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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第二章 祭りだわっしょい神遊祭!
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式神タッグバトル④

ここでお知らせです。二回戦、準決勝戦共に見どころが少なかったのでダイジェストでお送りいたします。



まずは二回戦。相手は吸血鬼だった。そのくせ太陽に強いというアイデンティティの放棄した吸血鬼のプライドのない奴だったが、意外なことに弱かった。



攻撃手段が噛みつきしかないというレベル一のモンスターだった。ただの噛みつきでは《暗黒鎧衣》を貫通することはできない。



それに《暗黒鎧衣》には衣服だけでなく装備者の全身をコーティングして守るという機能があるので、人間の弱点の一つである首にも噛みつけなかったのは、何だかいたたまれなかったので、手刀で倒した。



主も黒鋼が盾をぶつけて勝っちゃった。どうやって一回戦勝ったのか不思議でならない。賄賂でも送ったんかね?



そして準決勝の相手は巨大な蛇。サイズは一回戦で戦ったキマイラを遥かに凌ぐ。多分十メートルぐらいはあったんじゃないかな。



で、どうやってそんな奴を倒せたかと言うと、主が蛇の攻撃に巻き込まれて退場した。基本式神は主から呪力供給を受けているので、主が倒れると式神の力もグンと落ちる。そんな状態の式神に負ける道理がない。



そんな感じで二勝を挙げた。キマイラよりも勝つのが早かった。瞬殺って言葉が人生の中で一番しっくりくる。ぶっちゃけ魔物を相手にするよりも楽だった。



 しかし、次の相手はそうはいかない。何せ陰陽道の大元、日本における式神という概念を定着させた土御門が相手だ。



しかもその式神は幻獣の格上の《神獣》であり、土御門家の守護四神の一角の《白虎》。今までの相手とは比べ物にならない程強い。現に今までの戦いでは瞬殺だった。



 それもあり、まだまだ情報が無く実力が未知数。絶対に気を抜いてはいけない。



 その相手が、いま目の前にいるけども。



『さあ神遊祭二日目、式神トーナメントもいよいよ決勝戦! ここに立つのは最強を決める式神術師! 剣の式神を携え、並居る強敵を打倒した黒鋼直人!』



『倒したのは式神の方ですけどね』



『対するは、その力、まさに最強! 神獣《白虎》の猛威は、この頂きに君臨するのか! 陰陽道大元、土御門美鶴!』



『強大な力で何もかもを捻じ伏せてきました。今回もそうなるのでしょうか? とても楽しみです』



 おい解説、俺たちと相手側で扱い違くない? やっぱ名家だからか? でも、そんな不満を言っても仕方ない。その扱いが間違ってることを証明してやるよ。俺はともかく、黒鋼のぞんざいに扱った

こと、後悔させてやる。絶対に。



「それでは、決勝戦を開始します!」



 審判の声で試合が始まる。しかしお互い警戒を張っていて、動こうとはしない。こちらとしてはすぐにでも動きたいのだが、相手の手の内がはっきりしていないので手を出せずにいる。



 それは向こうも同じようで、こちらの様子を探っているように見えた。



 普段なら問題はなく、持久戦に持ち込むところだがこれは試合。時間制限もあるし、なにより観客が飽きる。神遊祭は異能者のことをよく知ってもらうという理念があるから、そんなことはさせられない。



 つまり、動くしかない。



(《無限を以って 我の敵 障害を断ち切れ!》)



《久遠》を抜き、心の中で呪文詠唱をして《久遠》を十本増やした。



 先手必勝、とはいかないまでも牽制程度にはなるだろう。



(《──無限豪雨!》)



 俺の頭上に展開した《久遠》を打ち出す。狙いは土御門。女性だけども遠慮なく討たせてもらう。やはり式神術師を倒すのが楽だからな!



