第13話 万国共通
「はっけよーい‥‥‥のこった!」
勝負の幕は開かれた。俺は相手の出方を見ようと攻めようとはしなかった。相撲らしくはないが。
しかし、相手はなぜか攻めて来なかった。それだけでなくなんと、構えすらしない。いままで相撲とはかけはなれたような試合しかしていないがここまで不思議な相撲はない。
「何故攻めて来ないのだ、剛の海。」
「攻めないのではない。機会を与えてやっているのだ。」ずいぶんと俺は舐められているようだ。
「私と戦った者は皆等しく、我の力の前に無力に終わっていった。だからせめて一度だけでも攻撃の機会を与えることにした。」
「もし仮に、俺がお前を吹き飛ばすほどの力を持っていたらどうするんだ?」
「それには及ばない。我より強きものなど少なくとも今大会にはおらん。」
もはや会場は絶句していた。前の試合までヤジを飛ばしていたようなやつも剛の海の傲慢まで言える発言を前にしては口も閉じてしまう。
「噂で聞いていたどうりの傲慢さだな。自らより強い者の事を考えたことはあるのか?」
「そんな無駄なことはせん。日々自らの力に磨きをかけ、強い者が現れれば全身全霊で打ちのめす。そして我は最強へと近ずいていくのはだ。」「そろそろ皆がイラついて来る頃だから勝負を決めよう。」「ふん!どうせ貴様も他の者共と同じく我に利きもしない攻撃を与え、我の前から散っていくのだ。」
「そうはさせないさ。」返答した直後俺は算助から習ったあの技を披露した。
~10分ほど前~
『自分の腕全てを鞭と思い相手を叩くのだ。これはどんな敵にも万国共通の等しい痛みを与えられる。剛の海は自らの力への過信のあまり痛みには弱いはず、そこへ鞭を叩き込めば勝機はあるはずだ。』『ありがとう算助。ところでこの技はどこで習得したんだ?』『少し前に護身術をかじったときに覚えた。』『いがいに護身術なんてやるんだな。』『いや、最初は相撲を習おうと思ったんだが、ちと体格が向いてなくてな。』『いろいろあるんだな。』
ベシンッッッッッッッ!!
鞭で叩かれたような音が会場全体に響いた。
「アッ‥‥ッガ‥‥ガッ。」剛の海はとても痛そうによろめいている。
「必殺技完成」
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