麗沢 弾 クッキングファットマン
麗沢編、アトランティスを飛び出した麗沢はエルメスと共に世界の真相を伝えるべく中央に向かう。その中で麗沢は新たな闘いの道を見出す。
異世界珍道中Now・・・拙者の名は、麗沢 弾。名前の由来はこの見るがまま!!ボイーンと弾むふっくらボディ!!そしてくるんくるんアフロに近い天然パーマ!!と、ついでのメガネ。
これが拙者、麗沢 弾でござる。これより新たに主人公として以後、お見知り置きを。とは言っても、拙者は主人公より十六番手位のモブが性に合っているのでござるがな。
しかし、これでも世界の命運を任された身。今はエルメス殿と中央を目指している最中でござる。
「はぁ〜疲れたわ〜・・・」
この今岩の日陰にどっこいしょと座ったくるりん金髪サイドテールの女性がエルメス アダムス殿。サバサバした性格でござるが、一応これでもこの国の王女である。
「今なんか、失礼な事言った?」
「いや?にしてもだるだる〜でござるなぁ〜。拙者も一休み」
拙者も限界なので岩陰に寝っ転がった。
「・・・あのさレイサワ、サクラの事なんだけど・・・」
唐突にエルメス殿は先輩の事を話し出した。
「先輩がどうしたでござる?」
「そう言えばあいつとは、中央での戦い以降あんま話せなかったからさ・・・その、なんか私のこと言ってたりした?」
エルメス殿はどうも先輩に気があるようなのでござる。事の発端は前の旅の時、南オーシャナでエルメス殿が先輩を気絶させてしまったのが始まりで、あの時拙者が・・・
この事はどうでもいいでござるな、とにかくアレ以降どうも気になっているみたいなのでござる。
「うーむ、特にこれといった事は何も言ってはおらぬな、それにしても先輩いつの間にワダツミ殿やシレン殿と仲良くなっていたのでござろうか」
「ワダツミにシレンねぇ・・・うーむ、あの二人もなんだか怪しいんだよなぁ。特にシレンの方はやたらとサクラにくっついてる感じだったし、結構可愛かったし・・・」
「およ?」
「それよりも、レイラちゃんもどうなんだ?今時の子ってませてるからね。あの子もライバルになりえそう・・・って、あれ?もしかしてあの二人、二人っきりの旅になってない!?」
「うお!!」
エルメス殿が突然叫ぶものだから体が飛び跳ねてしまったでござる。
「うひゃ!レイサワ!?ビックリさせないでよ!」
同様にエルメス殿も飛んだ、ビックリしたのはこっちなのでござるが・・・
「レイサワ、走るぞ」
ほ?突然エルメス殿の目が光った。
「いいから走るぞー!!早くこの旅を終わらせねば!あああああ!!サクラの初めてがああああああ!!」
どうやら、エルメス殿は妄想の中で先輩が襲われてしまっているようでござる。零羅殿はそう言うタイプではないと思われるが・・・にしても、エルメス殿は拙者相手ではオープンに接する事が出来るようなのでござるなぁ。
もしかして拙者、人間と思われておらぬのか?ストレス発散装置か何かでござろうか。
引っ張られるように走り、どれだけの時間が経ったことだろう。数日、いや、数週間走った気分でござる。
「何へばってんだよぉ!!まだ五分も経ってないよ!!」
「そうか、五年も走ったのでござる・・・か」
「五分だ!!五年じゃなーい!!いいから起きろー!!起きてーー!!倒れるんじゃねー!」
この扱い、やはり拙者、おままごとの人形の様でござるな・・・
真面目な話、実際には小さな集落が見えていたので、エルメス殿はそれも踏まえ走っただけだった。合計十分程走ったのでござる。
「ありゃりゃ、誰もいないわね」
「はふぅ・・・そう、で ござるな。エルメス殿、流石に これ以上進むのは、危険ではなかろうか。そろそろ、日が、沈んで来た、ようですし、お寿司」
「はぁ、それもそうだね。にしても長いわねこの道、一体いつになったら人のいる場所に着くの?」
「そうでござるよなぁ、先輩たちやグレイシア殿も徒歩で旅に出たでござるからな。あ、でも先輩は動物と話せるみたいでござったな」
「あーそうだったわね、羨ましいわぁ、今度うちんとこの動物たちと話させてみたいな」
「で、出会ったらまた正面衝突するのでござるな、はっはっは!」
ゴッス!!エルメス殿の握りこぶしと正面衝突したでござる。
「それよりも、廃墟とはいえ缶詰程度は見つかったでござるよ。あとカセットコンロに、お!フライパァンッ!!そして?水道も錆びてはおるがしばらく出せば使えそうでござる」
「なんだかんだ探してたんだ。私もこれだけは見つけた」
エルメス殿もあのやり取りの間に様々な食材を探していたようでござる。ツナ缶に、トマト缶、大豆の水煮でござるか。
「エルメス殿、少し外を見てくるでござる」
「え、あ うん。気を付けて」
うーむ、どこかにいい材料は無かろうか、菜園をやっていた痕跡はあったのでござるが・・・
拙者が周囲を探っていたら
「お!コレは!!」
唐辛子でござる!!そう言えば、先輩前にジャンバラヤを食べてたでござるな・・・ならば!!
拙者は屋内へと戻った。そして棚などを粗探しした。
「レイサワ、なんかスイッチ入ってる?」
「ぬぅおおおおおおお!!これとこれをこう混ぜて、あーーーー!玉ねぎがないでござる!!仕方あるまい!缶詰のみでござるーーー!!」
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「出来た!!!」
「ひゃぁ!!」
拙者が叫んだと同時にエルメス殿が飛び上がった。
「ビックリしたぁ、で、何作ってたの?すっごい香辛料の匂いがするんだけど・・・」
「ふっふっふ、即興ではあるがオール缶詰チリコンカンでござる!!召し上がるでござる!」
拙者はエルメス殿の前に拙者オリジナルチリコンカンを出した。
「あ、ありがと、いただきます・・・」
エルメス殿が恐る恐る口に運ぶ。
「むっ!!」
「およ!?」
突然エルメス殿の眉間にしわが寄った。
「お、美味しいんだけど・・・」
「そ、そうでござったかぁ。外にあった唐辛子とここにあった香辛料で適当にチリパウダーを作って、それで作ってみたのでござる」
「めちゃくちゃ辛いって訳じゃないんだけど、辛さが丁度いい感じ。ツナも良い感じに食感があるし・・・レイサワ、こんなに料理上手かったんだ」
「ときたま作るぐらいでござるよ~、料理はいつもなんとなくで作っているものでござるから、今回も感性に任せて適当に作っただけでござる~」
上手いこといって、若干いい気分でござる。美味しいと言われるのはいいものでござるな。
「料理は感性ね・・・覚えておくわ、今度サクラにも作ってあげよっか、あいつ前まで辛いのが苦手だったんでしょ?こいつはどうか見てみたいしね」
「それは賛成でござる、エルメス殿の手料理でござるな!!」
『ゴッ!!!』
拙者がその言葉を発した後、何も見えなくなった。