魔法師学園の無能と呼ばれた最強魔術師〜魔法は全然使えないけど悪魔との契約で使えるようになった魔術と使役した使い魔で成り上がる。今更手のひら返されてももう遅い!〜
「はっ、無能のくせに生意気なんだよっ!」
「ぐっ!」
俺は同じ魔法士学園の同級生、ミハイルにそう言われながら顔を殴られた。その後も腹を蹴られたりと散々だ。
「じゃあな無能。明日の模擬戦でもよろしく〜」
ミハイルが飽きて去っていった。よろよろと起き上がり、悔しさから出た涙を拭く。これが俺、ハルトの日常だ。
俺の家は没落した男爵位貴族だったが、微量ながら魔法力があることが判明してここ、魔法師学園に入学した。
当然イジメの標的となった。主犯のミハイルは士爵位貴族の息子だ。俺とは違い子爵位の期待の星とも呼ばれている。
くそっ! 俺だってこんな所に居たくないよ! でも、魔法師学園に通うのは魔法力を持つものの義務じゃないか!
そういえばミハイルが言っていたが、明日は模擬戦の授業だったな。一対一で相手を組み、魔法を使って相手と戦う授業だ。
当然怪我をしないようにある程度の配慮もあるが、学園の教師は俺なんて相手にしない。だからミハイルからどんな扱いをされても何も言わない。
そう考えながら寮に帰っていると、一人の少女と使役されているレッドドラゴンを見かけた。ドラゴン種は強い。それを使役している彼女もすごいのだろう。
……そういえば初級魔法と中級魔法は全て試した(できなかった)けど、上級魔法の召喚魔法はやってみてなかったな。
……試してみるのもありかもな。どうせ出来ないなら、自分にできることがあるかどうかを探してみるのもいいかも!
それでもし何もできなかった時は……潔く諦めて、この事実を魔法師学園に告げて実家に帰ろう! 送り出してもらった身で悪いけど、役に立たない魔法より農業でも習ったほうが良いよなっ?
俺はそう結論付け、急いで自分の寮へと戻っていった。……召喚魔法の書物が無いことには帰ってから気づき、急いで借りに行ったことは割愛だ。
***
夜中の午前2時、俺は床に敷いた紙に描かれた魔法陣に、自分の血を少し垂らす。
「完成だ。あとは詠唱をすれば、自分と相性の良い魔物が現れる……可能性がある」
もちろん召喚魔法に適性が無い場合、何も召喚できない。来てくれ、頼むぅぅぅぅぅぅ!
「え〜と〜、『我が使役せし定めを持つ者よ、我が血と魔力を喰らいてその名を示せ。我が呼びかけに応え顕現せよ!』」
そういえば、魔力ってなんだ? 魔法力じゃないのか? なんて思ってた瞬間、俺の部屋一面を闇が包み込んだ。……何も見えないんだけど!? え、どう言うこと!?
「……ぷっはぁ! や〜っと解放されたぜ〜!」
ん? 今の、誰の声? 俺じゃ無いよ? 幻聴? そんなことを考えていると、闇が徐々に晴れていく。
そして俺の目の前に姿を現したのは、鋭い爪、角、牙を持ち、漆黒の翼を生やしただけの普通の女性だった。
いや、普通じゃなかったわ。さすがに風俗みたいなエロいコスチュームを着てる女性を普通とは呼べないなっ!
「あ? あんたが俺の契約者か? 貧相なツラしてんな〜。……でもまぁ、魔力は化け物級だな!」
「あぁ。あんたの言う通り、俺が契約者のハルトだ。あんたの種族は?」
オラオラしてるヤンキー系女子? だ。正確にはメスと言ったほうが良いかもな!
「俺はサタン! 悪魔の王だ!」
「へぇー」
悪魔かぁ。聞いた事ないな! どんなマイナー種族だよ。これじゃ話のネタにもなりやしねぇ。俺にはお似合いってことか?
……いや、今は魔法が使えただけで万々歳だ! こいつが戦闘系かはもうどうでも良いや! 魔法使えるって分かったんだしむしろありがとうだな!
