~解決編~
その日の夕方。日も暮れはじめて、空はオレンジ色に染まっていた。
自分はそんな空を屋上で見上げながら、ただ癒されていた。でもあの刑事の事が気がかりだった。あの昼間の笑顔を見たら、絶対に何かを掴んでいるようにしか思えない。この空も何かを暗示しているのか、そう思うとホッとできる状態じゃなかった。すると
「小泉さん」
声のする方向に振り向くと、そこには岡部の姿があった。やはり来たか、一体何の用だと少し怒りの表情になりながら
「なんですか今度は」
「少しお聞きしたいことがありまして」
その言葉は何度聞いたことだろうか。本当は今すぐにでも忙しいから戻ると言いたいところだが、ここは話を聞くべきだと思い
「分かりました。手短にお願いします」
「分かりました」
少し笑顔で言う岡部。少し背中が凍る感覚がしたが、気のせいだと思っていると岡部が
「あの。この写真を見てもらってもいいですか?」
そう言い写真を自分に見せてきた。その写真はどこからか遠くから撮影された写真で、一軒の家をズームして撮られている。自分は何の写真なのかさっぱり分からなかった。そのため
「これがなんですか。家みたいだけど」
すると岡部が笑顔になり
「実はこれ、ここで撮影した写真なんです」
「ここで?」
何の意味があってそれをしたのか意味が分からなかったが、その家と私とどんな関係があるのか、それも分からずにいると岡部が
「はい。他の隊員さんから貸して貰いました。実はその家、長野さんの家なんです」
「え?」
耳を疑った。確かに言われてみれば長野の家に似ている。でも自分は知らないと答えた。どうしたらいいのだろうと思っていると、岡部が
「おかしいですね。確かあなたは火災の現場がすぐに長野さんの家だと分かった。ということは、元々この家をご存じだったと言うことになります。しかしあなたはその写真を見ても気づかなかった」
少し不気味そうに言う岡部に、少し怒りを覚えながらも動揺が勝ってしまい、言い返すことが出来なくなってしまった。すると岡部が続けて
「では、ひとつお聞きします。あなたは長野さんのご自宅には行った事がありますか?」
単純な質問だったが、少し動揺しすぎてすぐには答えを出せなかった。しかし、何かを言わないと完全に疑われる。そう思い
「ありません。屋上から見るだけで、他の隊員の家には行った事がありません。それに、その写真だって、いきなり長野くんの家のズーム写真見せられたって、分かるわけないじゃない。こんなに家があるのよ。覚えられないわ」
「でも長野さんの家は覚えられていた」
そう言い返されたため、少し強気になり
「長野くんは立派な隊員ですから。すぐに覚えられます」
すると岡部がどこかに電話を掛ける。そして話が終わったのか電話を切り、自分を見つめ初めて
「少しお時間ありますか?」
「え?」
「ついて来てもらいたい場所があるので」
本当は山ずみの書類を片付けなければいけないと思っていた矢先だったが、この刑事の言うことにはとりあえず従おうと思い、了承の返事をした。
岡部に連れてこられた先は、長野の家だった。この現場に来るのは4回目だ。1回目は殺害に関しての下見、2回目は計画実行の際、3回目は消火の時だ。本当なら3回目で終わりのはずだが、まさかこの刑事に連れられて、ここに来るとは。何故だか悔しい気持ちだった。入るかと思いきや二人は、広い庭に来た。そこには沢田をはじめとした隊員らが何やら、台に置かれたミニチュアを囲むようにして、立っていた。自分はつい
「あなた達、何してるの?」
「私が呼んだんです。それと協力してもらいたくて」
「協力?」
少し驚いた。何故この刑事に協力をしているのか、この隊員には、後で説教でもしなければだめだと思い、少し怒りの表情になる。
すると岡部が
「実は、このミニチュアを使って実験をしてみたいなと思って」
「なるほどね」
少し隊員らを睨みつけた。すると隊員らは少し怯えた表情になる。
「あっすいません。ガス栓の抜き方教えて貰っても良いですか?」
「ガス栓?普通に抜けば?」
「いえ実は、このミニチュアは長野さんの家と忠実に再現しているため、全部仕組みが同じなんですよ」
そんな面倒なことをしなくてもと思った。でもこの刑事に従うしかないと思い
「えっと、そこの小さいボタンを2秒間押したら、ロックが解除されて引くんで…」
自分でもまさかの出来事だった。何故簡単に教えてしまったのだろうか。岡部を見ると、少し笑顔になっており、隊員らは驚いた表情になる。少し動揺で言葉が出なくなる自分。
すると岡部が
「あなた。確か長野さんの家には行った事がないと仰った。でもなぜこの家のガス栓の仕組みが分かったんですか?」
自分は動揺しながら
「え?そんなの簡単よ。誰の家にもあるからよ」
「それはあり得ません」
「なんでよ!」
少し大きな声で言った。すると岡部が冷静に
「実は、長野さんの家のガス栓は、特注で作られているのです。やはり自分が消防士になるため、不注意による火災は起こしたくなかった。だからあえて特注を作らせて、安全を保っていた。だから、世界に一つだけのガス栓なんです。でもあなた、どうしてガス栓の仕組みをご存じなんですか?それはあなたが長野さんを殺したということです」
それを見破られていたなんて思いもしなかった。そうなると一気に怪しくなる。いやもう終わった、負けたと言うことだ。そのまま俯くことしか出来なかった。
すると岡部が少しトーンを落として
「あなた。姪御さんがいらっしゃったらしいですね。でもその姪御さんは長野さんの放火により亡くなった。その復讐ですよね」
何も知らない隊員らは驚きの顔をする。自分は負けた悔しさと、姪のことを思い出して涙が溢れながら
「なんで優子が、あんな奴に人生を終わらせられなきゃいけなかったのよ。あの子は将来女優になる夢があった。それなのに」
膝から崩れ落ちた。涙が止まらずに溢れてきていたからである。すると岡部が冷静に
「私たち警察でも、長野さんの放火については、逮捕状も請求している途中でした。もうすぐ逮捕されるはずだったんです」
「あなた達に何が分かるのよ!優子の母親も精神病院に入院するほど病んでしまって、挙句に父親も自殺してしまったのよ。家族めちゃくちゃになったのよ。そんな裏側も知らないくせに、ただ逮捕しただけでは済ませないで!」
泣きながら怒鳴った。すると岡部が私をそっと抱きしめた。自分は意外なことに少し戸惑ったが、岡部は優しく
「分かります。私でも同じ立場だったらそうすると思います。でも、あなたが殺人者になっては、姪御さんも悲しみますよ」
少し岡部も泣きそうな感じで言ったため、自分は号泣してしまった。こんなにも優しい刑事もいるんだなと思うと、泣くことしか出来なかった。
~最終回終わり~




