神遊祭前日①
2018年12月23日現在、気が付いたらアクセス数300超えてました。読者の皆様、ありがとうございます!
奴と遭遇した次の日、俺は神遊祭の会場に来ていた。この会場は保障局と異能庁、そして国立異能科学研究所、通称異科研が共同所有する施設だ。
今日は《三日月の共鳴》の鳴神透として仕事に来た。内容は結界を張ること。その結界は《決戦遊戯》。要するに神遊祭へ向けての設営である。
「あの、三日月の共鳴の鳴神透です」
「あー、はい。聞いておりますよ。どうぞ」
受付を通り、会場の中を進む。前日とあってか、人の往来が多い。
作業中の人たちの邪魔をしないように通り抜け、集合場所の事務所に入る。そこには既に先客がいた。二人とも女性で、一方が白衣、もう一方が対魔部隊の制服を着ていた。
「二人ともお久しぶりです」
「あっ、先輩!」
「遅かったじゃないか」
「いや時間ぴったりですけど」
「私は三十分前から来ていたぞ?」
「それはそっちが早すぎただけです」
と、雑談を交わす。
先程俺に先輩と言った空色の髪でボブカット、紺青の虹彩を持つ女性は山岸初音。俺が対魔部隊に駆り出されていた頃の後輩であり、現在対魔部隊の総隊長を務めている若きエース。
それだけでなく、彼女は俺と同じく現人神で、時空神の神格を持つ。しかも彼女は俺と同じく《信仰》でもなく、《任命》でもなく、《偉業》によって現人神になった逸材であり、現人神としては格が高い。
山岸が現人神になったのは俺より後なので、二重の意味で後輩である。歳が俺の一つ上の人に先輩と言われるのは何とも歯がゆいものがあるけど。
そしてもう一人の白衣を着た長身で烏羽色のソフト刈り上げショートボブ、鉄色の眼鏡を掛けた女性は白石雪路。男口調が特徴で異科研所属の研究者で専門は異能法則学。
異能法則学とは、異能を解析する学問。この世界における異能がどのように成立するのかを探求する分野。彼女は主に呪力属性を扱っている。
俺が術式を作る際に協力してくれた一人であり、本来であれば術式は三日月の共鳴と異科研の共同制作になるはずだったのだが、俺が異能でこの分野のことを弄ってしまった結果、術式の骨格や理論は全部俺が創ってしまった。
いや、作り変えてしまったため、実質三日月の共鳴単独で製作したことになっている。
そのせいで、俺は雪路さんには罪悪感があるいるのだが、当の本人はそんなこと全く気にしておらず、むしろ弄ったことに強い好奇心を持ってしまったようで色々とめんどくさいことになっているのだが、前述の通り罪悪感を覚えているので強く出られない。
そんな雪路さんは異能者であるのだが、具体的にどういったものかは教えてくれなかった。
まあ、今の情報社会において自身の異能を知られるのはとても危険なことだ。武器を大っぴらに見せびらかして、対策を取られてしまい自分の首を絞める、なんてことはざらにある。俺も自分の異能を説明したりするが、実際に人見せないようにはしてるし。
「それじゃ、先輩も来ましたし打ち合わせしましょうか」
「そうだな。時間は有限だ」
話に区切りをつけて打ち合わせを始める。
と言っても、各々の仕事内容を確認するだけなのだが。
「じゃあ、私が結界を張り、先輩がそれを術式で補強、白石さんが調整ということでいいですか?」
山岸の司会で話は進む。
「ああ」
雪路さんは淡々と返事をする。あまり興味がなさそうだ。
「問題ないな」
一方で俺も普通に返す。
「じゃあ早速始めちゃいましょうか」
俺たちは事務所から出て競技会場に行く。
「相変わらずデカいな」
「変わってたら大問題だ」
「そりゃそうだ」
また軽い雑談を交わす。
「じゃあ、結界張りますね」
よっと、と言った軽い感じで結界が展開される。山岸が展開した結界は、術式や異能とは違い、呪
力で構成されたものではなく、空間をまるで紙のように丸めて加工したものだ。空間を歪曲させて作られているため起点も呪力線もない。
そのため普通の結界とは強度が段違いに高い。さらに、この結界の凄い所は普通の結界は壁のように境界を区切り、そこに外からの攻撃を防ぐが、山岸のは空間を曲げているために攻撃が逸れる。
これを攻略するには物理的な攻撃は意味がないので、歪曲した空間を元に戻すのだが、そもそもそんなことが難しい。正に神業と言うしかない。俺でもできるかどうか。
ただ、空間を曲げているため光も曲がり、境界線が歪んで見えるので結界の規模は分かる。
「次は俺だな」
俺の仕事は、山岸の張った結界内に、《決闘遊戯》の術式を付与することだ。こうしないと結界内の安全が保てない。山岸は時空神であるが、空間内の法則を弄ることはできない。それ以外の空間系のことなら易々とこなすけど。
