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Re: 平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ! 第三章  作者: 冠 三湯切
『R e:第三章 パート0、この異世界より新たなる物語を探して』
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世界最強の男、ヴォイド ロドリゲス

 『R e:第三章 パート0、この異世界より新たなる物語を探して』




 中東、某国。ありふれた戦場・・・


 「撃て撃て撃て!!!」

 「ゴー!ゴー!ゴー!!」


 『ドドドドドドドドドドドドドンッッ!!』

 『ババババババッッッ』


 怒鳴るような大声と、乾いた発砲音。俺にとっていつもの朝がやって来た。


 「コンタクト!!」

 「退避ッッ!!援護ォォォっっ!!」


 色んな囀りが聞こえる。鉢合わせ、逃げ惑い、対立し、殺し合う。ちょうど良い目覚ましの音だ。


 『ヴォイド!!聞こえるかっ!?援護を頼むっ!!場所は!!』

 「11時の方向だ・・・伏せてろ。終わらせる」


 俺は通信して来た仲間に指示を出した。俺は愛銃のスナイパーライフルのスコープを覗き込む。そして大きく呼吸を整えた。


 「距離、1214・・・風は西から1.8メートル・・・」

 

 俺はトリガーに指をかける。


 『バァァァァンッ!!!』


 1発の激しい銃声、俺のラプアマグナム弾が1人の敵を殺した。


 『ドォォォンッ!!』

 

 1発


 『ダァァァンッッ!!』


 そしてもう1発。俺がトリガーを引くたびに1人ずつ命が飛んでいく。


 「ターゲットダウン、完了だ」


 『了解!!反撃返しだっっ!!』


 俺はライフルを抱えて壁にもたれかかった。


 今朝は少し小鳥の囀りがやかましいな・・・だが、それが心地いい。この音、匂い、緊張感が俺の心を平穏にさせる。


 ここは俺の戦場(いえ)、これは戦いに生きる、俺の物語。


 ・


 ・


 ・


 俺は誰か?俺の名はヴォイド ロドリゲス。アメリカ合衆国、テキサス州出身。そして今俺がいるこの家の名は俗にSEALDsと呼ばれる部隊。その中のチーム3に所属している。


 それで、気がつく奴は気がつくだろう、俺は今1人でここにいる。本来いるべきバディがここにはいないのだ。まぁその理由はすぐに分かる。


 「よっ!!」


 「何処に行っていた?」


 軽いノリで階段を登って来たこの男が観測主だ。


 「ちょいと花摘みにね。にしても、もう噂が飛んできてるぜ?全弾敵の頭に命中させたんだって?さっすがだなぁ、いや〜にしても助かる!」


 こう言う事だ。つまり、俺の今のこの観測主はいるだけのサボりだ。そして、別に俺自身バディは必要無い。右目でターゲットを、左目で周囲を見渡す。


 「別にこれくらいの距離と風ならば問題はない、お前でもやれる筈だ。ターゲットもあたふたして動かなかったからな」


 「いや、1キロ越えをばんばか当てれるのはお前くらいしかいねーよ。特にラプアマグナム弾なんて肩は痛いし、砂粒やら葉っぱに当たっただけでもすぐ機動ズレるしよ。あ、それよりこれ食うか?キャンプからパクって来た」


 「お前・・・キャンプにまで戻ってたのか?」


 多少サボるのは分かってたが、ここまであからさまにサボる奴初めて見たぞ?


 「うん、疲れてたもん。てかそれよりよ!キャンプにすんげー美人がいたのよ!ビシッとしたスーツ越しでも分かるボディライン!あれは上玉なんてもんじゃねーな、最早芸術」


 スーツ?そんな奴がこんな紛争地域で何をしてる?国連か?


 「そうか、残念だが興味がない。口説きたいなら行ってきたらどうだ?」


 「あ、違う違う。そうじゃねーのよ、その美人があんたを探してたんだ」


 「俺を?」


 「うん、俺の見る限りじゃ、ありゃ引き抜きに来たんだろうぜ。ヴォイドあんた、あと2週間で帰るんだろ?何としてでもあんたを手に入れたい連中がいるんだろうぜ。グリーンベレーの教官か、デルタフォースか・・・あ、もしかしたらあの美貌ならシークレットサービスかもな!」


 何処だろうが知った事ではないな。俺は戦場があればそれで良い。そこに俺の意味はある。


 「はぁ、面倒だな。とりあえず作戦は完了したようだ。一旦帰還するとしよう。どのみち合図が来るだろうしな」


 気がつけば銃声たちの音は遥か遠くでしか聞こえなくなっていた。


 『制圧完了!ありがとうヴォイド、恩に着る!』


 「どーも、それよりもキャンプで俺を探してる奴がいると聞いた。一度帰還する」


 『了解だ』


 俺たちはキャンプへと戻ることにした。




 