「白虎!」



「了解」 



《久遠》の軌道上に白虎が間に入りこんできた。



「グルアアアアアアア!」



 白虎の咆哮で《久遠》が全て弾き飛ばされた。というか喋れたんかいお前。



 それよりも、呪力も何もない純粋な咆哮だけで《久遠》は弾かれた。こうもあっさりと攻略されるとは。



(黒鋼、盾だけじゃだめだ。剣も出しとけ)



(了解だ)



 黒鋼が盾と剣を召喚した。盾は相変わらずの《大盾の防壁》。剣の方は《(ごう)(わん)大剣(たいけん)》という、超重量系の黒い大剣だ。人の身で持つことはできない程重く、切れ味も名刀を超える。いくら神獣でもこれを防ぐのは至難の技だろう。



向こうも同じような考えらしく、土御門の前に白虎が立ち構える。主を守るためだ。

だが、それは俺達を白虎だけで相手をするということだ。よっぽど自信があるのか、それとも信頼しているのか、それは定かではない。



しかし、白虎を倒さなければならないことは揺るがない事実。そして、《久遠》の《無限豪雨》は効かないことも。



ならば、ちょっとやり方を変えればいい。真正面が駄目なら、搦め手を使うまで。



 黒鋼が《大盾の防壁》と《剛腕の大剣》を構えて突撃する。見るからに重そうな装備なのにそのスピードは十分に速い。そのスピードを生かし《剛腕の大剣》を振るう。



ガッギイイイイイイイイン!



白虎は避けることもなくその身体で受け止めるが、見た目と反したまるで金属音のような甲高い音が会場に響き渡る。



「なっ……」



 黒鋼の表情が驚きに満ちる。白虎に大剣を受け止められたのもそうだが、微動だにせず、しかもダメージが入っているようにも見えない。



 そんな白虎が、右前足を振るう。その先端には、太陽光を反射し光輝いている大きな爪が黒鋼に襲い掛かろうとしていた。



「くっ……」



苦悶の表情を浮かべながらも、《大盾の防壁》で防ぐ。が、勢いは防ぎきれず後方へ少し浮いた状態で飛ばされる。



 ズザザザザザザザッ!



 踏ん張って持ちこたえたが、黒鋼は脂汗を掻いている。今の一撃で体力ごっそり持っていかれたっぽい。



(黒鋼、無事か?)



(問題ないが、あれは中々に厄介だぞ。拙者の攻撃が通らなかった)



(ああ、そのようだな)



 式神の中でも割と上位に食い込む黒鋼の攻撃が通じないとなると……それと白虎の能力は見た限りだと《硬化》か? だが黒鋼の攻撃を素の硬度を上げる《硬化》の異能で防げるものなのか?

 ……ちょっと試してみるか。



 黒鋼に意識が向いているうちに確認も済ませたことだし。



(《──無限豪雨》)



 白虎が咆哮で吹き飛ばした《久遠》が勢いよく白虎に降りかかる。突然の襲撃で土御門も白虎も不意を突かれた様子だ。



 複製した《久遠》は消えずに残る。



そして残った《久遠》は俺の意思で自在に動く。勘違いされやすいが、《久遠》は対群体用呪具ではなく奇襲用呪具だ。



 そんなつもりで放った《久遠》だが、またもや白虎に弾かれた。今度は尻尾ではじいたところを見ると、全身が硬化対象のようだ。



ついでに《久遠》には遠隔操作で術式を付与できるため《強化》の術式を付与していたのだが、尻尾に刺さらなかったということは、《強化》の術式を超える硬度だということ。《強化》は岩盤を貫くために開発した術式で、ある一つだけ、貫通できないものがある。



 それは──



(黒鋼、お前は引け)



(何だと? それはどういう意味だ)



(お前と白虎とは相性が悪い。あいつの硬化はただの硬化じゃない、《金属硬化》だ)



《強化》のような汎用型の術式では太刀打ちできない硬さ。単純な肉体強化によるものではなくもっと無駄を削ぎ落したような感じの強化だ。



 加えて《久遠》の攻撃を防いだことと、黒鋼の攻撃すら防いだこと。思いつくのは詩人の肉体を金属のように固くする《金属硬化》か、《概念防御》だろう。可能性が高いのはポピュラーな《金属硬化》だと思うが。



もしあれを突破しようとするなら、他の術式を重ね掛けさせるしかない。



だが《久遠》には一種類しか付与できないので、実質《久遠》は使い物にならないということが証明されてしまった。



(対人戦特化のお前には相性が悪い。現にお前の攻撃は防がれただろ)



