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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第三章 体育祭の規模じゃない気がする
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突然の転校生③

「今日来てもらったのは、エリスさんに協力、いえ、私達に協力して欲しいの」

 


予感、的☆中。



 今俺は、約束通り理事長室にいる。俺の他に、この部屋の主である理事長であり中学の同級生、篠宮綾乃と、その秘書雨宮さん。



そして、先程理事長に呼ばれていると言っていた転校生、エリス・ガブリエル・ホーリー。



これは、厄介事だな……。



「協力って何ですか。お二人が何を企んでいるのかは知りませんが、これ以上仕事を増やされると過労で倒れそうなんですけど」



嘘だ。



確かに今の所仕事が多いのは確かだ。例えば、音無君と魔物を倒す特訓するとか、呪具の製造、大手企業からの原材料の発注、魔物討伐、十二神将としての仕事等々、今受けている仕事でもこれだけある。



だが、それでも過労で倒れる程現人神の肉体は柔ではない。あらゆる物質を作り出す創造神の肉体は、疲労があると疲労回復物質を勝手に作り出してしまうのだ。ただ、無から有は作れないので大気や食事から元となる物質を取り込む必要はあるが。



「それは重々承知しています。ですが、協力してもらうとしても主体は私達よ。鳴神君には負担は最小限にすることを約束するわ」



「……まあ、話も聞かずに断るのも何ですから。ちゃんと聞いてから判断します」



「……ありがとう」



 いつも以上に真剣な眼差し。相当面倒くさいことになってるなこれは。



「実は、エリスさんは《聖神楽土》の幹部です」



「……え?」



 突然のカミングアウトに理事長の右隣にいる転校生を見る。そういった視線に慣れているのか目が合っても反応は無かった。



《聖神楽土》とは、世界に広く展開している宗教団体。この地球で最も影響力のある組織の一つだ。海外の事を詳しくない俺でも名前ぐらいは知っている。



「何でそんな大物がこの学校に?」



 この際《聖神楽土》がどういうものかはどうでもいい。重要なのは、その世界最大の宗教団体の幹部が、その影響力が最も弱いとされる日本の、そして一地方都市の学校に生徒として訪れているのか、だ。



 完全に要人やん。政治案件は面倒なんだが?



「単刀直入に申し上げると、この学園の関係者に《アルカナ》というテロリストの構成員がいることが分かりました」



「っ!?」



 アルカナ。あいつらの仲間がこの学園にいるだと?



「……それは信頼できる情報なんだろうな」



「はい。私の予知は主から授けられたもの。一度も外したことはありません」



 予知能力か……。



 予知は大別すると二種類。近未来予知と瞬間予知に分けられる。



 両者を分ける条件は、予知した内容が実際に起こる時間。一分以内であれば瞬間予知になり、それ以上であれば近未来予知となる。



 そして、予知は時間が経つにつれ曖昧になる。



 彼女のセリフからして、瞬間予知だとは思うが、それにしては変だ。



 予知とは、これから起こる出来事を予め知る異能。



 《起こる》ならまだしも《いる》という表現はしない。



「予知と言っても、貴方の考えているようなものではありません」



 俺の懐疑心を見透かしたかのような発言。少し警戒心を上げる。



「私の予知は言わば啓示。確実に起こる、もしくは分かることを主が試練として告げるものです。なので曖昧ですが、そこは試練なので……」



「まあ、何から何まで教えたら試練にはならないよな」



 俺だって弟子に何から何まで説明しないし。



 にしても、啓示か。日本じゃ見られない異能だな。これも文化の違いか?



