は葵翔にも関係しているらしく、葵翔もまた深く傷つから聞くべきでない、と日葵は言う。葵翔はこれまで、母の人生を狂わせた憎むべき秘密について何度も熟考してきたのだが、その甲斐あって葵翔なりにたどり着いた答えはある。答えを述べるにおいて、いくつかの手がかりを提示しよう。


一つ、日葵はそれきり魔法少女を辞めた事。これは現在も彼女をおかし続けている病気のせいでもあるのだが、病気については後ほど説明しよう。

二つ、日葵は自分だけでなく、葵翔にも魔法少年を受け継いで欲しくなかった事。しかし葵翔は日葵の病気を考え、母親の反対を振り切って活動し始めた。

三つ、〝聖剣〟は近頃力が弱まってきていて、日葵もまたその一人だったのに、蒼太は〝聖剣〟では稀に見るレベルの強力な力の持ち主であると言う事。見放され始めていた〝聖剣〟の評判を再び上げたのは、蒼太の力と言っても過言ではない。

四つ、日葵は〝神弓〟を心底嫌厭しており、葵翔がKAMIYUMI から給料を受け取る事を禁止した事。


一つ、二つの手がかりだけでは、魔法少女・少年という職を遠ざけるようになったとしかわからないので、こちらは考えても無駄だろう。しかし、三つ、四つの手がかりからはある一つの仮定が導き出される。


それは、葵翔の父親が〝神弓〟の家系だということ。


具現化能力の弱まっていた〝聖剣〟である母親と、日本最高峰の力を持ち備える〝神弓〟である父親。葵翔がこの二つの家系のハーフならば、〝聖剣〟よりも力が強くなるのは当たり前だ。


そしてこの推測と四つ目の情報を掛け合わせると、魔法少女・少年について誰よりも詳しい〝神弓〟出身の葵翔の父親から、日葵は魔法少女・少年に関する衝撃的な、それも結婚を取りやめるような真実を伝えられたと考えられる。そうして魔法少女・少年を嫌うようになり、同時に〝神弓〟自体も遠ざけるようになった。


いったい、これほどまで日葵を嫌厭させた、魔法少女・少年に隠された秘密とは何なのだろう。いや、葵翔が勝手にそう推測しただけで、そもそも葵翔の父親が〝神弓〟でない可能性の方が高い。半ば決めつけに近い仮定だ。あくまで可能性の域を出ない。日葵は葵翔の父親に関して一切合切情報を与えないのだ。


(いや…一つだけあるな。)


葵翔はちらりと母親の顔を伺い、やっぱりな、と半ば諦めたような思いで微笑した。一眼見ただけでわかる、日葵が葵翔に与えた唯一の父親についての情報は、


(僕が、父親と瓜二つだってこと…。)


そう、皮肉にも、葵翔は父親似だった。母の元婚約者のことを、〝父親〟だなんて心の中でも呼びたくないのに。母親とは顔立ちにおいて共通する部分がほとんどなかった。


日葵は以前、日々成長していく葵翔を眺め、どんどんあの人に似ていく、と苦笑まじりに漏らしたことがある。葵翔はそれを聞いた時、ギュッと胸が締め付けられるような錯覚を覚え、心臓が機能せずに呼吸が苦しくなった。よりにもよって、愛しい母親の人生を狂わした、忌まわしい父親とそっくりだなんて。


そして、以前述べた葵翔に染み込まされてきたという母親の教えも、忌まわしき父親の手によって引き起こされた、例の事件に関係しているらしい。結婚直前に婚約者から裏切りのような事実を教えられた日葵は、葵翔に〝人と世間を簡単に信頼してはいけない、常に疑え〟と教え続けた。それ故葵翔はまず人を疑ってかかる姿勢が出来上がってしまい、元の性格も相まって、友達が一人もできなくなった。しかし、日葵のことを憎んではいない。日葵は葵翔がこの世で最も信頼する人なので、彼女が言うことは全て葵翔のためになると信じているからだ。


そして、以前述べた葵翔に染み込まされてきたという母親の教えも、父親の手によって引き起こされた、例の事件に関係しているらしい。結婚直前に婚約者から裏切りのような事実を教えられた日葵は、葵翔に〝人と世間を簡単に信頼してはいけない、常に疑え〟と教え続けた。それ故葵翔はまず人を疑ってかかる姿勢が出来上がってしまい、元の性格も相まって、友達が一人もできなくなった。しかし、日葵のことを憎んではいない。日葵は葵翔がこの世で最も信頼する人なので、彼女が言うことは全て葵翔の為だと信じているからだ。


