神和住 零羅 己を極める為に・・・放て!魔覇斗剛拳流!!
「だーーーーっ!!まだ着かないのーーー!?」
わたくしたちは、ランサーさんと共にしばらく走りましたが、どうやら人のいる場所はかなり遠いらしいです。
「かなり距離があるんですね、どれくらいあるんですか?」
「あー、明日まではかかりそうらしいッス。マジっすか・・・」
「そうなんですか。流石に疲れましたね。少し休憩します?」
「だな、この旅は時間がかかりそうッスから。休息を取れる時に取っておかないと」
人のいる場所に辿り着いても、わたくしたちが追っているのは異世界であるここでも伝説上の存在。四精霊です。そう簡単には見つからないはず。今のところ唯一の手掛かりと言えばランサーさんぐらいでしょうか。
「ん~、じゃあさ零羅。ここじゃ特にやれる事もなさそうだから早速手合わせしないッスか?ランサーも俺たちがどんな戦いをしてきたのか見てみたいんだって」
桜蘭さんの提案、ここならば誰もいませんしかなり広い。問題なさそうですね。
「そうですね。ではまず丸腰の状態でいきましょう。武器無しです」
わたくしはランサーさんから降り、少し体を動かしました。桜蘭さんはドテッとランサーさんから墜落してしましましたが、すぐさま元気に起き上がりました。
「よっしゃ!!どこからでもかかってきていいッスよ!!」
「ではお言葉に甘えさせてもらいます・・・ちゃんと避けて下さいねー!」
「はいッス!!」
まずは基礎、正拳突きからいきます。わたくしは、呼吸を一旦整え、軽くステップを踏み、その後一気に桜蘭さんの懐に入り込み拳を突き出しました。
「うわっ!!」
紙一重で避けられました。では次、左フックです。
「ひえっ!」
わたくしは次々に攻撃を放ちました。さすが三上さんを倒しただけはありますね。全てちゃんとかわしてます。ただちょっとぎこちありませんが・・・
「こんな感じでどうでしょうか、桜蘭さーん!反撃してもいいですよー!」
わたくしばかり攻撃しても意味はありません。次は桜蘭さんの番です。
「っていうかちょい待ち・・・零羅、早いって。反撃しようにも 避けるだけで精一杯で・・・ぜぇ」
あれ?桜蘭さん、肩で呼吸してます?そんなに早い攻撃をしたつもりはなかったのですが・・・
「あの、そんなに早かったですか?」
「早いッスよ。俺、視力が良くなってる分、反射神経は多少いいみたいッスから、それでなんとか避けれただけで・・・反撃はどうにも」
「うーん、そうなのですか・・・反射神経がいいのなら、体がそれに反応しておのずと反撃しそうですけど。難しいんですかね?」
わたくしの戦い方は相手の動きに対して、反射的に体を動かしている感じなのですが、桜蘭さんは違うのでしょうか?
桜蘭さんは目で見てから判断している。だから反撃に転じる事が出来ないのではないでしょうか?