 キャンプ地


 「おい見ろよ英雄様の登場だ」

 「今日も一気に6人殺ったんだって?」


 色んな声が聞こえて来る。俺への憧れなのか、嫉妬なのか。それとも畏怖なのか。色んな声がある。そのせいかな、俺はここがあまり好きではない。


 俺は名声の為に戦ってるつもりもなければ、これと言った正義感も持ち合わせてはいない。戦場こそが俺の家だからここにいるだけだ。誰の為でも、自分の為でも、生の実感の為でもない。ただ戦っていたい、それが俺だ。


 「あなたが、ヴォイド ロドリゲスさんですね」


 背後から声がかけられた。艶のある声だ。そしめこの口調は、なるほど。エージェントの類か。


 俺は振り返る。そして立っている女の姿は、スタイルが際立つスーツ、ウェーブのかかったプラチナブロンド、成る程、こいつが話に聞いていた女か、男の味を多く知っている感じな見た目だ。


 だが、国籍が分からんな。ロシアに近い顔立ちではあるが・・・


 「ふっ、さしずめ砂漠に咲いた薔薇のような美しさだ。はるばる、こんなむさ苦しいキャンプへようこそ。俺がヴォイド ロドリゲスだ」


 俺は懇切丁寧に返事した。


 「あら、意外にお世辞が上手いのね。私はウラジーミル リザヴェノフ、リザで構いません」


 「なら、お世辞はこの辺で・・・俺に用があると言う事だが?」


 リザは標準を変える事なく淡々と話し始めた。


 「私は国連から来た者でして、世界最強と名高いあなたにお願いしたい事があって来たの」


 やはり国連か・・・


 「お願い?」


 「そ、お願い。あなたはあと2週間足らずで国に帰るのでしょ?そうしたらあなたは、生きる目的をきっと失う。あなたにとってここが我が家のようなもの。だからこその提案、戦って欲しい人がいるの。期間は問わないわ。ただし任務の開始は今日からって条件はつくけどね」


 正直、この提案は予想外だった。国連と言うからには誰かの護衛の類だろうと考えていた。


 正直護衛は嫌いだ・・・特に女の護衛は。


 だからこそ、戦って欲しいと言う条件はかなりの好条件だ。


 「承知した」

 「は?」


 隣にいた俺のバディがすっとぼけ声を上げた。


 「そ、即答?」


 続いてリザも少々驚いた声を上げた。


 「あぁ、どの道帰ってもする事はない。ならばそのまま別の戦場に向かうだけだ。それに、上には既に話は通してあるんだろ?ならば俺の答えはイエスだ」


 「確かに、予め上には知らせてあったけど、本人次第って感じだったし、何ならあなたを抜く損失で渋ってる感じだったから。意外・・・」


 「って事はよ?ヴォイドがオッケー出したって事は、俺たち今日からヴォイド抜きで作戦遂行?てなると?俺、あいつの観測主やんのか?やだー!!俺あいつ苦手なんだよー!!」


 サボってたツケが回って来ただけだ、仕事しろ。


 「こいつは放っておいて、作戦開始は今日からなんだろ?場所は?アフガンか?」


 「それは現場についてのお楽しみ。そう遠くないわ、今日中に辿り着ける場所だもの」


 今日中に行けるここ以外の紛争地域?何処だ?


 「それより、コールマンさん」


 「あ、俺?」


 そう言えばそんな名前か、デイビット コールマン、観測主の名前だ。


 「あなたのバディ、急に連れ出しちゃってごめんなさいね?これは、ほんのお詫びの印よ」


 リザは軽くデイビットの頬にキスをした。


 「は、はわわ!?」


 「うふ、可愛い反応・・・私あなたみたいな人好きよ?また会いましょ?今度は、今日の続きをね」


 「はっ!!一所懸命頑張ります!!」


 おぉ、デイビットがこれまで見た事ない程綺麗な敬礼をリザヴェノフにした。


 俺たちはこの戦場に別れを告げた。






 「リザ、持ち上げすぎじゃないのか?」


 「そう?私は彼、結構行けると思うけど。それよりも、ここよ」


 リザは何もない路地で立ち止まった。


 「ここだと?」


 嫌な予感がする。そもそもこの女、初めて見た時から異様な雰囲気があった。俺は念の為すぐに銃を取り出せるように構えた。


 「ここが戦場の入り口、ごめんね。さっき私一つ嘘をついたの。私は確かに国連の人間。けど、正規の人間じゃない。言わば裏側、私たちの研究はここではない世界、いわゆる異世界の研究をしているの。


