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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第三章 体育祭の規模じゃない気がする
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突然の転校生①

音無君のテストから二日経った月曜日、いつものように登校した俺は、少し違う雰囲気を感じた。



それを感じたのは高等部の敷地に入ったときだった。どこかいつもと違う、浮ついた雰囲気がそこら中に漂っている。



似たような感覚で、バレンタインやホワイトデーといった恋愛系イベントがあるが、それとは違う。ソワソワやドキドキというよりもワクワクしている感じだ。



 ともかくそんな言葉にしづらい雰囲気に乗れずに押さえつけられている窮屈感がある。



 そう言えば、昨日理事長からメールで今日の放課後に理事長室に来てくれという内容のが来てたな。この雰囲気と何か関係があるんだろうか。



そんなことを考えつつ教室に入る。雰囲気は同じだが、一層濃くなったのを感じた。え、うちのクラスに関係あることだったのか?



 しかし、考えても答えは出ない。仕方なく自分の席に座り文庫本を読むふりをして周りの声を集める。謂わば調査。悪く言えば盗み聞きだ。



「ねえ、今日転校生がくるって本当かな?」



「どうだろ? 噂じゃうちのクラスに来るらしいけど」



「かっこいい人がいいなあ~」



「夢見すぎだって」



 ……と、以上が近くで話してた女子クラスメイトAとBの会話だ(名前は覚えてない)。



「なあなあ、噂の転校生、外国人らしいぜ!」



「マジかよ! 金髪か!?」



「おま、どんだけ金髪好きなんだよ」



「てかまだ女って決まったわけじゃねーだろ」



「いや女だね! 金髪って言ったら女だろ!」



「お前金髪の男に謝れよ」



……以上が男子クラスメイトA、B、Cの会話だ(当然名前は覚えてない)。



 どうやら、転校生はうちに来るみたいだ。一方でどんな人かは判明しないっぽい。情報源が噂レベルだからどこまで信用していいか分からんけど。



「はよっす」



 集めた情報を元に考察していると、正彦が来た。そして俺の前の席に座る。



「なんか浮ついてるけど、どうしたんだ?」



「噂じゃ転校生がうちのクラスに来るらしいぞ」



「転校生ねえ……どんな奴だろ」



「三組に来るぐらいだから異能者には変わりないだろうけどな」



 うちの(三)組ってことは、成績は平均的ってところか。



 キーンコーンカーンコーン……。



「みんな静かに」



チャイムが鳴り終わったのと同時に担任の巽要先生が教室に入ってくる。いつも通り時間に正確な人だ。



 巽先生は教卓に立ち名簿を置く。



「さて、ホームルームを始めます」



「起立!」



 今日の日直の霧臣が号令をかける。



「礼! 着席!」



 元気のいい声で号令を言い、それに従うクラスメイト達。勿論俺もだ。



「皆さんも知っているとは思いますが、今日はこのクラスに編入してくる生徒がいます」



 おおっ! と教室が騒めきに満たされる。みんなあれやこれやと思い思いに転校生に思いを馳せている様子だ。



「静かに。では、さっそく紹介します。入って下さい」



「はい」



 そう答えたのは女性の声。この時点で男子達は喜びそれを見ている女子達はまるで残念なものを見

るような目を向けている。



 騒いでいないのは俺を正彦ぐらいか。流石彼女持ち、余裕がある。



 ガラガラッと教室のドアを開け、転校生が入ってくる。



 転校生の姿を見るや、さっきまで騒いでいた男子達が一気に静まり返る。



「初めまして。UKロンドンから来ました。エリス・ガブリエル・ホーリーと言います」



 光輝く水色の髪に、宝石のような金の瞳。まるで絵画から飛び出してきたかのようなその姿に、ク

ラスの雰囲気が変質する。さっきまでの興味津々はどこへやら、まるで教会のような荘厳な雰囲気に変わっている。



「母が日本人なので日本語は大丈夫だと思いますが、変なところがあったら気兼ねなく言ってくださいね?」



柔らかい笑顔。聖母の如きそれは、神秘に触れた気分にさせる。



「「「「…………」」」」 



 転校生の挨拶に、拍手も何もなくただ固まる生徒達。



「えと、何か反応していただけると……」



 転校生も困惑している。これだと歓迎されてないと思うよな。俺もそう思う。



 大したリアクションはできないが、このままなのは流石に礼儀に反するし拍手するか……。

と、拍手しようとしたとき。



「「「「うぉおおおおおおおおおっ!」」」」



 静寂を打ち破る男子達の雄叫び。突然のことで転校生がびっくりしているが、それも一瞬のことで、すぐに柔らかい笑顔に戻した。



それを見る女子達の男子に対する目は、軽蔑ではないもののどこか呆れた感じだ。だが、仕方ないと

いった諦観も感じられる。



これ、隣のクラスから苦情来るよな。そうでなくても空き時間に何事かと見に来るよな。



「皆さん静かに。連絡事項ですが──」



 そんな空気でも淡々と職務をこなす先生。転校生の席は廊下側の一番後ろになり、俺が席替えで窓際最後尾なので近いと言えば近い位置だった。



「それではホームルームを終わります」



 そう言って先生は教室を出て行った。いつもより早い終了に、クラスメイトは我先にと転校生に突撃していた。少ない休み時間なんだから自己紹介とか後にすれば良いのにと思っているのは、どうやら少数派のようだ。




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