「桜蘭さん、次は桜蘭さんから攻撃してみて下さい。もしかしたら何かアドバイスができるかもです!」
「あ、分かったッス!!んと、魔法使ってもいいッスか?」
「構いませんよ。桜蘭さん、魔法を使った射撃が得意でしたもんね」
次は桜蘭さんの番です。桜蘭さんは指先に電撃を纏いました。そしてそれを銃弾の様に真っ直ぐ放つ。わたくしはすかさず前に飛び、電撃をかわし、拳を突き出しました。
「ありっ!?」
「勝負ありですね。やはり桜蘭さん、目で見てから行動してますね。狙う位置は正確、攻撃も少ない力で確実な一撃を持ってました。しかし、それでは攻撃は返されてしまうのが関の山です」
わたくしは、正拳を桜蘭さんの顔の目の前で止めました。当ててしまったらちょっと桜蘭さんの顔が大変な事になってしまいますので。
わたくしは拳を降ろし、気が付いた桜蘭さんの弱点を述べました。
「うーん、じゃあどうしよ、三上の時は上手くいったんだけどなぁ・・・」
「それはきっと三上さんと戦い方の相性が良かったんじゃないでしょうか?三上さんの戦い方って、相手の動きを先に読みそこから自分の手を出すって感じでしたよね。わたくしからしたら最も相性の悪い相手です。しかし、それは桜蘭さんも同様なのではないでしょうか?」
「俺が三上の野郎と同じ?でも、言われてみればそうかもしれないッスね。そういえばあいつのやってた縮地法なんかそれの究極じゃないッスか」
縮地法!?それって漫画のやつじゃないですか!あの人、そんな事まで出来たんですか!?いやはや、敵とは言え天晴れと言うべきなのでしょうか。
「そうですね、まぁ縮地を使えるようになれとは言いませんが、相手の呼吸を読むのは大事だと思いますよ?それが決まれば、おのずと反撃に転じれるはずです」
「そう言うもんなんスか・・・確かに、三上と戦ってた時、俺は必死にあいつにしがみつこうとあいつばっかり見てたッスね・・・そうか。零羅、もう一度攻撃お願いしていいッスか?今度は行けそうな気がするッス!!」
目つきが変わりました。今度はしっかりとわたくしを見ています。この目付きなら、本気で向かってもよさそうですね。
先ほどは攻撃が当たっても骨が砕けるようなことはありませんでしたが、今度は違います。骨を砕くあの技、そしてさらにそこに魔法を加えた、魔破闘剛拳流でいきます。
「行きますよ桜蘭さん、次の攻撃、当たればただじゃ済みません」
「あぁ、今度は行けるッス」
わたくしは少し地面を蹴り、足場を慣らしました。
そして風の魔法を足から放ち、その勢いで一気に加速し、大きく引いた拳を前に突き出しました。
「魔破闘剛拳流!一つ目!!風蹴撃破拳!」
踏み込んだ右足は地面を陥没させた。突き出した拳は・・・風を殴り、小さな衝撃波が空に消えた。
わたくしの拳は、空に向けられていた。桜蘭さんの右手が、わたくしの右手を弾いていたのです。そして同時にわたくしの懐に入っていました。そして左手の指先がわたくしに向けられていました。
「決まったッス!」
やられました、一気にここまでやるなんて正直驚きですね・・・あれ?
「へ!?へぶっ!!」
あ・・・
感心しているのも束の間、やってしまいました・・・わたくしは懐に入られたと同時に体をぐるっと回し、その勢いに乗せて回し蹴りを桜蘭さんの顔面に向けてはなってしまいました。
「はわわわわわわ!!すみません!!大丈夫でしたか!?」
「お、おうふ・・・あふぉはふへは・・・」
多分、顎が外れたと言ったみたいです。
「ごめんなさい!ここまでやるつもりはなかったんですぅ!!」
本当です!今のは完全に無意識でした!!まさか、集中した状態で懐まで入られるなんて思いもしなかったものですから!
「ふぉぉ、いってぇ・・・やっぱまだ無理だったッスか」
桜蘭さんはしょんぼりと顎をさすりながら起き上がりました。
「そんなこと無いですよぉ!!今の技ですよ!あれが極められれば!わたくしや、三上さんだけでなく、彼らに対抗するのにかなりの力になりますよ!!」
「あ~、褒めてくれてありがとッス。でもまだまだなのは事実ッスから、もっと頑張らないと。にしても魔破闘剛拳流ッスか・・・名前のごつさに引けを取らない凄い技ッスね・・・あぁ痛い・・・」
桜蘭さんはいつも頑張ろうとしてます。失礼な話、わたくしが桜蘭さんと出会った時、非常に弱弱しく見えました、しかし旅を通じて桜蘭さんはどんどん成長しました。そしてそんな桜蘭さんのおかげでわたくしは、暴走するわたくしを超える事が出来ました。
桜蘭さんはわたくしを目標としているみたいですが、わたくしからしたら、あなたがわたくしの目標です。見習わなくてはいけません、常に自分と戦い続けるあなたを。
「そうですか、ではもっと強く凄い技を考えなくてはいけませんね。風蹴撃破拳はまだ序の口です。一緒に頑張りましょう!」
「う、うん・・・ネーミングセンスはもうツッコまないッス」
?
まぁいいですか、次はどんな技が良いでしょうか?ウフフ、考えるの楽しいです!