葵翔はベッドの上で微笑む、日葵の顔を見て言った。確かに今日は調子がよさそうだ。


「でも、油断しちゃいけないよ。昨日はずっと体調悪かったんだから。」

「そうねぇ。でも大丈夫。」


葵翔の忠告に、日葵は心配症なんだから、とケタケタ笑った。日葵の病気は、具現化能力を持つものしか罹らない特殊なものだ。具現化能力を持つものは、自分でこれを作ろう、と頭の中で精密にイメージして作り出す。しかし、この原因もはっきりしていない数少ない病気・具現化症候群に罹ったものは、刺激を受けると、望んでいなくても頭に浮かんだものが具現化してしまうのだ。精密にイメージしたわけではないので、生み出されたものはほとんどがぐちゃぐちゃとしたゴミ屑の様な、まるで〝負〟の怪物のようになってしまう。しかもこれまた理由がわからないが、望まずに具現化してしまった回数が多ければ多いほど、身体が弱っていくのだ。


母親は父親と別れて一人で葵翔を育てたのだが、彼女は無自覚だったが、当時からこの病気に罹っていたと思われる。おそらく式直前に卒然恋人と別れ、一人で葵翔を育てた境遇によるストレスから。刺激を受ける、例えば赤ん坊だった葵翔が泣き出したりしたら病気によって具現化をしてしまい、その度に身体を弱くしていった。なんとか育児と仕事を両立させていたのだが、葵翔が十歳になる頃には、足がほとんど動かなくなっていた。それでも葵翔のために頑張ろうとしていた日葵をなんとか説得し、そして魔法少年を反対する日葵をなんとか振り切って、葵翔が働き始めた。それから、これまでの反動が一気に来たのか、日葵は足が全く動かせなくなると同時に、体調が優れない日が増え、ベッドの上から離れられなくなった。


葵翔は日葵を入院させて病気を治して欲しいと望んでいるのだが、何しろそもそも具現化能力を持つ人口が少ないため、病気に罹る人もほとんどいない。それ故あまり研究が進んでおらず、わからないことだらけなのだ。それでも具現化症候群の研究を進めている病院が海外にあるので、葵翔はそこへ日葵を行かせたいと望んでいた。しかし圧倒的にお金がない。KAMIYUMIからのお金は受け取らないので、理由こそ違うものの、〝煙硝〟同様に政府からのお金しか受け取らない。世間からは〝煙硝〟に触発され、〝聖剣〟も正義に忠実になったのではないかと噂されていた。本当は違うのだが。


「ねぇ葵翔、今日ね、オンラインで個人面談があったの。」


その時、日葵が口元に微笑みを浮かべてそう言った。葵翔は耳を疑う。


「ええ? やらなくていいって言ったのに。」


葵翔は思わず渋面を作ってしまい。葵翔を想って面談をしてくれたのだろうが、日常と少しでも違ったことをすると刺激になるのであまり無理をして欲しくない。


(…ていうのは建前だけど。いや、もちろん体調は心配なんだけどさ。)


葵翔は心の中で自分自身に言い訳する。


本音を言うと、葵翔は日葵に学校での様子を知られたくなかったのだ。

最後まで読んでいただいてありがとうございます!! 今回は葵翔目線で華への気持ちを語らせることが目的でした。けれど本来の目的よりも、今後の核心部分へ向けた情報が多くなってしまった…! 私自身、こんなに一気に書いて大丈夫かと不安です(笑)。普段1話あたり5000字を目あすにしているのですが、オーバーして7700字書いても終わらなかったので、一旦切り上げて『9葵翔のこゝろ(下)』へ続かせることにします(笑)。今後も読んでいただけると嬉しいです!! いつもありがとうございます!


(ちなみに、私自身も葵翔と同じように『こゝろ』を読んでいたのですが、ついこの間読み終えました^ ^。文学作品だけれど読みやすく、また、心情描写が素晴らしくて、とても良かったです。教科書に載ってる作品だとか関係なく、内容も面白かったです。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
葵翔の想いから燈華の想いと、華への想い。同一人物なのに、少し違うけど、似たように思えているのが面白いです。むしろ。それは葵翔と蒼汰というキャラの違いなのかもしれませんね その上で、葵翔の凄絶な設定が心…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