三日月の共鳴、出陣⑤
「本当すいません! 俺が多智の弱点を伝えそびれてなければ……」
「終わったことだ。気にすんな」
控室に戻った俺は、皆に謝っていた。
「それにそいつの弱点分かっても倉敷を倒せなかったわけだしな」
「そうそう、チームなんだから連帯責任ってやつよ」
「日鳥さん、月島さん……」
「ま、そういうことだしさ。元気だしなよ。僕なんか全然役に立ってないんだからさ」
「そうですよ! それに目的は宣伝ですから!」
「野々花の言う通りだ」
「……いつから居たんですか社長」
「ん? ついさっきだが?」
何でか社長が控室にいた。
「どうやって入ったんですか」
「そこのドアから」
「いやそうじゃなくて、ここ関係者以外立ち入り禁止区域だったでしょ」
「何か慌ただしかったからその間をすり抜けて来た」
……どうなってんだよ警備体制。
「そんなことより、宣伝効果は割とあると思うぞ。観客席から見てたが、客の反応良かったし、あの異能庁選抜チームに時間制限一杯まで戦わせたんだからな。他のチームは瞬殺だったのにな。これがどういう評価に繋がるか、お前も分かるだろ」
「そりゃそうですけど……」
宣伝で一番大事なのは記憶に残ること、言い換えれば、知名度を増やすことだ。試合に集中していて観客の反応を気にする余裕はなかったが、社長の話の内容なら効果はあったと考えていいだろう。
「ならこの話は終わりだ。そういえば、お前らメシは食ったか?色々持ってきたし、ここで試合観戦でもしようぜ」
社長がリュックサックから取り出したのは飲み物とつまみの数々。流石に飲み物はジュースだった。社長なら酒を持ってきてもおかしくは無かったが、千秋もいるし場所が場所だ。三回戦で脱落した俺達にもう出番はないが控室で酒はまずいと考えたのだろう。
控室に設置されているモニターには試合の様子が中継されている。現在準決勝第一試合。
「俺は寝ますので、終わったら起こしてくださいね」
「え、寝るの?」
千秋が問いかけてくる。
「性別を元に戻すのに、一回寝なきゃいけなんだよ」
「そんなすぐに戻せるもんなの?」
「いや、寝たら効率がいいだけ」
寝てた状態の方が活動してない分変化が速いのだ。
「じゃ、お休み」
と半ば強引に会話を終わらせ、眠りについた。




