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自慢の髪を切られた


 それからまた学園に通い続けて、嫌がらせなどを積極的に誘発させたオデットだ。


 先日、中庭であれほど派手なパフォーマンスを起こしてやったというのに、羽虫はどこにでもわく。

 昼休み、昼食を終え学食から教室の自分の席に戻って適当に教科書を眺めていたとき、それは起こった。


 後から思えば油断しすぎていた。

 読んでいた教科書はこの国の歴史の教科書で、百年前、オデットが憧れていた王女殿下の大人っぽい絵姿の載ったページがあったから。

 つい、集中してしまっていたのだ。


「!」


 じゃき、とハサミで何か大量の物を切った音がした。

 オデットの自慢の青銀の長い髪が、床へと落ちて光の糸のように散らばっていく。

 切られたのは、かつてオデットが愛した王女殿下に「綺麗な髪だ」と口づけられた箇所だった。

 左サイドの髪を、肩の辺りからバッサリとやられた。


「あらあら、ごめんなさい。髪に何かゴミが付いているようだったから、取って差し上げたの。ちょっと切りすぎてしまったけど、許してくれるわよね?」


 その声は、先日中庭で己に噴水の水を浴びせ、オデットの制裁によって失禁した女生徒のものだった。

 ゆっくりと、オデットが立ち上がり、顔を上げる。

 そしておもむろに、ハサミを持っていた令嬢の頬を遠慮なく往復ビンタした。相手が鼻血を噴いても止めず叩いた。

 繰り返し、繰り返し。

 魔法剣を出す心の余裕もなかった。




「またあなたですか、リースト伯爵令嬢! おやめなさい! ……やめなさい!」


 騒ぎを聞きつけて、2年の教室から生徒会長グリンダが駆けつけてきて、なおも自分の髪を切った令嬢を叩き続けるオデットと彼女との間に入って止めてきた。


「生徒会長さん。あなた、ご自分のその自慢の巻き毛が私みたいにされても、そんな悠長なこと言っていられるの?」


 そう言って、オデットは床に落ちたハサミと、散らばる大量の自分の青銀の髪を見るよう指でさした。


「こ、これは……!」


 さすがの生徒会長グリンダも言葉を失った。もちろん公爵令嬢の彼女は、未婚の貴族令嬢にとって髪の美しさを保つことの重要さをよく知っている。


 そして恐る恐る自分の後ろで何とか立っている、顔が真っ赤に腫れて見るかげもない令嬢を見た。

 痛ましい顔になったのは、オデットと叩かれた令嬢、どちらに向けてのものだったか。


「これはわたくしの手には余ります。学長室へ行きますよ、ふたりとも」




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