生き残れ! ゾンビパニック②
次の戦場は大学部部活棟。最初の戦場よりゾンビの数は少ないが、割と多い区域だ。
俺がいるのは戦場を見渡せる森の中。
ここで戦っているのは大学生。参加不参加は自由な大学生の中で、自ら参加を表明した積極性あふれる学生が自らの部室を守らんと戦っている。
戦況は部活棟に立てこもっている学生VS部室棟に侵入しようとするゾンビという対立が作られていた。
比較的運動が得意な人や攻撃的な異能を持つ人が最前線に立ち、他の学生はその援護をするという完全分業制が確立されている。好き勝手に個人で戦う高校生とは違いこちらは組織で動いている。しかも組が違うもの同士で。
まあいくら祭とは言え自分たちの部室を荒らされたりされたくないか。俺には分からないけれど、部室の中には大切なものだってあるはずだ。
……理事長がそこを考慮してないとは考えにくいけれど。というか何かしら対策はしているはずだ。学園の物品にプロテクトを掛けるとかなら、量は多いができないことはないだろう。
ただ、それをしたとして、学生側がそれを知っていなければ当然こういうことになる。人は可能性を真実だと思い込んでしまう生き物だ。
「やることは変わらないけどな」
学生達がどう思い、どう考えているのかは俺のすることに影響はない。
実際に戦っているかどうかの方が今の俺には大切なことだ。
そうでないと援護ができない。
「はっ!」
まずは《鳳凰鉄扇・炎の巻》でゾンビの群れの中心を焼く。前線を焼かなかったのは学生達を巻き込んでしまうから。
けれどそれがゾンビの波を緩やかにするには十分だった。空いた隙間を埋めようとゾンビ達がゆっくりと前進し始める。
それ即ち、少しの余裕ができること。
しかし、まだ足りない。
こちらは数的不利。この程度の支援では戦況はひっくり返らない。
「ふっ!」
もう一度《鳳凰鉄扇》を振るってゾンビ達を焼く。
……うーん、思った感じではないか。
ゾンビを焼いても状況が変わらない。一応何度も振って数を減らしているし、増えている様子もないから多少変化があってもいいはず──
あっ、そういうことか。
単純に、防衛戦しかしないつもりなのか。学生達は。
そう考えるとつじつまが合う。通りで前に動かないはずだ。
さっきまで殲滅戦の支援をしていたが、防衛戦ならば支援もそれに向けたやり方の方がいいか。
すなわち、補給。
防衛戦をするに必ずと言っていいほど重要な要素。この場合は呪力補給か。時間制限が設けられている以上それまで耐えれば勝ちだ。
それに必要なのは……呪符だ。
俺は呪符ホルダーに入っている呪符百枚を全部抜き取る。この呪符ホルダーに入っているのは呪力属性の無い呪力、異能呪力学で言うところの無色の呪力が封印されている。これを破り捨てることで
呪力を回復できる充電器のような用途を想定したものだ。
実はこれ、うちの店で買うと結構高額。製作コストがバカ高いから。
無色の呪力の生成は、霊力を呪力に変換しなければならない。それがとにかく難しい。時々失敗するし。《劣化複製》では作れないし。
そんな貴重なものだけど、使うならここだな。大丈夫、在庫はまだある。
しかし、受け渡し方がないな。勿論、自分が干渉しない形での、だ。
直接渡す訳にもいかない。そもそも見知らぬ他人から渡された呪符なんて受け取ってくれるかどうか。俺だったら受け取らない。
……見知らぬ他人という壁がでかい。これじゃ何をしても受け取ってくれなさそうだ。
いや、大分無理があるけど勢いで渡すか。可能性を上げるために渡すのは同じ組の人に。
よし、やってみよう。
「大丈夫ですかーっ!」
《神風》を使って勢いを増した跳躍力で部室棟の屋上に飛び乗る。
「えっ何!?」
驚いたのは同じ組の女子学生。
「たまたま通りかかったら何か凄いことになってますね!」
「援軍のつもり? ……いいわ、貴方も手伝って!」
「それは良いですけど、自分ができるのはこれぐらいで……」
呪符の束を渡す。
「……これ、回復の! いいのこんな貴重なもの」
「良いんですよこれぐらい」
在庫はあるからな。
「《術者》にできることはこれぐらいでしょう。では!」
《神風》を使って去っていく。




