やりすぎたかもしれない⑤
……えーと、何だ。
君達、それで隠しているつもりなのか? 話丸聞こえだったけど。
けれども、そこはまるで聞こえていなかったように振る舞う。女系家族にありがちな《男は察しなければならない》という絶対的ルールが存在するからだ。これを破って余計なことを口走ると、そこにはもう悲惨な生活を送るハメになる。例え家長であっても。
とにかく、話から俺が女性に扮するための会議は金鈴から下着を受け取ったことで次の段階に移行したようだ。金鈴が会議を脱してご飯食べてるのがその証拠。
俺はソファから立ち上がり下着を部屋に置きに行った。もし秋奈と遭遇したら女性ものの下着を握った姿を見られ、変態の誹りを受けることは間違いないので音を立てずに、慎重にベッドに置き、掛け
布団で隠し何事もなかったようにリビングに戻る。
「透様!」
「うわっ」
その直後に夜鶴が詰め寄ってきた。
「最後にこれを」
「?」
夜鶴から受け取ったのは、彼女が愛用している黒のストッキング。
「透様、試合中は激しい運動が予測されます」
「うん、そうだろうね」
宣伝目的の試合とは言え本気で挑まねば目的を達成できないだろうしな。
「そして当日、透様はスカートを着用されます。そこまではいいでしょう」
「……要するに、このストッキングを履けと?」
「その通りです」
成程、確かにスカート着用したまま激しい運動をすれば中が見えるのは必須。そこでストッキングでガードすることによって一層女性らしさが増す、ということなのだろう。
「それはいいけど……一つ聞いていいか」
「何なりと」
「お前が履いてたストッキング、どこ行った?」
今の夜鶴はさっきとは違い生足だ。そして受け取ったこのストッキングは人肌レベルの温かさ。
「……透様のような勘のいい人は嫌いです」
「あっそ。じゃあ私も嫌いになるね」
にっこりと返す。
「嘘です透様! 一度言ってみたかったんですこの台詞! だから嫌いにならないでください!」
涙を浮かべてしがみつく夜鶴。
「ったく、しょうがないな。冗談だから離れなさい」
「じゃあ私のことが好きなんですね!」
うわめんどくさい。けど嫌いって言ったらさらにめんどくさいことになるだろうし。経験上。
仕方なく、他の式神に聞こえないように耳元に近づき、
「──好きだよ」
と囁いた。
赤の他人と比べれば。と比較対象を設け、さらにそれを最低ラインにすることで恥ずかしさを緩和す
る作戦を決行。ここで重要なのはその比較対象を口に出さないこと。
「っ!?」
夜鶴の白い肌が赤く染まる。
「さーて、ご飯食べるかー」
ストッキングに関しては俺も重要性を認めてしまったので、取り敢えず無造作にポケットイン。結
構膨らむなこれ。
そして食卓に向かう。
「夜鶴さん? どうしましたか?」
硬直した夜鶴に翡翠が声を掛けるが、夜鶴は全く反応しない。
「いただきまーす」
全く関係ないようにご飯を食べる。
夜鶴は数分したら元に戻って普通にご飯食べたよ。ちょっと上の空だったけど。
その後は割愛。それほど語ることもなく食べ終わって風呂入って寝たし。
風呂に関しては女体化が初めてではなかったので特に不都合なくスムーズに終わったし。
あ、エロいこととかしてないからな!




