百年振りの再会
オデットが魔法樹脂から解凍され、学園にも復学して2月もそろそろ半ば。
身の回りも落ち着いてきた頃、オデットは慕っていた王女殿下、当時の王姉グレイシアの墓参りを思い立った。
王族の墓は王宮の敷地内に廟がある。
兄の子孫で現リースト伯爵のヨシュアに相談すると、王家に許可を取ってくれて翌日には一緒に付き合ってくれることになった。
「驚いたわ。許可ってこんなに早く取れるものなの?」
「今の王家には伝手があってね」
王太子ユーグレンと学園生時代は同学年で、親しく付き合っていた。
その縁で、一日も早くと手紙を書いたら快く許可をくれたということらしい。
いざ、王宮に着いて廟までの道を案内され、庭園の中にある王族廟の建物を見たときから、少し危なかった。
だが、唇を噛み締めながらも建物の中に入り、王姉グレイシアの名前と没年が書かれた石碑を前にしたら、もう駄目だった。
「先輩。オデット、戻って参りました」
グレイシア・アケロニア
円環大陸共通暦727年 38歳没
石碑の前に屈み込み、持ってきていた花束を墓前に捧げた。
「38歳って。早死に過ぎです、気合いが足りなくないですか?」
学園でやんちゃするオデットをとっ捕まえてきた王女殿下が、重い拳骨を寄越してきた記憶はまだ新しい。
「先輩が魔術樹脂に残してくれたお声、全部聴きました。先輩、私のこと好き過ぎるでしょ。私も……」
自分の声が震えるのがわかった。
もうそこまでが限界だ。
石碑に刻まれた王女殿下の名前がぼやけていく。
銀の花咲く湖面の水色の瞳から、熱いものが次から次へと流れていく。
私も、あなたのことが大好きだった。