「? なぜ驚かぬ?」
「え? あ、王様ってすごいですねー。それで早速なんですーー」
「王だぞ!? 魔族の王なんだぞ!?」
いや、だから知らんて。
「はぁ」
「な、嘘だろ!? もしかして魔族を知らないのか!?」
いや、さっきからそう言ってんだろ? ……ごめん、そういや心の中でしか言ってなかったわ。
「はい。それよりもーー」
「くそっ! 一体どの間眠らされていたのだ俺はっ! おい、今は魔術暦何年だ!」
……はぁ、とりあえずこっちの事情を全て聞いてもらうためにも、サタンの聞く事全部答えてやるか。
「今は魔法暦512年だ。魔術暦? は知らん」
「暦が……変わってる……?」
お〜い、落ち込むのも分かるが先に進みたいんだ〜。早く立ち直れ〜。その後、彼の質問には俺が答えられる範囲で全部答えた。その度に落ち込んでるんだから話の進行速度が遅いのなんの。
「それじゃあ今度は俺の番ですね。明日、ミハイルって奴と模擬戦をすることになったんで呼び出しました。悪魔って戦闘できます?」
「はっ、その質問は愚かとしか言いようがねぇぞ?」
「できないならできないと素直に言ってーー」
「バリバリできるわぁ!」
全く、YESかNOで答えてくれると助かるんだけどなぁ。
「待てハルト、なんでお前は自分で戦わねぇんだ?」
「俺には魔法の適性が全くと言って良いほど無かったからだな。運良く召喚魔法でサタンが出たから、当日はあんたに戦ってもらうつもり、そこんとこよろしく〜」
いや〜、召喚魔法って良いよね〜。法律で3食昼寝付きを提供するってのがちょいネックだけど。
「いやいや、魔法ってのはよく分からんが、お前には化け物級の魔力があるじゃねぇか?」
「……そういえばずっと出てきてるその魔力ってなんだ?」
「……魔力を、知らない!? なら魔術は!?」
「知らんぞ」
「………!?!?」
サタンがより一層落ち込みだした。よく分からんが元気出せ〜。
「よし、なら魔術を見せてやろう!」
「部屋汚すなよ?」
「ちっ」
こいつ今舌打ちしやがった。何する気だったんだよ……。
「【灯火】」
サタンが魔術名? を唱えると同時に、部屋にあった蝋燭に火がついた。
「これが魔術だ」
「……は? 詠唱は?」
魔法を使用するには詠唱がいるはずだ。なのに今、サタンは魔術名だけで発動させやがった。
「詠唱? そんなん必要ねぇだろ。必要なんは召喚魔術とか一部の例外だけだぞ?」
うそ〜ん!?
「ちなみにお前の魔力なら、もっと強力魔術も使えるようになるぜ?」
「……まじで?」
「あぁ」
……俺には魔法力も少なく、魔法の才能も無かった。でも、魔術なら……魔力ならたくさんあるらしい。なら、やることは一つだ!
「サタン! 俺にも魔術を教えてくれ!」
「お? まぁ構わねぇぞ? お前には才能があるからな!」
「ちなみに今日の昼までに攻撃魔術は?」
「それは幾ら何でも無理だ。……そうだな、模擬戦のルール教えろ!」
そう言ったサタンにルールを伝える。
「なるほど……よし、ならこれを教えてやる」
***
それから俺はサタンに魔術を教えてもらった。朝が来て、昼までの授業はサボって魔術に勤しんだ。そのおかげか、一つだけだが魔術を使えるようになった。そして、午後の模擬戦の授業がやってきた。
「おいハルト! 約束通り模擬戦やろうぜ?」
「良いぜ」
ミハイルにそう言われ、俺は闘技場へと上がる。周りは俺の一方的なショーが始まると分かり集まりだした。
「さぁハルト。先手は譲ってやるぜ? と言っても、お前は拳しかないから近づいたところを俺の華麗な魔法で潰すだけだけどな!」
じゃ遠慮なく……。
「『来い』サタン!」
その言葉で漆黒の闇からサタンが現れる。あ、エロい格好じゃなくなってる。さすがに人目を気にしたのかな?
「……は?」
ミハイルも周りの連中も何が起こったか理解してない顔してる。
「やっちゃえサタン」
「了解だ〜!」
ミハイルを指差して抽象的な指示をする。サタンが地面を蹴ってミハイルに向かう。
「くっ! 『神秘の水よ、荒れ狂え! 《水撃》!』」
さすが期待の星。詠唱を短縮して中級水属性魔法《水撃》を放った。すごいな……でも!
「【消魔】」
【消魔】の魔術の効果は簡単だ。【消魔】対策されていない魔術を問答無用で消せる。
本来なら魔術を消す魔術だが、俺は魔法力も認識できるので他の奴らの魔法を隠れて消してみたら、なんと【消魔】で魔法も消せることが判明した。
魔法も認識できる俺だからこそできたらしい。ちなみにサタンは魔法を知らないのでできなかった。
「き、消えた!?」
「遅ぇ!」
動揺しているミハイルに、サタンの渾身の膝蹴りが入った。そのまま闘技場の壁にぶつかった。……サタン強っ!?
「俺の勝ちだな。……いや、俺たちの勝ちだな!」
その後ミハイルは俺を恐れるようになり、ちょっかいも無くなった。それどころか……。
「すごいですよ先輩!」
後輩からも慕われるようになった! サタン様様だなこりゃ!
「なぁ、ハルト……」
「うるせぇミハイル。二度と喋りかけんな」
「も、もう二度としないからゆ、許してくれよ……っ!」
「今更手のひら返されてももう遅い!」
俺はこの先、サタンとこの魔術で、魔法師学園を成り上がってやる!
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『9人の王〜F級探索者の俺が異世界へのゲートを通って迷宮攻略していたら仲間に裏切られ死にかけるが、ボス部屋に眠っていた元精霊王を名乗る銀髪幼女と契約できたので成り上がる。裏切りを謝られてももう遅い〜』
というタイトルの作品を連載中ですので、よければどうぞ。