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有馬家の三姉妹と一匹狼  作者: 佐々木雄太
第1章  春来て、噂の三姉妹
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 二人の目の前には、四台ほどの個室の部屋が設置されている。

「これって、まさか……」

「そのまさかよ。プリクラに決まっているじゃない」

 翔也はそれを聞いて、逃げようとした。

 だが、三咲は逃げようとする翔也をがっちりと腕を組み、プリクラの部屋へと連れていく。

「おいっ! プリクラだけはっ‼」

「いいじゃない! 付き合ってくれるんでしょ‼」

 二人は部屋へと入ると、奥の方に翔也を置き、逃げられないようにした三咲は百円玉を五枚入れる。

「ほーら、正面を見る。正面…」

 三咲は、翔也の左腕を組んだまま、笑顔でいる。翔也は顔を赤くしたまま、そっぽむく。

 パシャ‼

 一枚の写真が表示される。

「んー!」

 ジロッ、と三咲は翔也を睨みつける。

「なれないんだよ。こういうのは……」

 翔也はため息をつく。

「それじゃあ……。もう一回するから前を向いて」

「………」

「お願い」

 三咲は真剣な目で、翔也の方を見る。

「はぁ…分かったよ…。変な顔をしても知らないからな…」

 翔也は緊張しながら前を向く。

 それを見た三咲は、何か思いついたかのように、パッ、と明るくなり、ニヤリ、と笑みを浮かべる。

「よし! 次行くよ! 翔君‼」

「お、おう……」

 二人は機械の指示を待ち、写真を撮られるのを待つ。

 そして、カウンタダウンが始まる。

 三咲は、ドキドキしながら、一秒前になると、行動に移す。

 翔也の肩に腕を回し、顔を翔也の顔、ギリギリまで近づけた。

 二枚目の写真が撮られる。

「お、お前っ!」

 翔也は写真を撮られた後、顔を赤くして、三咲と目が合う。

(こいつ、顔を近づけやがって…やべぇ…胸が苦しい…)

 ドキドキが止まらない。

(んー。やっぱ、キ、キスくらいはしておくべきだったかな? で、でも…そこまでの勇気なんてないし……)

 三咲は、顔を赤くして少し後悔していた。

「ほ、ほらっ、写真が出てくるし…出よっ!」

 三咲がそう言うと、二人は外に出る。

 写真がプリントアウトされて出てくる。

 三咲は、それを嬉しそうに取り出して手にする。

「ほら、翔君、見て!」

 写真を翔也に見せる。

「くっ……」

 それを見た翔也は、言葉が出てこない。

 こんなにも恥ずかしい写真は、捨ててしまいたい気分だ。

 でも、こんなに喜んでいる三咲を見ると、本当にこれでよかったと思える。

「後で、翔君にも分けてあげるね」

「あ、ああ……」

 翔也は、あまりうれしそうではないが、とりあえず返事をする。

「次は何をするんだ?」

「うーん…。それじゃあ……」

 三咲は、近くにある大きなユーフォ—キャッチャー内にある抱きかかえるほどのイルカのぬいぐるみの方を指さす。

「ん? あれか?」

「うん。そう」

 二人はその場所へと歩いていく。

 イルカのぬいぐるみは、落ち口から結構近いところに設置されている。

 三咲は試しに百円玉を入れてやってみる。

 レバーを操作し、丁度いいところでボタンを押す。

「どう⁉」

 アームがぬいぐるみに引っ掛かり、機械がそれを持ち上げる。

 だが、途中ですぐに落ちてしまう。

「あー!」

 三咲は叫び、がっくり来る。

(これはアームを弱めに設定しているな。これだと、確率が来ない限り取れない設定になっている……)

 翔也は、すぐさま分析する。

 そして、落ち込む三咲を見て、財布から百円玉を三枚取り出す。

「知っているか、三咲。これには二つの攻略方法がある」

「え?」

 翔也はとりあえず、百円玉を一枚入れる。

「こんな言葉がある。ユーフォ—キャッチャーは、ある意味、貯金箱である」

「何それ…。誰の名言?」

 三咲は首を傾げる。

 翔也はレバーを動かしたまま、話し続ける。

「まぁ、どこの誰か、知らないが、本当に貯金箱と思わないか? 取れなければ、百円玉は貯まっていく。『塵も積もれば山となる』だな…」

 ボタンを押し、アームを頭よりも胴体の位置に持ってくる。

「んー。確かに…言われてみれば…あっ…」

 イルカのぬいぐるみは、再び持ち上がるが、滑り落ちる。

「でも、方法を知っている人間は大量にとっていき、店側は損だな…」

 翔也は再び、百円玉を一枚追加する。

 先程、落ちた影響で、尻尾の部分についてあるタグに、アームを微調節してボタンを押す。

 アームはタグに引っ掛かり、微妙な態勢で持ち上がる。

 そして、落ち口に落ちた。

「あっ‼」

 三咲は驚いた。

 翔也は、たった二百円でイルカのぬいぐるみを手に入れた。

「ほらよ…」

 三咲にイルカのぬいぐるみを渡す。

「ありがとう…」

 三咲はイルカのぬいぐるみを受け取り、大事そうに抱きかかえる。

 翔也はスマホを取り出し、時間を確認する。

 時刻は三時半。

 帰るには丁度いい時間帯だ。

「三咲。俺は本屋によって帰るけど、どうする?」

「送って……」

「はぁ?」

「だって、帰りのバス、まだ、先なんだもん。どうせ、自転車できているんでしょ? だったら、家まで送ってよ! ほら、家が隣同士なんだし…」

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