 面白いし色々聞きたいけど……今はそんな雰囲気じゃないしな。我慢だ。



「分かった。信じよう」



アルカナが関わっているのなら、現人神の仕事としてやるしかない。例え騙されたとしても、最悪の場合アルカナ構成員を確保する機会を逃す。それは看過できない。後から責任追及されると面倒だし。



それと、これは根拠に乏しいのだが……綾乃が信じているんだ。それだけで十分だ。



「それで、今どこまで分かっているんだ?」



「この学園の関係者が《アルカナ》の構成員がいるということだけです」



「まだ捜査の段階か」



「はい。ですがこの学校の関係者は人数が多すぎて……」



 転校生がシュンとする。無理もない。この学園、生徒と教師、事務員や警備員とか合わせると三千人以上はいるもんな。他の部を合わせると一万は超えるんじゃないか?



その中から特定の人物を手がかりがほとんどない状態で探せというのは、あまりに無謀すぎる。



「それでそちらさんが情報提供して理事長が協力していると」



「そういうことになるわね」



「良く信じたな根拠も証拠も無いこんな話」



「留学中に色々聞いていたからね」



 あー、そういえば海外留学してたんだけっけか。それで向こうで色々聞いたと。



「事情は分かった。で、俺はどうすればいい?」



話は次の段階へ。



 協力体制は敷けた。ならば次は行動についてだ。



「現状、テロリストを捕まえる絶好の機会だわ。まだこのことは秘密裏で、知っているのは此処にいる四人しか知らない」



「ならできるだけこの人数で動いた方が良さそうだな。理事長は立場上動くと相手にバレる可能性が高い」



「となると……私と、えっと……」



「鳴神透だ」



「鳴神さんと私が捜索になりますね」



「俺は裏方に回る。転校生の異能は予知系なら主軸は任せるしかないしな」



「…………」



「ん、なんだ?」



 転校生の視線が刺さる。見るからに不満そうだ。



「あのですね鳴神さん。私たちはこれから共に行動するわけですから、せめて名前で呼んでください」



「そうして欲しいならそうする」



「では次から名前で呼んでくださいね?」



「分かった」



「…………」



 そんなやり取りをしていると、今度は理事長から視線が。



 ……えと、何なの? どうすればいいの? 理事長の意図が読めないんだけど。



「で、具体的にどうする」



「そうですね。まずは普通に学校生活を送りつつ、少しずつ情報を集めましょう。そうすれば新たな

啓示が降りてくるはずです」



「俺は啓示とかはには詳しくないが、そういうものなのか?」



「啓示は一定の条件を満たすとさらに啓示が来るんです。」



「成程ね」



 そこは予知と違うのね。何と言うか、ゲーム感覚に近いのか?



「じゃあしばらくはその方向で。理事長もそれでいいか?」



「……構わないわ」



「いや見るからに不機嫌そうなんだけど。何かあるなら今の内に言った方が良いと思うぞ」

女性に囲まれながら生きる俺の対女性洞察力を甘く見てはいけない。不機嫌ぐらいなら察知できる。



「いえ違います」



 理事長が言ったかと思えば実際に発言したのは雨宮さんだった。



「単に鳴神さんがエリスさんに構いっぱなしなのでご立腹なだけです」



「ちょ恋!?」



「最近一緒にいる時間が少なもごごごご」



「何言ってるのかしらねこの秘書は!」



無表情で告げる雨宮さんの口を全力で塞ぎにきた理事長。



「鳴神君! 今のは恋の妄言だから! そんなことはないから! ちょっと歯が痛むなーって思ってただけだから!」



「そうか、一応歯医者に行くことを勧める」



「ええ、そうするわ!」



 不機嫌の理由は分かった。作戦に関することではなかったが。



「……大変そうですね」



「そりゃ秘密裏にテロリストを捕まえるんだ」



「……これは試練ですかね」



呆れたようにエリスが呟く。いや自分で言ってたじゃん。



「そうだわ、鳴神君。エリスさんに学校案内をしてあげて」



「了解した」



 これから学校生活を送るにあたり、確かに案内は必要だ。予知の精度を上げるにも情報が必要だろ

うし。



「失礼します」



「失礼しました」



 二人同時に理事長室を後にした。


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