《決闘遊戯》の術式は複数の術式の組み合わせで出来ている。
例えば、空間内の人間の能力を数値化する術式。さらに余分なダメージを外に影響がないよう調整し吐き出す術式等、様々な術式を発動し、それらが互いの効果によってエラーを起こさないように組み立てる緻密な作業が必要とされる。向き不向きが出る作業である。
作業すること三時間。まだ五月だというのに汗が出る。
「……っよし、組み立て完了。雪路さん、あとは任せる」
「よし来た」
術式の組み立てが終わり、雪路さんの作業が始まる。
雪路さんの仕事は、山岸の結界と、俺が組み立てた《決戦遊戯》の術式の維持・調整である。
具体的には、山岸の結界の維持と術式を発動させるための呪力を、電力を呪力に変換する装置を用いて必要な呪力を賄うことであり、その操作が雪路さんの仕事だ。
この装置は異科研で作られたもので、その技術は門外不出。俺も作ることができない。特許料億単位だからね。
異科研でも使える権限がある人は一握りらしく、その内の一人が雪路さんなのだ。これを扱えるっ
てことは異科研で相当の役職に就いているということだが、雪路さんの役職を俺は知らない。初めて
会った時に教えてくれず、そのままになっている。
謎多き女性である。
「出来た。試運転するから二人とも」
「はい」
「思ったより早かったな」
俺と山岸が結界内に入る。何の抵抗もなく入れたのは、結界の支配権を装置に譲渡できている証拠だ。
「次、術式を展開する」
装置が《決戦遊戯》の術式が発動し、競技場の大型映像装置に俺と山岸の情報が映し出される。ここまでは問題ない。
「雪路さん、どうですか」
「心配するな、術式は安定している。早速試合を頼む」
そう、ここからが本番。実際に結界内で戦って不具合が起きないか調べる。現人神同士が戦って何も
問題が無ければ、本番でも心配ない。
ブオオオオオオオオッ!
試合開始のホイッスルが鳴る。
「行きますよ先輩! 久々の全力です!」
やたら気合が入ってる。
「仕事のストレス、発散じゃああああ!」
何があったかは分からないが、仕事で嫌なことがあったんだな。ストレス耐性が付いていないようだ。
分かるぞ。まだ二十代だもんな。それで総隊長だもんな。そりゃストレス溜まるわ。発散しようにも、山岸は戦闘でストレス発散するタイプだから、現人神が無暗に戦闘する訳にもいかないもんな。
そんなストレスフル充電の山岸は、左手で弓を構え、右手で矢を引くような動きをする。
「やべっ」
「《空間衝撃波》っ!」
山岸が右手を離すのと、俺がその場を離れるのは同時だった。
「……あっぶねえ」
俺がさっきまで立っていた地面に切断痕があった。それは山岸から結界まで線を描いている。
初めて見る技だが、この切断痕と異能の名前、あと山岸の挙動と異能から考えると、多分空間を使
って刃上の何かを放っている。少なくとも空間系の異能であることは間違いない。いきなり初見殺しをしてきたぞこいつ。
だとすると、物理的防御は無視されるな。空間系の強みの一つに、空間的攻撃は空間的防御でしか防げない、という性質がある。大地の上にある以上、その上にある建造物が地震から逃れられないように、空間上にあるものはすべて空間の影響化にある。
厄介なのは地震とは違い攻撃に対する防御や知覚が一切できないことだ。
俺があの攻撃を躱すことができたのは、山岸のモーションに危機感を覚え、身体が勝手に動いたからだ。
もし反応できなかったら今頃右半身と左半身がさよならしていた。
というか、あいつの得意戦法は空間転移による奇襲じゃなかったか。あんな遠距離技を習得しているとは。侮れないな、認識を改めよう。
「おい山岸! お前殺す気かよ!」
「殺しても死なない人が何言ってんですか! というかそれも実験の内です!」
俺の内情を知ってる人には、どうやら殺しても死なないという共通認識を持ってるらしいな。それ間
違いだから。死ぬときには死ぬから。
それはともかく、確かに《決闘遊戯》の術式の一つに、致死量のダメージを受けると自動的に治癒された上で結界外に排出されるものを組み込んだ。それがうまく作動しないとなれば、安全上もう一度
術式を組み直さなければならない。
「それとこれとは話が別だ!」
だからと言って身体を半分にしたい訳ないだろうが! それにこの術式には《一定量のダメージを受けると治癒して排出される》効果があるから実際に死ななくてもいいんだよ。
さらに言えば、確かに俺は創造神の力で身体が欠損しても他の物質を変換して修復できるが、痛みが消える訳じゃねえ!
