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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第四章 教えるのも試すのも楽じゃない
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学生の本分③

そして翌日。約束の勉強会の日。



 リビングから見える天気は生憎の曇天で風も強い。窓ガラスが時折ガタガタと揺れている。



「二人とも大丈夫かな……」



 一応連絡してみたが、両者とも大丈夫と言っていた。二人が大丈夫と言うのならば、こちらが止める理由はないけれど……心配になってくるな。



「透さん、朝ごはんできたけど~」



「ああ、今行く」



 翡翠に呼ばれ、キッチンテーブルの前に座る。



 我が家の朝食システムは、七時から九時までなら翡翠が朝ごはんを作ってくれる。そして片付けもや

ってくれる。



 しかしそれ以外の時間は自分で用意しなきゃいけないし、片付けも自分でやらなきゃいけない。他の家がどうかは知らないが、これが我が家の普通だ。



「頂きます」



 今日の朝食はトーストと卵焼き、そしてサラダと牛乳だ。



 朝は出来るだけバランスが良いように作るのが翡翠のこだわり。



 それをゆっくり食べ、食器を片付ける。



「ご馳走様」



「お粗末様」



 食器を翡翠に渡し、自室に戻り使えそうな資料や教科書、ノートを持ってリビングに戻る。



 リビングには秋奈と夜鶴の姿はなく、洗い物をしている翡翠だけだった。



 勉強会の会場は俺の部屋ではなくリビングだ。それには理由がある。



 それは夜鶴の盗み見を避けるため。



前にエリスが協力を申し込んできた時にも夜鶴はドアの隙間からのぞき見していたが、実はエリスと梅森さんがお見舞いに来てくれた時にものぞき見をしている。何なら今まで尋ねてきた楓や、仕事で来た千秋などの女性客全員を監視している。



 しかも止めろと言っても言うことを聞かない。監視は金鈴がやっているからいいと言っているのだが、全然首を縦に振らない。



 なので、今回はあえて大っぴらに勉強会をすることにした。



 まあ、翡翠以外は出掛けてもらうよう頼んであるので、監視される心配はないのだが……念のためだ。



 さて、後は二人を待つだけ──



 ピンポーン。



 インターホンが鳴った。



「はーい」



『エリスですが、鳴神透さんはご在宅ですか?』



 画面に映し出されていたのは私服姿のエリスと梅森さん。



「いるよ。今開ける」



 返事をして玄関に行き、ドアを開ける。



「いらっしゃい二人とも。どうぞ中へ」



この強風の中で立ち話は危ないので、二人を家に入るよう促す。



「お邪魔します」



「お、お邪魔します」



 エリスは普段通りに、梅森さんはやや緊張した面持ちで家に入る。



「二人とも大丈夫だった? 外大分風強いけど」



 二人の髪は強風に煽られたのかところどころボサボサだ。



「このぐらいなら大丈夫ですよ」



「うん。何とかなったよ」



 そう言いながら手櫛で髪を整える二人。それ以外の損害はなさそうだ。



「それは何より」



 そんなことを話しながらリビングに移動する。



「あれ、鳴神さんの部屋でやるのではないのですか?」



「俺の部屋に三人で勉強するには狭いよ」



 多分大丈夫だとは思うけど、リビングで勉強会をやる建前が他に思い付かなかった。梅森さんがいる以上、式神のことを説明しなければならない事態は避けたい。



「そうですか? あのサイズの部屋なら三人でも大丈夫そうですけど……あ、何か隠してるものがあるとか!」



 流石にエリスは鋭い。エリスにはこちらの事情をある程度話してあるから、梅森さんにバレないようにしていることに気づいたか。



 けど、何故わざわざ言うのか。それじゃあ梅森さんに勘付かれるぞ。



「まあ男性の部屋ですからね。隠したいものがあるのは当然かもしれません。ね、千里さん?」



 そっちかよ。



「え、あ、あうん。そうだね」



 顔を赤くしている梅森さんとこっちに目配せしているエリス。



 ……とりあえず、話に乗っておくか。



「そう言うことだから、詮索しないでくれると助かる」



「はーい」



「うん」



 二人の同意が得られたところで、早速今日の本題に入ろう。



「じゃあそこのテーブルでやろう」



 俺は食卓に移動し、二人もこちらに来るように促す。



「えーと、エリスは課題やってきた?」



「勿論です!」



「それじゃあ昨日みたいに説明よろしく」



「はい!」



「梅森さんは数学の公式を一つずつ、一ページ分埋まるまで書いて。これが出題範囲で使う公式」



 用意していた手製資料を渡す。



「……これは大変そう」



「最初だけだよ。数学は公式とその使い方を覚えればイケる」



「ってことは、これが終わったら……」



「実際に問題を解いてみよう。参考書はできるだけ教科書に似たのを買って来たから」



 受験勉強ならともかく、定期テストならこっちの方が良いかなと思った。



「分かりました、先生」



 ……何か良いな。先生って言われるの。師匠は言われ慣れてるけど、こっちの方が距離感近くていい

な。



 そんな感覚とは関係なく、梅森さんは勉強を始めた。



「それじゃあエリス、日本史の説明よろしく」



「分かりました、先生!」



 ……良い。


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