ヒルダの怪しいブーツ
3部構成となりました。どうか、お許しを。御願い申し上げます!
お札を一枚、握り締めたステファンぼうやは、駆け足で、隣の丁目にある製靴店を目指した。 木で出来たその建物は、二階建ての、住居を兼ねたす造りのようだった。一階が製靴店の店舗であり、二階に、店主一家が棲んでいるのであろあろうと思われた。 家屋は、全体的にとても古びていて、まだ中を見ていなくとも、脚を踏み入れたら床がぎしぎしと軋むのだろうことが想像出来てしまうのであった。 おそらくは、築年数にすれば、3、40年といったところか。 夕陽に紅く輝く街の片隅にひっそり佇んで、不気味ともいえる雰囲気を漂わせている家屋であった。
どちらかというと、内気な性格のステファンぼうやは、その御店の前で、すっかり怖じ気づいてしまった。 脚が竦んで、動いてくれないのであ?。もう駄目なのである。この場からすぐに逃げ出してしまいたいという衝動に駆られてならないのである。 ふと眼をあげると、軒先の上の方に、御店の名前と思しき文字の掲げられたトタン製の看板が横にのびているのだった。 その文字を読んでみた。『ヒルダ』
と書かれているようである。 と、その時である。ステファンぼうやの背後から突然、声が響(ひび、)いたのである。
「おい、どうした、ぼうず。なんか用か?」 ひしわがれたよあな低い声だった。聞いたことのない声だ。
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