「ほら、行きますよっ!」
心の中で文句を叫び散らしている間に山岸がさっきと同じ技を繰り出してくる。だが、一々弓を引くような動作が必要らしく、連射はできないようだ。
攻撃するためにその合間に距離を詰めていくが、その分攻撃の間隔が短くなっていく。
「ちょっと、当たって下さいよ!」
「嫌だって言ってんだろ!」
言い合っている間にも、俺は攻撃の準備をする。
そして、有効範囲に入った。
「《煉獄》!」
溜めた呪力を術式に流す。
そうして発動した術式の名は《煉獄》。これは呪力や霊力といった呪的エネルギーだけを燃やす白い
炎を広範囲に撒き散らす高難易度の術式だ。呪力消費が高いのが欠点だが、効果は抜群。
本来《煉獄》は術式の《調伏術》、つまり対魔物戦を想定した術式なのだが、呪的エネルギーを問答無用で燃やすので……
「えっ、何で!?」
呪力を外に出す異能は、《煉獄》使用時に呪力が燃やされてしまい不発になる。
ただし直接的な呪的エネルギーしか燃やせないのが欠点。体内の呪的エネルギーは燃やせないから、例えば身体強化の異能といった肉体内で完結する異能は不発にできない。
「そら」
「ぐっ!?」
軽い掛け声で全体重を乗せた掌底を山岸の腹に喰らわせて吹っ飛ばす。痛みで悶絶して動けなくなる
ぐらいには手加減をしている。現人神とはいえ女性だし、
子ども産めなくなったら大変だし? それぐらいの配慮はできるんですよ。向こうが殺意や悪意を持ってたら別だけど。
「大丈夫か?」
お腹を抱えるようにして蹲っている。自分でやっといて言っていい台詞じゃないな。
「まだまだ、これからです」
重い身体を無理矢理動かしているような鈍い動きで立ち上がる。やはりそうこなくては。まだまだ序盤もいいところだし、そろそろ中盤戦といきますか。
「さあ来い!」
と言ったら山岸が音もなく消えた。これは、あいつの代名詞……!
バッと身体を後ろに翻すと、空中に浮かぶ山岸がいた。
いや、浮かぶというよりは立っていると言った方が正しい。
あれは《空間存在》。簡単に言えばあらゆる空間に自身を存在させる異能だ。先程の消えた現象も恐らくこれ。自身の空間座標を変えたのだ。
立っているのに落ちないのは自身を座標に固定しているから。空間支配系統異能者の中でこんな芸当ができるのは俺の知る限り山岸だけだ。
成程、《煉獄》が届かない場所まで逃げたか。《煉獄》の展開範囲が狭いことを見切られたか。
「はっ!」
空中からさっきと同じ攻撃を仕掛けてきた。《煉獄》で防御するが、あの高度まで届くかどうかは正直分からない。試してみようにも、攻撃に回せば防御ができなくなるから、もし失敗すれば今度こそ真っ二つになる。
《十二枚刃》で飛べば距離を詰められるが、何とか躱して接近したとしても、また《空間存在》で転移するだろう。
「どうしました先輩! こんなもんじゃないでしょう!」
「当たり前だ!」
こういう場合の対処法ぐらい考えてある。
「《護法術 影法師》!」
呪符を取り出して投げると、呪符から呪力が漏れ出し人の形になって、俺そっくりになる。
《影法師》はその人の呪力でその人を再現する、いわば分身を作り出す術式で囮に使うのが主だが、こういう使い方もできる。
《影法師》が音もなく《煉獄》を発動する。これで防御をしながら攻撃が可能になる。
防御は《影法師》に任せて俺は山岸に攻撃を仕掛ける。山岸に一直線に向かった《煉獄》は確実に襲い掛かった。
が、山岸は難なく《煉獄》を避けた。そして移動した先からまた攻撃をしてくる。それを《煉獄》でガード。
やはり《空間存在》が厄介だ。こちらはダメージを受けていないので、このままいけば判定勝ちできるが、それでは試験にならない。
……ひとつ、思いついたのがある。どうせならやってみるか。
「《護法術 影法師》」
もう一度《影法師》を出す。だが、一体ではなく四体。これで計五体、俺を含め手数は六体となった。大技、見せてやるよ。
「《白く輝く焔よ 葦燃やすかの如く 疾く盛れ 清浄なる大地へ 転生させよ 調伏術 煉獄》!」
正式呪文詠唱による《影法師》五体同時《煉獄》。正式詠唱をすることにより《煉獄》は本来の力を
発揮し、同時発動による更なる相乗効果で展開範囲を拡大。
《影法師》は呪力の塊なので消えてしまうが、その結果《煉獄》が結界内を埋め尽くす。
「うわっ!」
視界には白い炎しか見えないが、山岸の声を頼りに近づく。さっきまで空中にいた山岸は《空間存在》で動こうにも、《煉獄》が呪力を燃やすため発動しない。
つまり、山岸は身動きが取れない!
