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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

TSした世界で神を落として堕とすって正気なんですか

作者: 佐藤サイトウ

多分4部分で終わる

01




ピピピピ!!ピピピピ!!ピピピピ!!!ピピピピピピピピ!!!!!!


「うるせえええええ!黙れえええええええええ!!僕の眠りを妨げるんじゃねぇデジタル製品風情が!!」


朝。低血圧な彼女はいつものように目覚める。投げ飛ばしたスマートフォンに叫ぶその姿はなんとも滑稽で、思わず目の前の鏡に映る自分の滑稽さに失笑してしまう。


「こんなんじゃ僕の理想とする真人の頂への到達ははるか遠いぜ、まったく」


誰もいない小さな部屋に木霊する呟きを聞いて、ベッドから跳ねるように飛び出す。

朝は極力動作を激しくして寝起きの脳を覚醒させると決めている。中途半端に起きてしまうと二度寝の誘惑に負けて学校に遅刻してしまうからだ。残念ながらこれは僕の経験だ。


洗面所に向かって、両腕に水をためる。この時間が僕は慌ただしい朝の中で一番好きだ。

朝日に照らされながら落ちていく水。これはどんなに素晴らしい自然の景色にも勝る。


「ぷはぁ!ッぱ朝はこれしねぇと始まんねぇよなぁ」


ひとしきり脳が覚醒していくのを全身で感じた後、少女は歯ブラシを掴み流れている水につける。

ふと鏡を見ると、そこにはいつも通り目の下にクマをつけた不健康そうな銀髪で金色の瞳の少女がいた。

寝起きだと言うのによく整っているショートカットの銀色の髪に、千年に一度程度の割合でしか生まれそうにない顔をした美少女。

目元のクマがむしろチャームポイントに見えてしまう程の美貌に、口元のホクロが良く映える。



いやぁ、相変わらず僕は美しいなあー




「いや、誰だお前」


全く見覚えのない鏡に映る銀髪に琥珀色の瞳をした美少女に思わず突っ込んでしまう。


「あ。え。その。ど、どうも」


一礼する。何事も挨拶は大切だからな。基本だ基本。

鏡に映る美少女もこちらにむかって引きつった笑顔で会釈を返す。


「って、やっぱこれ僕じゃん!??え、なに、ホワッツ!?マジで言ってる!!??」


いやまだだ、待て待て。まだだ、まだ何かヤベーテレビ番組の撮影という可能性もなくはない。高校生男子を眠ってる間に超絶美少女にメイクアップしてみました☆みたいな。本来なら「そんな人権を完璧に無視したクソ番組あってたまるか!!」と言いたいところだが、しかし今の所それ以外にまともな理由が思いつかない。いや、テレビ番組説もまともとは言えないけどさ。


その時彼女の脳裏に現状を把握する革新的な方法のアイデアが走る


「は、そうだ!!アレが!!アレさえアレば!!僕の僕を確かめるんだ!僕!!」


慌てて、自身の下腹部を確認しようとするがそこで異変に気づく。

僕の胴から生えた謎の突起物によって下を見ようとする視線が遮られる。

同時に、本来どっしりと構えているはずの僕がどこかに旅に出てしまっている事を理解する。HAHAHA、まったくブラザーったら僕を置いてどこに行くってんだよ


「俺たち一生一緒のソウルメイトだろう!!置いていかないでくれええええええええええええええええええ!!!!!!!俺を一人にしないでくれ!!!!!!!!!!」


さらば、我が友、我が兄弟、我が魂よ。



◆◆◆◆



生涯の友を失った喪失感を感じながら、状況を整理し始める。


「僕、女の子になっちゃったってことなのかな?????ナンデ???どうして???展開に脈絡が一ミリも感じられないよ???作者出てこい話があるぞ!!!」


嫌です。


「く、この世界の不条を説いても仕方がねぇ‥。今は、これからどう行動するかを考えねばッッッ!!!」


そう、彼、もとい彼女、上下晴夏は現在17歳。外見だけで言ってしまうと花の高校生真っ最中なのである。

そう、真っ最中なのである。そして今日は平日、いつも通りに学校がある。


「あるんだよ!!学校!!!どうすんねんこれ!!!」


仮にこの姿で登校しようものなら、不審者扱いされてしまうだろう。学校に現れた謎の美少女と言えば聞こえはいいが、要するになぜか学校に不法侵入してくる謎の女なのである。

