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有馬家の三姉妹と一匹狼  作者: 佐々木雄太
第2章  変わりゆく心
9/48

 次の日の朝——

 翔也はいつも通りに起き、朝食を食べ、学校に登校し、教室で時間になるまで本を読んでいた。

 まだ、三つ子の姉妹たちは登校してきていない。

 そこへ、先程登校してきた達巳が翔也に話しかけてくる。

「翔也、おはよう」

「ああ……」

 翔也は、本を読んだまま返事をする。

 達巳は今日の翔也の様子に違和感を覚えた。

 いつも通りの翔也は、翔也、そのままであるのだが、何か少し歯車が合わない。

「ん? どうかしたか?」

 翔也は、何も話してこない達巳に言った。

「あ、うん…ちょっとな……」

「ふーん」

 達巳は誤魔化す。

(んー。やはり、俺が帰った後何かあったな…。昨日と何か違うんだよな…。一体何があったんだ?)

 すると、三つ子の三姉妹が教室へと入ってきた。

「翔君、おはよう!」

「ああ、おはよう」

 三咲が翔也に挨拶をすると、翔也は挨拶を返す。

(ん? あれ? 翔君? 三咲? 昨日まで、名前で呼び合っていたか? んー、何かあったな……)

 達巳は、二人の違和感に感づく。

「なぁ、翔也。お前、三咲ちゃんと仲良かったか?」

「ん? ああ、昔から仲良かっただろ?」

 翔也は平然と答える。

「お、おう……」

 達巳は、三咲の方をちらっと見る。

(んー、なんとなくおかしいんだよな。この二人……)

 三咲は、バックを机の横についてあるフックにかけ、席に座る。

 他の二人も三咲が翔也のことを名前予備したことに動揺していた。

(しょ、翔君って…三咲…)

(み、三咲? しょ、翔君?)

 二葉も、一花も、頭の中が空回りする。

(どうやら、他の二人も満更ではないようだな……)

 達巳は、はぁ、とため息を漏らす。

「………」

 翔也は、本を読んだまま黙っている。

 朝のチャイムが鳴り、全校生徒がそれぞれのクラスに入る。

 そして、今日も長い一日が始まる。


 昼休み——

 午前中の授業も終わり、全校生徒のほとんどが昼食を取る。

 翔也は、お弁当は持ってきておらず、学校の売店で弁当やパンを購入して、それを昼食として食べる。

 バックの中から財布を取り、立ち上がる。

「ねぇ、翔君。売店に行くの?」

 三咲が声を掛けてきた。

「ああ…」

「じゃあ、私も一緒に行こうかな?」

 三咲も学区から財布を取り出し、立ち上がる。

 そこへ、いつも通りに達巳が翔也の元へとやって来る。

「翔也、俺も行くわ。部活前に一個くらい食べておきたいからな」

 三人はそろって教室を出た。

 教室に残された一花と二葉は、その様子を見たまま黙っていた。

(な、な、なんで…。え? 三咲と翔也君って、そんなに仲良かった? でも、中学、高校でもまともに話した事ないですし、いきなり親密になるなんて……)

 一花は、バックから弁当を取り出して、まだ、食べずにいる。

(………)

 二葉は、ただただ、死んだ魚のように動かずにいる。

 三咲と翔也、二人の間に何があったのか。二人は知らずに過ごしている。


「それにしてもお前ら、いつの間に名前で呼び合うようになったんだ? 昨日まで仲良さげじゃなさそうだったから…。翔也、俺が帰った後、何かあっただろ? 俺の勘は、意外と当たるんだからな」

「達巳、お前には関係ない。どうだっていいだろ?」

「ねぇ、翔君。北村君と何かあったの?」

 三咲が二人の隣を歩きながら、不思議そうに訊いた。

「ん? まぁーな。三咲には関係ない。こっちの話だ。こいつが余計なことしないように釘を刺しているだけ」

「あー、そういう事」

 三咲はうなずいて納得する。

「あの、お二人さん。二人だけの世界に入らないでもらえます?」

 達巳は苦笑いする。

「でも、本当に何があったら仲直りするんだ?」

「はぁ? 仲直りって、そもそも俺たち喧嘩なんてしていないだろ?」

 翔也は三咲の方を見る。

「うん。喧嘩なんてしたことないね。むしろ、ただの自然消滅みたいな感じ」

「そうだな」

 二人とも意見がそろう。

「まぁ、いいか…。何があったのかはこれ以上訊かない。なーんか、面倒だからな……」

「そうしてくれ」

 三人は一階に降り、渡り廊下を歩き、売店の方へと向かう。

 学年問わず、売店には、主にパンを購入しに来ていた生徒でいっぱいになっていた。

「これは…先に予約しておかないと面倒ね……」

 三咲は、呆れていた。

「でも、予約しておいておけば面倒はない」

 翔也は、売店の扉を開け、中へ入る。

「おばちゃん。予約しておいたパン、ある?」

「ああ、あるよ。そこに置いてあるからお金は五百円ね」

「ありがとう。ついでにプリンも買うわ」

 翔也は、透明の冷蔵庫からプリンを一つ取り出し、袋に入れる。

 お金はプリン代も入れ、合計六二〇円を支払う。

 すると、隣にいた三咲もプリンを持って、一緒に支払いをする。

「おばちゃん。私も置いておくね」

「はい。ありがとう」

 二人は売店を出た。

「あれ? 今思ったんだけど…北村君は?」

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