ヒルダおじさんの怪しい靴屋さん
宜しく御願い申し上げます!
ステファンぼうやは、ブーツが欲しかった。 欲しくてほしくて堪らなかった。 何故かというとそれは、季節が夏から秋、そして秋から冬へと移り変わろうとしているからだった。 そう、ステファンぼうやは極度に寒がりなのであり、従って、寒い季節が、めっぽう苦手なのであった。 苦手であるからして、寒い季節には、脚部の露出を極力抑えたい一心でいるのである。 その為には、足首だって出来ることなら、外気から布地で覆い隠しておきたいものだったのだ。 そう。だからこそ、シャフトが長くて脚の脹脛の部分までをも厚い布地で包んでくれるようなエンジニア・ブーツみたいなのが欲しくてならなかったのである。 そこで、ある初秋の穏やかな日和に、ステファンぼうやは、お母さんに思い切って、お小遣いを貰おうと決心したのだ。 普段からあまりお小遣いというものを貰ってはいないステファンぼうやにはお金の貯えがなかったものだから、臨時のお小遣い貰って欲しかったブーツを買うお金として遣うという以外に、ブーツを買う手立てなどなかったのである。 ブーツは欲しい。でも、お母さんに直接「ブーツを買って」と頼み込むのは、何故だがどうして、とてつもなく気が引けてしまう行為に他ならないと思えてならないのであった。 そんなに裕福でもないお母さんに、わがままを言いたくない━━。 そう思うからこそにとっては、とてつもなく思い切らなければならない行為だったのである。 ━━無駄に遣うのではないのよ。いいわね。 お母さんは渋々といったふうにでもなくそう言って、お札を一枚、渡してくれた。何につかうの?とは訊かれなかったのをステファンぼうやは、非常に良かった、と思った。 さて、ステファンぼうやは、一枚のお札を握りしめながら、地元の靴屋を目指した。そこはブーツも豊富に取り揃えている筈であった。
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