「そこだ」
声を荒げず、冷静に務める。こういう時こそ慎重に。
跳んで山岸のところに行き、右腕に全集中力を注ぐ。
そして、掌底を一撃。
神速の一撃を放ち、山岸が結界外に弾き出される。ダメージ量が一定数を超えた。
つまり、HPがゼロになったのだ。
このことで試合終了のホイッスルが鳴る。これがなった時に結界内にいる者は自動的に外へ出されるように設計してある通りに、俺も外に出された。それと同時に《煉獄》と《影法師》も消える。
「どうですか雪路さん」
計測器を見ている雪路さんに話しかける。
「正直言っていい?」
「どうぞ」
「やりすぎ」
ピシャっとはっきり言われた。
「あの白い炎……《煉獄》と言ったか。あれのせいでこちらの制御が不具合を起こした。後三秒続いてたら結界が崩壊していたぞ」
《煉獄》は直接呪的エネルギーに接触することでそれを燃やすから、雪路さんの言う通り結界が燃やされ尽くされるところだったのか。
「それで、一応大丈夫ですか?」
「維持・展開に問題は無し。機能も問題無し。基準にも達してる」
「……つまり?」
返答は分かっているが、遠回しに言ってるのだし食いついておこう。
「合格。本番を待つだけだ」
「そうか」
なら今日の仕事は終わったな。
「私はこれの最終調整をして帰るつもりだが、君はどうするつもりだ?」
「俺は帰ります。仕事の準備があるんで」
「仕事? 討魔師か?」
「いえ、依頼です」
「そうか。久しぶりに会ったから、気になる話題を提供して好感度を上げておこうと思ったのだが」
何その動機。
「せっかく何で教えてもらっていいですか?」
俺も白石さんとは研究者として話したいことは山ほどある。分野は違うが、研究には必要なことだ。
「今回の神遊祭、興味深い選手が出るそうだ」
あ、そっちっすか。
でも、研究一筋の白石さんが興味深いという選手は俺も気になるな。
「あ、私も聞いたことがあります!」
今まで地面で蹲っていた山岸が復活する。
「確か二日目の式神トーナメントに、土御門が出るって聞いてますよ」
「え、それ本当なのか」
土御門と言えば、陰陽師安倍晴明の子孫であり、現存する最古の陰陽師一族。
「噂なんで何とも言えませんが、もし本当なら大変なことですよ」
「土御門は表には出ない一族だ。常に歴史の影で暗躍してきた一族と言われている。はっきり言って謎だらけ。嘘の可能性が高いな」
「だよなあ。俺もこの仕事七年ぐらいやってるが土御門の人間に出会ったことなんて一度もないぞ」
術式製作の際に土御門家を調べたこともあったが、全く分からなかった。どこに拠点を置いているのか、本当に存在しているのかさえも。
現代社会においては、土御門家は都市伝説と化している。今回もただの噂だろう。
──プルルルルっ。
電話が鳴った。誰かと思えば社長だ。
「はい、鳴神ですけど」
『おう、そっちの仕事はどうだ?』
進捗を確認しに掛けたようだ。
「抜かりなく。直帰しようかと思ってます」
『そうか。だが一つ伝えなきゃいかんことができてな』
何だろう。もしかして追加の仕事か? 七瀬さんの依頼の件で準備しないといけないのに。
『いやな、俺達神遊祭に出ることになった』
「……は?」
『競技は最終日のトーナメント団体戦だ。出るのはお前と野々花と月島さん、あと日鳥と三善だ』
俺の知らないところで謎の企画が進行していた。
「ちょっと待て。どうしてそうなった」
『……宣伝?』
「疑問形にするなよ」
大事なとこだぞそれ。
「で、立案者は誰だ」
どうせ社長だろうけど、聞いておかない訳にはいかない。責任の所在をはっきりせねば。
『立案者は月島さんだぞ』
「……ごめん今何てった?」
『だから、月島さん』
え? 我が社の経理担当の月島さん?
