アーサー コンシンネ 捜索
アーサーはオーギュストと共に世界の真実を暴くために動き出す。
俺の名はアーサー コンシンネだ。今はオーギュストと共に新アダムスビルヂングに来てる。そしてこの場所、ここで勇者たちは王と戦い、そして勝った。
だがその後、彼らの行方を知る者は誰もいない。今は警察が現場検証をしていた。
「あ、アーサーさん。あなたがここに来たって事はこの事件を担当するんですか?」
警察官の一人がビルの入り口で待っていた。
「まぁね、こんな大きな事件、見過ごせないでしょ?それに、兄弟も調べたがってるしね。どちらが先に解決できるか勝負ってね。おたくの刑事さんたちとも勝負していいけどね」
「いやぁ、ここの者にコレを解決できる人はいませんよ。でも珍しいですね、オーギュストさん、アーサーさんの事を嫌ってたのに一緒にいるなんて」
「うっせぇ、大体俺が先にここに来ようと思ったら付いてくるんだ。邪魔ったらありゃしねぇ」
オーギュストは相変わらず俺を目の敵にしている。そんなに嫌われてるのかな俺。俺は結構こいつの事は気に入ってるんだがな。やっぱ女嫌いの性格のせいなのかな。
「まぁいいじゃないか、今回の事件は流石に横取りは出来そうにない、どちらが先に真相に辿り着くかだ。もしかしたら辿り着いても公には公表できないかもしれないしね」
「ふん!俺はどんな事実が待っていようと公表するぜ、都合のいい事実はうんざりだ」
俺たちはビルに入り、そして最上階の玉座の間に向かった。
玉座の間の入り口にも警察が見張っていた、中には軍の連中もいる。
「アーサーさんにオーギュストさん、お話は伺っております。こちらですよ」
俺たちは案内され中に入った。
「どうやらここで戦闘が繰り広げられてたみたいなんですよね」
部屋の中は妙に暑い。そして周囲の壁やらオブジェやらがあちこち溶けたような跡になっている。
「にしても、どんな戦いをしたらこうなるんですかねぇ。あ、まだ高温になってる場所がちらほら残ってますので注意してください」
俺は玉座の間の周囲を調べる。
「うーん、この戦いの跡から察するにどうやら炎の魔法を多用してたみたいだね。王は魔法の中でも炎を最も得意としていた・・・」
「いんや、こいつぁ王の魔法じゃねぇよ」
オーギュストが私の考えを否定した。
「よく見な、炎の跡をよ。炎は直線的で抉ったようになっている。王は剣に炎を纏い戦う。だとしたら炎はまっすぐは飛ばさない。現にあいつは突き技を苦手としていたしな。それに、炎を撃ち出したにしてもどうにも角度が変だ。それに、玉座の上にはこいつが落ちていた」
オーギュストは目の前に毛の塊を突き出した。
「毛?この茶色の毛は・・・まさか狐か?」
「そうだ、王はここでは戦ってねぇ。恐らくフォックスだ。あいつはよく分からない事が多いって噂だしな。だが考えられるとしたら、フォックスの魔法だ」
そうか、てっきりここで戦ったかと思った。だとしたら王はどこに?
「ねぇ、ここって屋上に上がれるの?」
「いや、この部屋からは行けないはずですよ?一旦廊下に出てぐるっと回らないと」
なんでそんな変な構造をしているんだ?第一ここは法律の制定や政府の議員たちの発表などをする多くの要人が出入りする場所だ。それなのに非常口がない?そんな訳ない。
俺は周囲を探索した。
「ん?」
周囲を見渡していた時にふと気が付いた、残っていた炎が不自然に揺れた。出入口が一つしかないのならあんな揺れ方はしない。換気扇でもない筈だ。だからどこかにあるんだ。出口が・・・
あの揺れ方からすると・・・
『玉座の裏!!』
俺とオーギュストが同時に声を上げた。
「ちっ、同時かよ」
「済まないねぇ」
俺たちは大きな椅子の後ろに回り込んだ、そしてカーテンを外すとそこには。
「あれ?何もない・・・」
レンガの壁があるだけだった。
「いんやこれだ。ほらよ!!」
オーギュストがいきなりどこからか持ち出したバールを隙間に突っ込んだ。
「あぁあ!!オーギュストさん!!現場を荒らさないで下さいよ!!」
「うっせぇな、こうしねぇと元の状態にはならねぇはずなんだよ」
ボコッ!と気味の良い音を立ててレンガが壊れた。その奥には無機質な階段が見える。ここだ。しかし何故隠れていた?そうか、そう言う事か。
「成程ね、この扉はあくまでも隠し扉。ここでの戦闘の後誰かがここを隠す為にここを閉じておいたってところか。誰が閉めたかは先に行けばヒントがあるはず」
私は更に壁を崩し、オーギュストと競いながら屋上を目指した。
「これは・・・」
辿り着いた光景は、先ほど見た光景よりも更に肝を抜かれる気分だ。
「まさに激戦だな、一対一、間違いねぇここで王は最後の戦いを繰り広げていた。にしてもすごい出血量だな、王は誰と戦ったんだ?ここまであいつを追い詰めるなんてよぉ」
「だけど、王の遺体はどこだ?残されているのは、流血光刃だけか」
王の使っていた武器、流血光刃が抉れた地面の中心の血だまりの中にポツンと突き刺さっていた。
「王は最後ここにいた。仰向けだ。そして一人がここに立っていた・・・男性か?まだ若い。そして、この弾痕。一発の銃弾が勝負を終わらせた」
「その後、そいつぁ倒れこんだが、誰かに運ばれた・・・足跡は、あのダストシュートまで」
戦闘の痕跡は掴んだ、だが何故だ?何故ここから降りた?まるで逃げるようだ。
仕方ない、一旦降りるか・・・いや、いっそのこと俺もここから降りたほうが・・・
「おい、ちょっと待て!」
オーギュストが呼び止めた。
「こいつぁなんだ?」
オーギュストの目線の先の血まみれの跡。
「なんだこれは。血まみれの何かがここに置いてあった?少し大きめの箱のような物」
「あぁ、しかも少し重たいものだ。数十キロと言ったところか。しかしここだけは妙におかしい。そこのダストシュートには足跡は続いているのが分かる。だがここにあるのは一人分だ、王の足跡。王は箱をここに置いた。だがその後は誰も触れてはいない。だが消えている」
「勇者たちがここから姿を消した後に、誰かがここに来てこれを回収した?」
「そいつが恐らく、ここの扉を閉めた。へっ、俺の睨んだ通りだ。この事件、裏があるぜ」
流石に俺もここの状況までは予測出来なかった。第三勢力がいる。
「もしかしたら、俺たちは知ってはいけないことを知ろうとしてんのか?」
「かもね、引き下がるなら今しかないな。これは一探偵の負う仕事じゃない。だけど・・・」
『この乗り掛かった舟、降りるには勿体ないな!!』
俺とオーギュストは同時に駆け出し、ダストシュートへとダイブした。
「って あ!ちょ!!アーサーさ~~~~~ん!!」
後ろの方で警察が俺を呼んでいるのが聞こえるが、構うものか。正直ここまで好奇心をくすぐられる気分は初めてだ。
「さぁて、まずは勇者たちの足取りを追うか!!」
俺は下に待機させておいた車に乗り込んだ。
「あ!てめぇ!!」
後ろでオーギュストが叫んでいるが構わないさ。これはこいつとの勝負でもある。
「車を出してくれる?場所は南オーシャナ森林地帯だ」
先に言っておこうか、俺は財力と情報網はオーギュストより上だよ。