 その世界でちょっと一悶着ありそうでね。下手をしたら世界全てを巻き込む第三次大戦なんて事になりかねない。そこでそれを阻止する為にあなたの力が必要になったわけ」


 ・・・突拍子も無いな。普通に聞けばあり得ない上に嘘くさい。とは言っても、こいつが嘘を言っているようには見えない。


 「あ、ごめんなさい。いきなり話がぶっ飛び過ぎたかしら?」


 そしてそれは本人も自覚している。なるほど、世界には俺にも分からん事が多くあると言うことか。


 「いや、少々驚きはしたが、だからと言って戦争の犬が何言っても変わる事はない。俺は戦えればそれで良い、そこが異世界だろうが、天国だろうが地獄だろうが関係ない」


 「ふふ、流石ね。特にあの異世界は今の常識が通用しないから、あなたくらいじゃないとやっぱりダメみたいね・・・さぁ、なら早速行きましょうか」


 リザは突然俺の体に腕を回して抱きついた。


 「これは?」


 「いきなりごめんなさいね。今の技術だと転送範囲が狭くってこれくらいくっついて無いとまだダメなのよ。後、一つ忠告しておくとこの直接転移は最初、気絶するくらいの激痛を伴うから注意してね」


 転送?瞬間移動のようなものか?いや、それよりも今気になるのはリザのこのパワーは何だ?俺の身体が微動だに出来ん・・・


 「座標固定完了、じゃ、お願い」


 次の瞬間、目の前が真っ白になり、直後に激しい轟音が鳴り響いた。


 「ぐっっ!!!!!」


 これは、全身から血が吹き出している・・・あの女、これを耐えろと言うのか?通常ならば死ぬな・・・


 「うおおっ!!!」


 意識を逸らすな、耐え抜く事だけを考えろ・・・全意識をただ生存と言う概念にだけ絞れ・・・


 




 『ドサッ!!!』


 「はぁ・・・はぁ・・・」


 どうやら終わったらしい・・・俺はかろうじて意識を保ったが、流石に地面に片膝をつかざるを得なかった。


 「う、嘘・・・気絶しなかったの?」


 リザは俺を見下ろしている。あいつ、無傷なのか?


 「まぁな・・・だが、流石に手当が必要だ・・・」


 「その必要はないわ、あなたならそろそろ治るんじゃないかしら?」


 「何?」


 傷がない・・・いや、それ以外にもさっきまで意識が朦朧としていたのに、はっきりして来る。そして身体中を駆け巡った激痛が消えた。


 「どう?凄いでしょ?これが異世界の力よ・・・因みにここの公用語は日本語、ここではアダムス語なんて呼ばれ方もしてるわね」


 リザは突然日本語で会話を始めた、俺も日本語は話せる。難しいから嫌いなんだがな・・・


 「にしても凄いとしか言いようが無いな、この高速治癒、どう言う原理だ?」


 そして俺も日本語で返す。


 「うん、これくらい流暢なら問題ないわね・・・この高速治癒を私たちはメインで研究してるって訳、原理については追々。あ、そうそう、この世界にはもう一つ力があってね?」


 この気配はっ!!リザは振り向きざまに何かを俺に発射した。俺はそれを躱して一気に近づき首元にナイフを突きつけた。


 「何の真似だ?」


 「さっすが、ごめんなさいね。疑ってる訳じゃ無いけど、少し試させてもらったわ。それより、見せたかったのは私が今何をしたのか、後ろ見て」


 殺気は消えた、俺は後ろを振り返る。そこには大木に何かが貫いたような穴が空いていた。


 「この抉られかた、水?」


 「そ、これがこの世界特有の能力、魔法よ」


 リザは手元に水を纏って見せた。これは、マジックなんかの違いじゃない・・・本当にリザの手元から水が現れ、そこに留まっている。


 俺はナイフを下ろした。


 「この魔法ならあなたにも使える筈よ?とりあえずやってみる?」


 いきなりか・・・とりあえず何か、手元に集中すれば良いのか?


 『ボボッ・・・』


 手元が少しむず痒い・・・


 「炎?いや、ちょっと待ってこれ」


 俺の手元がメラメラと青緑色の炎のような形に燃え上がった。


 「これが、魔法なのか?」


 「えぇ、けどこの炎の魔法、どう言う事?冷たい・・・」


 俺はとりあえずやってみただけだ。疑問系の顔されても困るんだが・・・


 「まさか、複合魔法?そしてそれは、冷気の炎・・・どう言う事なの?覚醒してないのに・・・まさか、気絶しなかったから、その強烈か意志が覚醒を?」


 「何をさっきから言っているんだ?」


 「簡単に言えばもっと驚かそうと思ってたのに、逆に驚かされたって事。普通魔法を二つ以上組み合わせた使い方は最初出来ないものなのよ。それをあなたはやってみせた・・・惚れちゃうかも」


 リザは含み笑いを俺に見せた。


 「褒めても何も出ないぞ?」


 「何も要らないわ、寧ろ何かあげたいくらいよ。これならよりスムーズに任務を与えられるわね。改めて、よろしくねヴォイド、私はリザヴェノフ。私たちの異世界へようこそ」


 リザは手を差し出した。


 「あぁ」


 そして俺も手を出し、リザと握手を交わした。

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