短編小説 公開収録
私の知り合いには、野口さんという人物がいる。
この島の南港で働いており、同時にオリンピック選手でもある。
今日は、この南港で、クレーン操作の技能講座が行われていた。
「このクレーンは、さびついているからコツが必要なんだ」
野口さんは、軽々とクレーンのレバーを動かしてみせた。
全く分からなかったので再度、質問した。
「すなわち、この安全装置を解除してから行うのですね」
「そう。それから、マニュアル車のレバーを操る感じで動かす! 」
私が操作したが、うまくいかなかった。
それを見た野口さんは励ましの言葉をかけた。
「私も慣れるまで、1年かかったから落ち込むことはないよ」
そして、お昼頃になり技能講座が終了した。
「みなさん、お疲れ様でした。次の講座は1週間後ですか予習復習を忘れずに」
野口さんは、きっぱりと言ってお開きとなった。
次に、みんなで桜田公民館へと行った。
ラジオ番組の「午後のあいさつ」の公開収録をするためである。
午後のあいさつとは、この島を舞台にしたドラマラジオのことである。
内容は・・・・・・。
「詳しくは、まだ話せんな・・・・・・ 」
監督である博士は、読者に向かって言った。
「監督は、自虐的で自分自身を悪役にしていますもんね」
ネコバーが、笑いながら言った。
「悪役は、さんざん悪いことをして、最後にはひどい目に遭う。素晴らしいではないか」
博士は、胸を張って言った。
そして、大熊は感心したように博士に向かって言った。
「まさか、この島を舞台としたドラマで、こんなに観光客が増えるとはね・・・・・・ 」
私が後ろを見るとドラマの見学のために、多くの観光客がいた。
「すごいですね! 」
私は、驚きを示した。
よくアニメの聖地といって、舞台となった場所は観光地になるものである。
それが、ドラマで観光客が集まるとは、驚きのことであった。
「それでは、みなさん時間です」
進行役の私は、スタンバイの声をかけた。
----ドラマ公開収録スタート----
「島ラジオ番組の『午後のあいさつ』の時間です」
ゆうきアナウンサーが、そう言い、出演者みんなであいさつをした。
「みなさん、こんにちは! 」
会場に向かって言うと、観光客も「こんにちは! 」と返した。
そして、ナレーション役の私が、セリフを言った。
「私は、大熊の後について行きながら、質問したのであった」
次に、私の役のセリフを言った。
「急ぎの用事とは何ですか? 」
「博士の派閥が動き出したのだ! 」
大熊は、緊張しているのを押しつぶして、大げさに言った。
「それから、恋人岬の隠れ家に行き、すべての仲間が集まった」
私はそう言い、次のページをめくる。
「ああ、大熊さん」
ネコバーは、台本をはっきりと読み上げる。
「話はきいたか! 」
「ええ、やつらが動き出したようね・・・・・・ 」
そして、私は冷静にナレーションのセリフを読んだのであった。
「ネコバーは深刻そうな顔をしたのであった・・・・・・ 」
その後に、自分のセリフを言った。
「とうとう、この日が来たのですね」
「ああ、悪い事にきこえるかもしれないが、立場を逆転できるチャンスでもある! 」
大熊は、元気よく大きな手振りをして見せた。
「それで案はあるのですか? 」
「案か?君は何かあるのだろう・・・・・・ 」
「分かっています。私がこの物語の大きなカギですからね」
そして、私は皆を見た。
「続きは、来週です」
最後に私はそう言い、公開収録は終了した。
----ドラマ公開収録 終わり----
観光客から、大きな拍手が響き渡った。
そして、みんなを代表して博士があいさつをした。
「みなさん、こんにちは! 」
ドラマの「午後のあいさつ」という由来は、午後に定期的に放送されるドラマであるため。
それから、はじまりに必ず「みなさん、こんにちは」とドラマの始まりにあいさつをするためである。
「これからも、『午後のあいさつ』をよろしくお願いします! 」
終わり