式神タッグバトル①
神遊祭二日目。
参加手続きを終えた俺は、黒鋼と共に控室で出番を待っていた。
俺はいつもの《暗黒鎧衣》と《天道印・地道紋》を装着。
そして忘れてはいけないのが銀華から借り既に装着している狐の面。
実はこれも呪具らしく、物理的防御力が高く、その上、呪的防御によりさらに防御力を上げることができるという。誰が造ったかは銀華も知らず、気が付いたら持っていたらしい。俺から見てもいい仕事をしている。デザインもいいしな。
本当に危険な時のフル装備だ。
そして俺と黒鋼しかいない控室からでも観客の声援や実況の声が熱意を乗せて響いてくる。今は他の選手の試合の最中だ。これが終わると次は俺たちの出番になる。
「白熱してるな」
二人しかいない控室で呟く。
「ある──いや、透だったな。緊張しているのか?」
「多少はね。あんな人前に出ることなんて滅多にあるもんじゃないし」
今までできるだけ人目に付かないように生きてきた俺には辛い。
「心配はいらない。透を馬鹿にする輩は拙者が討ち果たそう」
「いやそこまでしなくていいからね?」
思わず苦笑いしてしまう。黒鋼は忠義者で真面目だけど、天然で加減を知らないんだよな。
「……ありがとう。ちょっと元気出た」
「そうか。なら良い」
会話が終わり、再び観客の歓声が控室を支配する。
黒鋼が精神統一に入ったので、会話ができない。いや、精神統一してなくても会話のネタがないか
らできないんだが。
試合もまだなので、今一度試合の概要を確認しよう。
式神トーナメントは十六人の参加者がいる。つまり、優勝するには四勝すればいい。
そして、戦闘は予め登録された式神とその主の二人で戦う。俺が相方に黒鋼を選んだのはそれが大きい。黒鋼は接近戦タイプで、人の枠を超えない超人的な強さなのでカモフラージュには丁度いいのだ。
何より男性体だしな。女性体の式神だと、傍から見れば男性体の式神を連れていることになるので……風評被害が心配だ。
企画段階では式神同士で戦わせるものだったが、七瀬さんが強権を使いルールを変えたそうだ。これで式神を奴隷のように戦わせることは回避できたということだ。
式神自慢をしたいだけのお偉いさんには痛い話だろうよ。反撃したくても七瀬さんを引き摺り落とすには一人では無理だ。複数人で道連れを覚悟しなきゃ失脚はできんだろうよ。あの人知られたくないことまで知ってるしなあ……。かくいう俺もその一人な訳だけど。
……もしかしたら、これで俺が負けたら赤っ恥を掻かせられるかもしれない。一応七瀬さんの推薦として出てるんだし。
これは負けたら七瀬さんのメンツに関わるな。よし、気合入れて行こう。
話が脱線してしまったので元に戻そう。
試合の制限時間は十分で、もし時間内に決着が付かなかった場合は残りの体力を二人分合計して多かった方が勝利となる。もちろん、時間内に相手二人の体力を全部削り切ったら勝ちとなる。
これがルールの概要。複雑ではなく、むしろシンプルなものだ。分かりやすくていい。観客も昨日の神経をすり減らすような試合ではなく、こういったものの方がスッキリしている分楽しめるだろう。
「黒鋼直人さん、準備をお願いします」
コンコン、とノックをして運営スタッフの制服を着た男性が控室に入ってきた。
しかし、黒鋼は精神統一が終わっておらず、全く反応しない。
「主、出番のようです」
黒鋼に声を掛けて精神統一を止めさせる。
「……ああ、すまない。すぐに行こう」
「では、よろしくお願いします」
黒鋼は男性スタッフと共に控室を出る。黒鋼だけなのは、試合の前に式神を召喚しなければならないルールがあるからだ。その理由はちゃんと式神かどうかを判断するためらしい。
式神が主を召喚するという変な形になるが、俺の開発した術式の中には式神専用の逆召喚の術式がある。うちの式神には全員使えるようにしてあるこれがあるから、他の人からは主が式神を召喚ように見えるだろう。
──話は変わるが、スタッフが呼びに来たということは、そろそろ試合が始まるということ。なのでより式神らしく見せるための準備をしよう。
「《《対魔装填 害成す者よ 我の前に姿現すのは、必滅と知れ ──剣戟乱舞》」
呪文詠唱により高まった呪力が、身体から溢れ出し控室を光に包む。そして、光が収まることで召喚は完了する。
腰に二対の刀、背には大剣を背負う形になったこれは、俺の造った妖刀と魔剣。この刀剣は《剣戟乱舞シリーズ》と呼んでいる。
今の俺は、右腰に白・紫の妖刀、左腰に赤・緑の妖刀を携え、背中に金の魔剣を背負っている。この状態になった理由は、これだけ刀剣持ってたら不自然だから。この不自然さで式神であることを強調したい。上手くいくかは分からんけど。
というコンセプトなので、今回は他の呪具を使わない。《絶対王制》も《十二枚刃》、《金剛千手》、《三千世界》禁止。もちろん呪具も。
さらに! 術式も禁止としている。俺としては大分手加減している方だ。俺の本来の戦い方は小細工と物量で押し切るタイプだからね!
「──おっ、出番か」
身体が淡く光り出す。召喚しようとしている証拠だ。
俺が式神を召喚しようとすると一瞬で召喚されるので、召喚する前に念話で確認を取ってから召喚している。着替え中に召喚とかしたら大変だからな。
(さて、式神らしくできるかな……?)
上手くできるか一抹の不安を抱えながら、俺の身体は眩い光に包まれ競技場に召喚され──




