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思い通りになんてなってあげない

「さて、それで。私には王家からユーグレン王太子の婚約者となるよう打診がありました」


 会場内がどよめく。

 王家からリースト家に王族との婚約の打診があることは、一族の歴史を見てもとても珍しいことだ。


 時折、恋人同士になる者たちは出ても、最後まで想いを遂げたケースはない。


「お受けするのですか。オデット様」


 一族の婦人が恐る恐る問いかけてきた。

 まさか、とオデットは笑って否定した。


「今の私には、王太子と結婚するより、目的不在の一族を導くことのほうが重要で魅力的だわ」


 王太子の釣書を送ってきた女王陛下を思い出す。

 ああいう強い印象の策略家がリースト家の者は好きだ。もちろんオデットも。

 けれど、相手の思惑に乗ってしまうのも面白くない。

 そう簡単に思い通りになってはやらないぞと、抵抗感が出る。


「今後、王家との距離の取り方も調整しないとね」


 伯爵家から侯爵家となったリースト家。

 今後は何かと貴族社会での存在感も増す。

 万年伯爵家だったこれまでとは違った立ち居振る舞いが求められることだろう。




 それから、ルシウスは王都の本邸で残務整理を行いながら、ヨシュアがカーナ王国から持ち帰った資料を眺めては何やら考え込む日々を送っている。

 彼もまた自分自身の新たな生き方を模索するべきなのだ。


 オデットは正式に王家からの婚約の打診に、正式に断りを入れた。

 難色を示されたが、親友のグリンダが王家の親戚である彼女の家から口添えしてくれたことで、後を引くほどゴネられなかったのは幸いだ。

 もっとも、仮にしつこく食い下がられたとしても、オデットは己の境遇を理由に簡単に断ることが可能なことを知っていた。


「だって私、百年前の女だもの。それに、百年も魔法樹脂の中にいたのよ? 何か異常があるかもしれない。そんな危険人物を王家に迎え入れるおつもりですか? って言えばそれでおしまい」


 サロンでルシウスとお茶を飲みながら、オデットは笑った。


「お前が馬鹿正直に『王太子殿下には魅力を感じないからお断りします』などと返さなくて安心したよ」

「あら、それなら『私より弱い男みたいだからお断りします』とお返事するわよ」


 アケロニア王族は魔力値は高いものの、戦士としての戦闘力はさほどでもない。

 基本は守られるべき王族だから、護身術や身を守るための術の扱いには長けているが、あのユーグレン王太子も実践力は並の騎士程度だろう。

 魔法剣士のオデットと対戦したら、まず敵わない。


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