厳密にはお互いに決め手がないと言ったところだが、黒鋼を引かせるためにはこれぐらいはっきりとさせた方が効果的だ。



(分かった。が、決め手はあるのか)



(もちろん用意してある。使うとは思ってなかったけどな)



(そうか。ならばこちらからは何も言うことはない。健闘を祈る)



(おうよ)



 黒鋼が俺の後ろに下がる。その行動を見て白虎と土御門が警戒している。《久遠》の能力も判明してしまったので周囲に転がっている《久遠》にも警戒している。まあ当然か。



 だが、それだけを警戒し、こちらにはしていない。俺の武器は《久遠》だけじゃない。



 俺は《久遠》をすべて回収する。すると驚いた様子で白虎と土御門がこちらを見る。



 傍から見れば武器を放棄したように見えるからな。仕方あるまい。



 どうやら《久遠》のインパクトが強すぎて、俺の腰にある妖刀の存在をみんな忘れているんじゃないか?



 俺は腰の赤い刀に手を伸ばす。そして抜刀した。何から何まで赤い刀は、太陽に照らされ赤く光る。



 この妖刀の銘は《融緋》。どのような力があるのかは、実際にご覧頂こう。



 俺は色んな意味で有名な左片手一本突きの構えに入る。



その間にも、白虎がこちらに向かって走り出していた。表情が変わらないので読みにくいが、何か危険を感じ取り対処しようと焦っているように見えた。



 だが、それは愚策もいいところだ。わざわざ間合いに入っているのだから。白虎の装甲の堅さには及ばないとでも考えたのかな?



 でも残念。この《融緋》には硬度は関係ない。



《融緋》に呪力を流し込むと、元々赤かった刀身がさらに赤くなり熱を発し始める。



その熱は自然法則を無視して《融緋》に留まり続ける。それを見た白虎は踵を返そうとしたが、もう遅い。



放たれた刺突は、方向転換しようとする白虎の眉間に突き刺さる。



「グアアアアアッ!?」



叫ぶ白虎。それとほぼ同時に白虎の身体が燃え盛る。白虎は何とかしようともがいていたが、健闘むなしく燃え──煙のように消えた。



ふっ、勝ったな。思った通り物質的な硬化で良かったぜ。



《融緋》の持つ異能は《熔解》。呪力を熱に変換する異能であり、最高温度はざっと四千度になる。



《紅蓮十牙》はそれを利用して対象を熔かす。つまり、《融緋》は斬るための刀じゃなく熔かし斬るための刀だ



しかしそれだと《融緋》は大丈夫なのかと思うかもしれないが、大丈夫。



理由としては、これを造った異能《異能工房》は呪具を造る際に適切な物質を作り出すという副産物的効果がある。



要するに、新物質を創り出すのだ。



 これがあるからこんなに情報封鎖しているのだ。世界変えれるどころの話じゃないので、絶対に身柄が狙われる。



そんな心の叫びはともかく、白虎を倒したわけだ。土御門を見ると、向こうは信じられないような目で見ていた。



そりゃ普通は神獣が倒されるとは思わないだろう。俺も倒せる自信はなかったし。けど、思っていたよりも神獣としての白虎が弱かった。あれのニ~三倍は覚悟してたんだけどな。もしかして、主の力がまだ不十分だったとか? 見たところまだ若いし、実力が付いていないことに違和感はない。



もし本当にそうなのであれば……頑張れ、としか言いようがないな。



「お前はどうする。まだ戦うか?」



 黒鋼が土御門に問うと、ブンブンと首を振った。賢明な判断だと思う。俺も同じ立場だったら絶対

逃げる。



「土御門選手がリタイアしましたので勝者、黒鋼直人選手!」



 ワアアアアアアッ! と歓声と共に、バシュ! と打ち上げられる金色の紙吹雪。うわー掃除大変そう。



 ともかく式神トーナメントで優勝でき、七瀬さんからの依頼も達成できたことになる。残る仕事と言えば、表彰式で黒鋼がトロフィーを受け取るだけ。つまり俺の仕事はない。



(それじゃ黒鋼、あとは任せた。インタビューとか来たら適当にあしらっていいぞ)



(了解した。主殿は休んでおくと良い)



(はいよ)



 これからの打ち合わせをして、俺は控室に逆召喚される形で控室に戻った。

 


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