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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第一章 ようこそ風魔の里へ
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現人神とは②

もういい時間だし、どこかでお昼でも食べようかな。

 


保障局の食堂は人が多すぎるから、保障局を出て適当な店に入る。



 そして適当に済ませて、食後の運動がてら次の目的地《三日月の共鳴》に歩いて向かう。



「おーい、透―」



 どこかから俺を呼ぶ声がする。



 振り向いて確認すると、後ろから駆け寄ってくる人がいた。



「よっ、元気してたか?」



「滝川さん」



 その人は《十二神将》の一人、第四位の滝川稜泉さん。青い髪の毛が特徴的なイケメンである。



「どうしたんですか? 俺に何か用です?」



「いや、たまたま見かけたもんで。もう昼食べた?」



「食べちゃいましたね」



「マジかー。一緒にどうかと思ったんだけどな」



 悔しがる滝川さん。



「そんなに落ち込まなくても良いんじゃないです?」



 見た目はイケメンなのだが、中身は子ども……というより、犬。



 滝川さんは気に入った相手にはとことん入れ込むタイプ。その内の一人に俺が入っているようだ。



「だって会うの久しぶりじゃん。連合もないし」



 連合とは、現人神のコミュニティである現人神連合の事だ。確かに最近皆忙しくて参加してないな。



「また今度ご一緒しますよ。ところで、滝川さんはどうしてここに?」



「仕事帰りだよ。今回の仕事は夜勤だったし」



「ああ、行政からの依頼ですか」



 異能者には、異能者認定証明書という身分証明書に、EからAの五段階のランクが記載されている。



 このランクがあることで、受けられる依頼のレベルや契約内容が違ってくる。



 例えば、俺のランクはCなので、個人から直接依頼を指名されることが出来る。今回の風魔の一件は、この《直接指名個人依頼》という形式で認可されたものだ。



 そして滝川さんのランクはA。このランクになると国からの直接指名依頼を受けられる。滝川さんは夜勤と言っていたので、立法や司法ではなく内閣からの指名だろう。



 ちなみに《十二神将》の皆は軒並みAランク。そうじゃないの俺だけ。



 だから朱雀院さんからもっと貢献しろって言われるんだよなあ。



「そうなんだよ。夏に向けての水不足対策で呼ばれてさ。すごく眠い」



 ということは、どこかのダムに水を補充してきたのだろう。



 滝川さんの現人神としての神格は《水神》で、文字通り水に関する権能を四つ持っている。



 水不足が予想される時や夏場に現人神として呼ばれることが多い。夜にやったのは、人目につかないためだ。



 現人神が機密事項ということもあるが、滝川さんは神に直接現人神に選ばれた《任命型》の現人神。このタイプは権能を使うと理性が削られていくので、できるだけ人目のつかない夜の方が何をしでかしても被害が少ないのである。



 まあ滝川さんには彼女(ブレーキ)があるし、根が善良だから理性を無くしてもそんな問題行動に出ることは無いから扱いやすいけど。



 俺の場合は神に功績を認められた《偉業型》で、権能を使うたびに感情が無くなっていく。筋トレみたいに感情を想起させることで、無くなった分を回復している。リハビリみたいなもんだな。これはどのタイプでも変わらない。



