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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第一章 ようこそ風魔の里へ
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ボロボロの帰還①

「あー疲れた……」



何とかドラゴンを足止めした俺は、夕日に照らされたボロボロの姿で家に帰った。



ったく、対魔部隊が遅すぎるんだよ。後もう少し遅かったら《神格刻印》まで使うところだったぞ……。仕事前にあれ使いたくないから、その点で言えば助かったかもしれないが。使用後の疲労凄いもんねあれ。



「ただいまー」



 くたびれた身体で玄関のドアを開ける。



 ……見慣れない靴がある。いや、どっかで……?



 あ、これ風魔の靴だ。夜鶴が連れてきたのか。確かに、安全な場所だな。



「おや、随分とボロボロだね」



「紫苑が出迎えるなんて珍しいな」



 廊下からやってきた白衣姿に泣きほくろ、眼鏡を掛けた紫髪の女性。式神の一人、紫苑だ。



「まあね。話は夜鶴君から聞いているよ。ドラゴンと戦ったそうだね?」



 眼鏡をクイッと上にあげ、興味がありそうな表情をする。



「ああ。何とか生き延びたよ」



「……そうかい。お疲れ様」



 それだけ言って、紫苑は白衣を翻して去っていった。



「……何か用事があったんじゃないのか?」



 紫苑がわざわざ出迎えに来るから、何かあるんじゃないかと思っていたが。



そうじゃないと自分の興味のあることしかしない紫苑がこんなことするか?



……あ、ドラゴンの魔石目当てだったのかな。俺がドラゴンを斃して戦利品として持ち帰っていることを想定してたとか。



で、その目論見が外れて大人しく戻ったと。そう考えれば納得は行くな。ドラゴンの魔石となれば希少価値はものすごい高い。研究材料としても文句なしの一品だ。



薬物のスペシャリストの紫苑では研究ジャンルが違うが、それでも持っておいて損はないだろうしな。ドラゴンの魔石とか、俺も喉から手が出るほど欲しい。



「まあいいか」



 だがそれは机上の空論に終わっている。今は身体を休めることが最優先だ。



 靴を脱ぎ、二階の自室に行って着替え一式を取り、風呂場に向かう。



 俺の式神の一人に風呂好きがいるから、二十四時間年中無休で風呂が沸いている。



家主は俺だが、風呂に関してはその式神に全権を任せている。そのせいか、風呂場が温泉旅館並みに豪華だったりする。まあ、改装したのは俺なんだけど。



 だから入れる……と短絡的に考えて、風呂場のドアを疲れていてやるのが面倒になったノックもせずに開けた。



「お、透じゃん。お疲れー」



 全裸の金髪幼女が、首からバスタオルを下げていた。



「てか、ノックぐらいしろよなー」



「ああ、すまん。疲れてて……」



 この幼女が金鈴(かりん)。件の風呂好きの式神だ。



 風呂上りとあって、長い癖っ毛の金髪が、水滴を纏い反射しキラキラと輝いている。



「あーうん。夜鶴から聞いてる。ホント大変だったねえ」



「ああ、うん」



「生返事ばっかりか……呪力が足りないか《天道印》と《地動紋》の使い過ぎで身体に負荷が掛かり過ぎたかな?」



 《天道印》と《地道紋》とは、俺が創った白と黒の指抜きグローブのことだ。



 《天道印》が白で手の甲に五芒星があり《地道紋》がその逆、黒くて手の甲に白の五芒星が描かれている。



 用途は呪力補給。霊力を吸い上げ呪力に変換する機能がある。これがあるおかげで、呪力が足りなくて使えない呪具も使えるようになる。



 ただ、これらは回復アイテムなので、出力が変わるわけでは無い。その辺は《天輪》と《十二枚刃》で調整したから、ドラゴンを何とか足止めできたわけだ。普段の俺だったら一人では絶対に無理だ。勝てるかあんなの。



「……多分両方だと思うぞ」



 二つの問題を解決するには、今目の前にいる金鈴が作った風呂だ。ここで使っている水は水道から持ってきたものじゃなく、金鈴と紫苑が自作した水で出来ていて、このお湯は浸かった人の症状に合わせて効能が決まる特殊な水だ。



 例えば、肩こりの人と腰痛持ちの人が同時にこの風呂へ入ったら、肩こりの人は肩こりが、腰痛持ちの人が入ったら腰痛が改善される。



 対象の症状によって効能が変わる。そういう魔可不思議成分が、この風呂の特徴だ。

 脱衣所も凝っており、見た目だけは温泉旅館みたいな作りだ。ロッカーみたいなのは無く、籠に入れるスタイルだけど。



 ここまで拘ったせいで、隣の部屋一つ改築することになった。そこまでやるかと最初は思ったが、やってみると結構楽しかった。



「そう、なら早く入りなよ。先客いるけど」



「……先客?」



 待て、この家俺以外に男がいないんだけど……?



 そう思い籠を見ると、確かに衣類がある。てっきり金鈴のものかと思っていたが、よく見ればもう二つあるじゃないか!



 一目散に立ち去ろうとしたが、非情にも風呂場のドアが開き──



 素っ裸の風魔が出てきた。



「…………」



「大丈夫見てないから」



 服で目を覆っているが、実は一瞬だけ見えました。桜色の突起物とか、割れ目とか。



 何故疲れているのにこういうのに反応してしまうのか。



 その疑問は、絶叫の中では解決できないらしい。


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