「何でそんなことに」
『月島さんが言うには、呪具関係ばかりでなく依頼の数を増やしておきたいんだと。まあ、お前の負担が大きすぎるからな。それを何とかしたかったんだろ。お前に今倒れられたりするとうちの収入が激減するからな』
「いや大丈夫ですって。そう大したことでは……」
『いや、お前ばかりに頼ってちゃ会社としても俺としても危険だ。それにこれは全員の総意でもあるんだ』
「…………」
『ん? 何で自分の為にそこまでって感じか? そりゃお前、仲間の負担を分けられないような組織なんざ崩壊まっしぐらだし。……お前が自分の事を世間に晒したくない事情も分かる』
「なら……」
『まあこれは俺達の我が儘だ。お前が嫌と言うなら俺達も受け入れるさ。……で、返答を聞こうか』
サプライズにしてはもう少し熟考して欲しかったけど、社長の言う事も一理あるし、皆がやる気ならそれを断る理由もないな。
身バレはしたくないけど、対策すれば何とかなるだろうし。
そして何よりも、もう本選出場決定みたいな言い方してるし。このタイミングで棄権すれば会社の評判がた落ちだ。
社長め、絶対断らせる気ないじゃん。
「……しょうがないです。良いですよ」
『ありがとな』
どの口が言うか。
「知ってると思いますけど、俺二日目にも仕事で参加する予定ですから」
『おう、給料上げとくぜ。期待しとけ』
「ありがとうございます」
金には困ってないが、労働の対価としてちゃんと貰うものは貰っとかないと。
『じゃあもう直帰でいいから、ちゃんと備えとけよ』
「なら一度会会社に戻って呪符の補充したいんですが」
神遊祭にでるのなら、呪具のメンテナンスはしておきたい。
『そうか。じゃあ待ってるからな』
「了解」
と、電話を切る。
「先輩、何かあったんですか!? すごい険しい顔してましたけど……」
あ、そんな顔してた?
「話ぶりから察するに、神遊祭に出るのか」
「えっ、本当ですか!?」
山岸が反応する。
「察し良すぎない?」
「で、何に出るんだ」
話の展開早すぎない?
「最終日のトーナメント団体戦」
「ああ、三日月の共鳴総出か」
「説明いらずで助かる」
「えっと、三日月の共鳴って先輩が所属している会社ですよね?」
「ああ。小さなことから大きなことまで、何でも請け負うあなたの助っ人! それが三日月の共鳴だ」
とびきりの笑顔とモーション付き社訓で説明すると、二人がポカーンとする。
「あっ鼻血が……」
「君がやると見てはいけないもののような気がするな……」
「なんでさ」
特に山岸、なんで鼻血出してんだお前。
「……中性的かつ童顔なだからか」
「冷静な分析ありがとうよ」
その自覚はあるけどさあ、仕方ねえだろこれの考案者(月島さん)が権限使ってまで命令してきて身に
沁みついてるんだから。
三日月の共鳴メンバー全員がこれをできる。社長は月島さんがストップかけたから例外だけど。
「そんなことはどうでも良くて、俺は準備があるから帰る」
「そうか。何か不具合があったら連絡させてもらうぞ」
「ああ、それでいいよ」
「私は警備の仕事があるのでこれで解散ですね」
「じゃそういうことで」
俺たち三人はそれぞれの役目を果たすために解散した。俺は三日月の共鳴の倉庫へ呪符の補充に。
雪路さんは装置の調整のため異科研に戻り、山岸は警備のスケジュール確認のために警備室に行った。




