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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第二章 祭りだわっしょい神遊祭!
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やりすぎたかもしれない②

式神トーナメントが終わった前日、すなわち神遊祭三日目の昼。俺は社長から呼び出されていた。



何でも、団体トーナメント戦に向けて決起集会をするらしく、今すぐ三日月の共鳴の二階に来いとのことだった。



 どうせ決起集会とか言って、ただ騒ぎたいだけなんだろう。と社長の性格から推察しつつ二階のオフィスのドアを開けると、既に他のメンバーが揃っていた。



 まずは社長。特に言うことなし。



 そして、スーツをきっちりと着こなした蜂蜜色の髪の女性。彼女が今回神遊祭に参加しようと決めた月島美里さん。



二児の母親なので、最近は在宅ワークで仕事をしている。そのためあまり事務所には顔を出さない。待機児童問題解決はよ。



そして月島さんを語るうえで欠かせないことがある。それは、彼女一人で三日月の共鳴の財務部門を引き受けていることだ。



三日月の共鳴の仕事は、メンバーそれぞれの持ち味を活かす方針のためにそれぞれできる仕事が違う。例えば俺は製造関係の仕事をメインでやっているし、社長は主に企業との商談や交渉事を担当している。言ってしまえば完全な分業スタイル。



が、それを可能としているのも月島さんの支えがあってこそ。故に月島さんには誰も逆らうことはできない。



とは言え、月島さんは特にあれこれと命令はしない。俺達のやりたいようにやらせてもらえている。昔はそうでもなく衝突していたこともあったけど(ほとんど社長と)、お子さんが生まれて少し丸くなった。今では社長を蹴り飛ばす程度で済んでいる。



 次にテーブルを挟み、俺から見て奥に立っている赤と白のスタンダード巫女服を着ている女性は野々花野乃花(ののはなののか)さん。



俺の二つ上の二五歳。濡れ羽色の長い髪の先端をピンクのリボンで結い、深紫色の瞳が特徴的な女性だ。名前は世襲制のもので、本名は別にある。



彼女も月島さんと同じく普段は事務所に顔を出すことはない。



彼女の場合は、実家の神社で巫女としての仕事をしている。巫女の方が副業としていて、今日はその帰りなのか巫女服を着ている。その神社は結構近所で、俺もよく暇なときの散歩コースの一部だったりする。



野乃花さんの仕事は主に心霊、特に悪霊に関する依頼を請け負っている。いわゆる霊媒師だ。



霊媒師としての野乃花さんの腕は超一流。どんな悪霊でも昇天させてしまうことから、全国各地からの依頼も多いのも事務所にいないことに拍車をかけている。その度に行った先のお土産を買ってきてくれる。



その隣にいる若葉色の髪と蜜柑色の瞳、そして小柄な男性は日(ひ)鳥(どり)直和(なおかず)さん。

この中で一番ちっちゃいが二九歳。俺より六歳年上。獣医として活躍し、その腕はまさに神業と称されるほど。動物番組にもVTRで出たことがある。



身長がコンプレックスで、何とかごまかそうと態度はデカいため、元々勤務していた動物病院の院長と喧嘩同然で退社し、そこを社長がスカウトしたのだとか。



俺との共通点は人間が苦手なこと。ただ、ベクトルはちょっと違うようだ。



 最後。俺との距離が一番近い位置にいたのは三善千秋。この中では最年少。



鼠色の髪に宗伝唐茶の瞳が特徴的。光明のようにボーイッシュな雰囲気がある。



っと、今は光明の話じゃない。千秋の紹介だ。



千秋はこの中で一番年下の一八歳。例に漏れず千秋も事務所に顔を出すことはない。じゃあ何をしているのかと言うと、家に引きこもっている。今日は珍しく来てるけど。



 千秋の仕事は《探偵》だ。千秋の異能特性は《俯瞰》で、ありとあらゆる場所・視点から物事を見る異能を持つ。



それを活かして浮気現場を押さえることが得意。探し物も得意なので、探偵としての腕はかなりある。家から出ないのは異能の条件が特殊で、室内などの密閉された空間でないと上手く扱えないから。



と、一点特化型の異能者が集まってできた会社が《三日月の共鳴》な訳で。そんな人たちの俺を見る目が初対面の人に会ったような感じなのは、ちょっといかがなものか。



いくら顔を合わせる機会が限りなくゼロに近いからといっても、創業時メンバーの顔を忘れるのは、あまりにも酷じゃあないですかね?



「えーと、依頼者の方ですか? すいません、今日は臨時休業でまた後日改めてという形になってしまうのですが……」



社長が接客スタイルになっている。いや、あんたは気づけよ!



 ……ってああ、忘れてた。今はちょっと違うんだっけ。



「いや社長、俺です。鳴神透です」



「いやいや、何言ってんですか。鳴神は男ですよ? 貴女、女性でしょう?」



 今は女性体の方だった。しかも皆には初お披露目。



「いや待て社長、コイツの匂いは鳴神のものだ」



 日鳥さんが気づいてくれた。



 日鳥さんの異能《獣性取得(ビーストソウル)》は動物の能力をコピーできる異能を持つ。それで嗅覚の言い、例えば犬みたいな動物の能力をコピーしたんだろう。



「よく見れば顔は透くんそっくりだね」



野々花さんが顔を近づけて俺を見てくる。野々花さん美人だからちょっと緊張する。童貞だからね、

仕方ないね。



「そうですね。声も女性そのものですが、鳴神さんで間違いないのでは?」



さらに月島さんの後押し。



「でもさ、なんで透女装してんの?」



その質問は来ると思っていたが、千秋が言うか。お前分かって言ってんだろその顔。



「主に月島さんのせいですかね」



「え、私?」



「神遊祭に出るなんて言い出さなかったら、創造神の現人神の力使ってまで女性体になりませんよ」



「……お前、そこまでして人前に出るの嫌だったのか」



 日鳥さんが哀れみの目でこちらを見てくる。そこから各自の反応を見てみよう。



「まあお前の過去からすればそうなるのは理解できるが……」



 社長は納得し、



「えっと、ごめんなさい」



 月島さんには謝られ、



「可愛いからいいんじゃない?」



「僕も良いと思う!」



 野乃花さんと千秋は好意的だった。



「今の俺──じゃなくて、私のことは《逆神(さかがみ)澪(みお)》と呼んでくれ」



慣れてもらうために《逆神澪》になりきる。イメージとしては武士娘。丁度長いポニーテール(翡翠製作)なので分かりやすいんじゃないかな。



まだ完璧に女性体へ移行していないが、明日には遺伝子レベルの女性体になる。俺の正体が明るみに出ることはないだろう。



 そんなこんなで、動揺が走ったようだがつつがなく決起集会という飲み会は終わった。


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