いくら美少女と言えど、流石に怖い。


「はっ!!!」


唐突に気がついた。そもそも服、セーラー服なんて家にはない。実家には妹がいるが、しかし現在僕は一人暮らし中、女性用の学生服を所持しているわけがない、というか男子高校生が私的なセーラー服を所持していたら色々まずいだろう。



などと冷静さを欠き、わけのわからない思考を重ねる晴夏の耳に

ピンポーン

と気の抜けるチャイム音が入る。時計を見ると現在時刻は7時ちょうど。

こんな早朝に僕なんぞを訪ねてくれる人間なんて一人しか心当たりがない。隣の部屋に住む女の子、佐藤優璃ちゃんだ。毎朝、朝に弱い僕を起こしに来て朝ご飯とお弁当を作ってくれる、僕の第二の母、聖母と言っても過言ではない女の子だ。ただ難点があるとすれば、無感情なことと、僕を男扱いしないことだ。多分手のかかる弟かなにかだと思ってる。


違う!そうじゃない!今のこの姿を見られるわけには行かない!


「あ、あのゆーりちゃん!ちょっと今僕着替えてるから開けないでもらっていいかな!」


扉を撚る音がする。

ダメだ、まるで聞いちゃいねぇ。

以前ゆーりちゃんに合鍵を渡してしまったせいで、彼女を止める方法を喪失してしまった。


音を立てて玄関が開きはじめる。

どうしよう。










◆◆◆◆








「天気、いいですね晴夏ちゃん。そうだ、今日の放課後にお茶しませんか?もちろん、代金は私がもつので安心してください。この間のお礼です」

「あっは、、ははは、、、そう、、、だね」

「おや、嫌なら嫌とはっきり言ってくださって構いませんよ?どうぞ、お気遣いなく」

「いや、嫌ではないんだけどね。強いて言うなら、嫌なのはこの世界かな‥」

「?それは大変ですね。なにかお手伝いできることはありますか?」

「ない、かな。ごめんね。また、その、多分頼る時が来るから、その時にお願いしてもいい?」

「わかりました。気兼ねなく、お声がけください。いつでもお力添えします」

「ははは‥ありがとう‥。はははっ、、、、、」


なれないスカートに動揺しつつ、状況を整理する。どうやら、変わったのは僕だけじゃなくこの世界の人間全てらしい。ゆーりちゃんから朝の顔の女性タレントまで、すべてがイケメンになっていた。そして、その逆もまた然りだ。

朝タンスを開いてみると、見慣れない女性用の服が一面に広がっていた。どうやら最初から女だったことにされているようだ。


「世界、、、どうしちゃったの、、、、、」


女性の下着やセーラー服の着方がまるでわからず戸惑っていたら、ゆーりちゃんがいきなり服をすべて脱がせて、一から全部僕に着せた。その時は、あまりにも気が動転して、一周回って思考が止まってしまった。恥ずかしがればいいのか、それとも着せてくれてありがとうと言うべきか。


しかし、一番に僕を驚かせた出来事は、自身の全裸を人に見られたことではなく、彼女の見た目についてである。

小さくて可愛らしくて、それでいてしっかりしていて格好いいゆーりちゃんが、その男らしさと格好良さを残したまま高身長イケメンに変身していた。


「これひょっとして、僕がおかしいのかなぁ」


果たしておかしいのは己なのか、それともこの世界なのか。そんな意味のない思考を重ねる。



◆◆◆◆



予想通り、学校の人間もすべて性別が逆転していた。

僕が通う、私立三瀬蛾那第三高校の、すべての人間が反転していた。

僕は友達と言える人間が一人もいないので、教室の端で一人で静かに一日中震えていた。周囲の様子から察するに、どうやら僕以外にこの事態に気がついている人間はいないようだ。

そして何より驚いたのが周囲の男子、つまり元女子の視線が、僕に向かって集まっているということだ。怖い。果てしなく怖い。隣の席のゆーりちゃん(巨大)が皆の視線を遮ってくれなければ僕は周囲の視線に潰されて死んでしまうところだった。理由は、なんとなくだが察しがつく。

それは


「僕だけ異常に可愛いんだけど‥」


自惚れでもなんでもなんでもなく、これはただの事実だ。周囲の人間はかすかに面影を残して性転換しているが、僕だけ面影の一つもなく、全く違う人間になっている。てかそもそもなんで銀髪なんだよ。ここ日本だぞ?明らかに僕だけ見た目バグってるだろ。