滝川さんもしているはずだ。理性を鍛えるトレーニングとかどうやってるのかさっぱりわからないけど。



「お疲れ様です」



「まあな。しっかし昼飯どーすっかな……」



「俺の行きつけの喫茶店で良ければ行きますか?」



「え、何、お前そういう店あるの?」



 そんな意外そうな表情をされると、複雑な気分になるな。俺は一人が落ち着くから人付き合いを敬遠しているだけであって、別にコミュ障とかではない、はずだ。



「はい。少し歩いて《三千世界》使えばすぐに行けますよ」



 流石に往来で《三千世界》使うのは危ないので、人気のない場所に行ってからになるけど。



「んじゃ頼むわ」



「はい。じゃあ行きましょうか」



 数歩歩きだす。



 だが、滝川さんが動かない。



「どうしました?」



「……なあ透」



滝川さんの顔つきがさっきまでとは違う、緊張感がある。この一瞬で何があったのか。



「今何時か分かるか?」



滝川さんに言われ、携帯電話の時計を見る。



「まだ一時ぐらいですね。それがどうかしましたか?」



「見ろよあの銀行。どう思う?」



滝川さんの指さす方には、道路の向かい側、大手銀行の支店がある。何の変哲もない普通の銀行だが、一点だけ、妙な違和感があった。



シャッターが下りていたのだ。銀行なら営業時間は終わっていないはずなのに。



「変ですね」



その直後だった。



ドオオオオオオオオオオオオオン!!



 突如、銀行のシャッターが爆発し粉々に吹っ飛んだ。周囲に人が居なくて惨事にはなってはいない。距離もあってか破片はこっちまで飛んでこなかったし。



そんな中、爆破した銀行から何人かの犯人と思わしき黒い影を見つけた。爆発の煙で見えにくいが、多分四人程いる。恐らく、銀行強盗だ。



すかさず滝川さんに伝えようとするが、猛スピードでやって来た黒のワンボックスカーに気を取られる。



それに犯人達が近づいているところを見ると、どうやら犯人グループの関係者のようだ。逃走車を用

意するとは随分と計画的だ。



全く、次から次へと面倒ごとが! 俺の平穏な生活を返せ!



「透、お前はそこで見てろ」



 状況を理解した俺はすぐに臨戦態勢に入るが、滝川さんに止められる。



 滝川さんがやる気なら、こちらは裏方に回ろう。



 まずは足止めをするために滝川さんが《万物流転(フロープロデュース)》で車内部にあるガソリンの動きを止めた。



犯人側もこれには予想外だったのだろう。混乱した様子で車から出てきた。その手にはアタッシュケースと拳銃を持っていた。徒歩で逃げる気か。すぐに諦めないところは好感が持てるが、やってることは犯罪。認めることはできないな。



「あいつらが犯人か」



こちらに気づいた犯人グループが一斉に銃を構える。



「だけども、それじゃ遅いな」



引き金を引こうとするまさにその瞬間、犯人グループたちが一斉に倒れだした。



滝川さんが《万物流転》を使って、犯人グループ周辺の空気の流れを操って酸素濃度を急激に下げて、昏睡させたのだ。



 《万物流転》は、液体と気体の流れを操る動力系統の異能。シンプルだが対人戦において強力な異能だ。



「透、お前は犯人たちの様子を見てくれ。俺は銀行の中を見てくる」



「分かりました」



犯人たちの状況を確認するために近づく。気絶しているだけで、命に別状はない。倒れた際の怪我もない。



倒れた犯人から銃を回収する。



うん、こいつらちゃんと生きてはいるな。加減が上手いなー。一体どれだけ試したんだろうか。



銃はそこらへんに置いておくわけにもいかないので、弾倉から弾を抜いて犯人たちの車の中に放り込んでおいた。ついでに車のキーを抜いておく。銃弾はこちらでお預かりいたします。



「滝川さん。こっちはオーケーです」



「ん、ありがとさん」



「そっちはどうでした?」



銀行の方を確認していた滝川さんに聞いてみたら、思っていたほどの被害はないようだ。あの爆発の威力で怪我人がさほど出なかったのは、犯人たちが銀行にいた人たちを奥の方で集まらせていたからだろう。



「警察と救急車には連絡しておいた。透はどうする? 何か用事があったんだろ。こっち家から逆方向だし」



 言わずとも気が付くのは滝川さんらしい。



「犯人グループは俺が見張っておくよ。警察には事情を説明しとくから。後日話聞きに来るかもしれないけど、それでいいなら」



「ありがとうございます。お礼はまた今度で。あ、これ車のキーと銃弾です」



滝川さんに逃走用の車のキーと抜いた銃弾を渡す。



「おう。じゃあまたな」



 滝川さんの厚意を受け取り、俺はその場を後にした。


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