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オデット、復学する


 魔法樹脂から解凍されたオデットは、それから医師による精密検査を受けたが、心身にも魔力にも何の問題もなかった。

 傷ついていた身体の傷も、魔法薬のポーションを飲んだら難なく癒えた。


 まだオデットは花の16歳。

 百年前、学園からの帰り道に誘拐されるまでは、王都の王立高等学園、1年の生徒だった。

 聞けば、百年ぐらいでは一般教養以外の授業内容に大した変わりがないそうだ。


 変わったのは、学園が貴族たちだけの貴族学園から、平民層の学生も受け入れるようになったことだという。

 しかしオデットは人間を生まれで差別するような教えを受けていないので、そこは特に気にするところではなかった。


 一週間ほど自分の実家であった本家の王都にあるタウンハウスで休んだ後、そのまま学園生に復帰した。

 ちょうど一月、冬休み明けにそのまま復学したことになる。

 数ヶ月分の授業のブランクはあったが、元々が伯爵家の令嬢で、必要な教育は学園に入学する前に受けている。

 このまま問題なく残り数ヶ月の1年生の生活を過ごして、2年生に進級していけることだろう。




 学園の高等部の制服は、男女ともにビリジアングリーンのブレザー、女子は白いブラウスと学年色の赤色のリボンを胸元に。

 スカートはグレーのチェック柄でプリーツが入っている。膝下なら長さは問われない。

 オデットは歩きやすいよう膝小僧が隠れるぐらいの長さだ。


「オデット嬢! まさかまたあなたに会えるなんて!」

「まあ、エルフィン先生。先生もお変わりなくいらして」


 登校初日、自分の教室に行く前に、学長室を訪ねた。

 学園長のエルフィンはエルフの血を引く、白い髪に白い肌、ネオングリーンに輝く瞳を持つ麗人だ。白のラインの入った墨色の軍服に、自分の瞳と同じ色の装飾を着けている。

 れっきとした男性だが性別を超越した中性的な美しさを持つ人物で、人間との間に生まれたハーフエルフだからか、尖った耳はない。

 しかしハーフエルフでも、寿命は人間よりずっと長い。彼は現状、百年前のオデット本人を知る唯一の人物だった。


「連絡を聞いたときはビックリしたわ。お帰りなさい。あんまり無茶しちゃ駄目よ。お淑やかにね、お淑やかに!」

「あら、淑女より淑女らしいエルフィン先生に言われてしまったわ」


 この学園長、随分昔に伴侶を亡くして以降、女避けに亡き妻の口調と女言葉を使うという変わり者だった。

 実際は全教科の指導資格を持ち、生徒思いのとても良い教師だ。

 オデットも誘拐される前は、入学からずっと彼の世話になっていた。


「大丈夫よ、先生。もう誰も私を知る者はいないのよ。心機一転、最初から学生デビューよ」


 とオデットは気楽に言ったのだが、認識が甘かったことにその後すぐ気づかされることになる。



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