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プロローグ
すべての書かれたもののなかで、わたしは血で書かれたものだけを愛する。血で書け。ならばわかるだろう、血が精神であることを
フリードリヒ・ニーチェ.「ツァラトゥストラかく語りき」より
文岡公威はインターネット上に小説を公開するアマチュア作家だ。
今もパソコンのキーボード打ち鳴らし、執筆に没頭している。
何かに取り憑かれたように書き殴る。
その文章は、公威の鍛えられた肉体と猛禽類を連想される鋭い目つきと同様に、力強く鋭敏だ。
背後の本棚には、創作のための資料——科学や歴史・宗教・哲学・社会学などの本がびっしと埋め尽くされている。
公威の手が止まった。
執筆していた作品が完成した。
タイトルは「自由の戦士」。
公威は読者に一切媚びない。
公威にとって、創作はある種の反逆行為だ。
公威にとって、創作はテロだ。