「はぁ。起きてしまったことについて語ってもどうしようもないか‥」


そうだ、切り替えが大事だ。失敗は成功で塗りつぶせる。いつまでも過ちには囚われない。


「いやこれ僕の過ちじゃねぇし!!無理無理無理切り替えられないってぇ〜。あーどーしよーーーーーあーーーーー」


昼休み、周囲の視線が陰キャにはあまりにも精神的にキツイため、人のいない場所を模索した結果屋上にたどり着いた。たった数分の移動中に、何人かの見知らぬ男子がいきなりハート型のシールで封をした手紙を渡そうと迫ってきたがなんとか巻くことに成功した。


「すまんなー中身男なんだ‥。はぁ、女子に言い寄られる分にはウェルカムなんだけど、男子はなぁ、、、。感性までは女の子になってないんだよなぁ、、、。あ、元女子だから一応女の子ではあるのか。喧しいわ」


見た目も女の子になってから出直してきてくれ。

心のなかでそう呟いて、改めて自身の体を観察する。STR16は優に超える顔に、透き通るような銀色の髪。出るところは出てるけどスラッとした体に、どこか儚さを感じさせる透き通るような声。

紛れもなく漫画やアニメの中でしか出てこない完璧な美少女。適当にそこらを歩くだけで、アイドル事務所にスカウトされて、ナンバーワンアイドルを目指すドラマが発生しそうである。


「望んじゃいねぇんだよなぁ。神様さぁ、もっとマシなやつにくれてやれよ、この体。僕にはもったいなさすぎるぜーー」

「へー?じゃあその体貸してもらっていいかな?」

「いやいや、貸すって何に使うつもりなんよ」

「ん〜餌とか?」

「へー餌ねぇ。確かにこのビジュアルで色々釣れそうだけどさぁ、、、。って、ん!??」


振り返ると背後に小さな少年がいた。小学生と言われても言われてもなんの違和感も覚えないあどけない顔をしている。実際彼がうちの制服を着ていなければ小学生だと誤認してしまっただろう。

あまりの違和感の無さについ普通に会話をしてしまった。


「どうもどうも〜上下さん、はじめまして〜。お噂はよーーっく聞いてましたけど、ほんとに美しい容姿であらせられる〜。そこを見込んで、ブッ研部長として一つ頼み事があるのですが〜よろしいですか〜??」


物研?物理研究部の略称だろうか。反応を見るに、性転換云々については耳に入ってはいないようだ。


「え、あ、うん。ぼ、私にできる範囲の事だったら、、」

「本当ですか〜ではこれはあなたが実現可能なことなので了承してもらえたということですね〜」



「あの、、、」

「善は急げです〜早速行動に移ろうと思うので〜ついてきてくださ〜い」


少年は僕の腕を掴む。


不思議となぜかこの少年についていこうと思った。怪しさ満点だし、話聞かないやばい人だけど、今ついていかないと後に一生後悔するような、そんな気がしたからだ。


「‥‥‥‥‥‥これは見込み違いだったかな〜‥‥?」


小さな声で少年が何かを呟く


「あの、なにか言いました?」

「いえいえ〜なんでもないですよ〜気にしないでくださ〜い」


先程と変わらない笑顔だったが、その表情はどこか悲しそうに見えた気がした。

しかし、今の僕にその真意を確かめるすべはない。ただ流れるままに、進むだけだ。


◆◆◆◆


「はいはい〜皆様ちゅうも〜く。えー今回の協力者が決定いたしました〜総員拍手〜」


パチ、パチ、、、パチ、ととぎれとぎれに拍手が起こる。というのも、この教室には僕と彼しかおらず、その皆様と言うのは僕だけだからである。そもそも今は昼休みの途中、仮に部員が存在してもこの時間帯には誰もいないだろう。


「あの、そろそろ教えてほしいのですが、協力って具体的に何をするんですか?」

「うーん、餌?」

「餌??なんのですか?」

「神を釣るための、みたいな」

「神って、GOD?」

「そ〜それそれ、GOD」


なるほど。理解した。


「それじゃあ僕はここらへんで失礼させていただこうかな、後はお若い者同士で」


宗教の勧誘かなにかだったようだ。何がついていかないと後悔するだよ、バカバカしい。やはり自分の直感なんて信じるべきではない。

くるっと振り返り、ドアを開ける。開ける。開け、、


「まあまあ落ち着いて〜最後まで話は聞くべきだと思うなぁ〜」


鍵をクルクルと指で回しながら少年が続ける。


「簡単なことだよ、安心して〜。君にはね」


口元に鍵を当てる


「カミサマに惚れられてほしいんだ」


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