三日月の共鳴、出陣③
控室に転移させられ、出番があるとまた転移。
第二試合の始まりである。
今回の作戦は俺が立案したものだ。
「《昼行燈》」
競技場が暗闇に包まれ、手元には宙に浮いた状態の行燈がある。
行燈の光は弱く、一メートル先を照らせるのがやっと。皆にも行燈が出現しているので、お互いの位置は把握できる。
そして目を凝らすと、遠くにぼんやりと球が見える。あれが相手側の行燈だ。
つまり、あれが相手側の位置である。
さて、準備は整った。
「それじゃあ手筈通りに」
そう言うと、皆はそれぞれの行燈を壊し、光が失われた。
「じゃあ行ってくるぜ」
暗闇から日鳥さんの声が聞こえ、その後から走る音が聞こえた。
さて、今回の作戦概要はこうだ。
まず、《昼行燈》を使い暗闇を作る。
《昼行燈》とは結界に分類される術式で、半径五十メートル範囲を対象に暗闇を作り出す。そして唯一の光源である行燈が出現し対象の周りに浮遊する。
この行燈は対象の一メートル以上離れないという特性を持ち、結界内部にいる人にしか見えない。外から見れば、暗闇さえも認識できていない。
また、この暗闇は概念結界の産物であるため、行燈以外の光源は認識できない。
さらにこの行燈には、くっつけると合体し光が強くなる。しかし行燈は割と脆く、合体の衝撃以外で壊れてしまう。
次に、行燈を壊す。そうなると今の俺達のように暗闇に囚われてしまうが、これは自分たちの居場所
を悟られないようにするため。
《昼行燈》の行燈は壊れると他の行燈の光が増すので、相手の位置を補足しやすくなるのも狙いだ。
そして最後。日鳥さんの《獣性取得》により、暗闇から奇襲を行う。
日鳥さんの異能なら暗闇でも行動できる。
例えば犬だったりコウモリだったりと、視覚に頼らない感知能力を持つ動物はいっぱいいる。これらを駆使し、暗闇からの奇襲を行う。
相手からすれば急に暗闇に包まれ、傍には謎の行燈が浮いている状態だ。しかも暗闇から奇襲となれば余程訓練された人でなければ混乱に陥る。
(そうきたか)
ここから光が一点に集まっていくのが見える。恐らく一塊になって身を守るつもりのようだ。思った以上に冷静な判断だ。
まあそんなものは日鳥さんには通用しないのだが。
「……! ──? ……──」
うまく聞き取れないが叫び声のようなものが聞こえ、行燈がすべて消えたことで《昼行燈》が解除される。
そしてものの数秒でブザーが鳴った。目的通り控えめにやったが、これ宣伝になっているんだろうか。
《昼行燈》の中にいない観客からしたら、相手側が何かよく分からない行動をして負けたように見えるだろう。
「……次は正攻法でやろう」
俺はそう誓うのであった。




