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目立たず静かに過ごしたい!  作者: 文月灯理
第二章 祭りだわっしょい神遊祭!
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雷電の申し子⑦

「ご馳走様でした!」



「はーい、お粗末様。楓ちゃん」

翡翠さんのご飯めちゃくちゃ美味しかった! 師匠はいつもこんなの食べてるなんて羨ましすぎる! 私翡翠さんに料理教わろうかな。



 私と一緒に食べてた音無君は師匠から貰った呪具で特訓したいと言って家に帰ってしまった。私もすることないし、どうしようかな。



そんなことを考えていると、金髪でぼさぼさで毛先が跳ねている、光明さんと同じくらいちっちゃい女の子がやって来た。服装もダボダボのトップスに『労働=死刑』という、随分と資本主義に対して挑発的なものを着ていた。



顔立ちが良いのと、その子の雰囲気が服装と妙に合っていて特に気にならないが、女の子なのだし、ちょっとぐらいおしゃれに気を遣ってもいいんじゃないかな。



「ん、お客さん?」



「はい! 松村楓です! 師匠の弟子をやらせてもらってます!」



「師匠……? ああ、透の事か」



「はい!」



「あたしは金鈴、透の式神だよ。よろしくねー」



 ぶっきらぼうに自己紹介する金鈴ちゃん。ダウナー系? の子なのかな。どことなく小動物的な愛らしさがある。



そんな金鈴ちゃんはフラッとソファに寝転んだ。い、一連の流れに一切の無駄がない。実に洗練された動きだ。師匠の式神だということも頷ける。



「ねえ、金鈴ちゃん」



 思わず話しかけてしまった。金鈴ちゃんが可愛いからいけないんだ。



「ん、なーにー?」



 間延びした声で返事する金鈴ちゃん。



 かーわーいーいーっ!



 けど絶対に声や態度には出さない! 警戒心を持たれないようにしないと。小動物は逃げちゃう。



「あのね、聞きたいことがあるんだけど……」



「?」



「八十神って人、知ってる?」



「……どこで知った?」



 低く唸るような、小さく、しかしはっきりと聞き取れる声で金鈴ちゃんは言った。思わず仕事モードになりそうなぐらいの、威圧を感じる声だった。小動物が出す声じゃないよこれ!



「さっき、近くのショッピングモールで師匠と言い争いしてたの」



 言い争いとは言ったけど、あれはどちらかと言うと師匠が八十神って人に一方的に絡んでたって言

った方が正しいかも。



「……そう、ちょっとついて来て」



 そう言われ素直についていくと、金鈴ちゃん部屋と思しきところに案内された。金鈴ちゃんの性格からは想像ができない程整理整頓がなされた部屋だったのは驚いた。もっと散らかってたりするかと思ってた。



「で、八十神だっけ」



 金鈴ちゃんはくるくる回る椅子に座る。私はベッドに腰掛けさせてもらった。



 うーんいい匂い。



じゃなくて、今は八十神って人のことだ。



「最初に言っておくけど、八十神については他人に喋らないこと。じゃないと身の安全は保障できな

いよ。特に透に言っちゃダメ」



そんなにヤバい人なのか。そうは見えなかったけど……。



「今、そんな風には見えないなー、とか思ったでしょ」



「なんで分かったの!?」



「八十神と会った人間は皆そういう第一印象だから。実際は悪魔だけど」



「悪魔? 何かの比喩なの?」



「比喩でもなんでもない、ただの事実だよ」



 ? なんだか話がこんがらがってきた。



「前置きはこの辺にして本筋に入ろうか。奴の名前は八十神陣。職業は自称心理カウンセラーで、異能特性は《生命》。材料を元に命を創る異能を持ってる。異能タイプは変質系統だったかな」



「命を……」



 そう言えばさっきもそんなことを言っていたような。



 でも命を創るって、そんなことが実際に可能なんだろうか。そんなの、まるで神様だ。



「でも実際は異能特性とは外れた異能を使う。姿を消したり、異能を無効化したり」



「え? それっておかしくない?」



異能者が持つ異能特性は一人につき一つ。私のようなレアケースでなければそんなことはありえないが、異能者の基本情報を言った金鈴ちゃんが知らないはずもない。



そしてもし異能特性と違う異能を使えるとしたら、元々持っている異能特性から派生したということになる。



けど、金鈴ちゃんが例として挙げた異能は、《生命》とはかけ離れている。連鎖的に異能を獲得したとしても、離れれば離れる程異能の効力は落ちていく。



けれど金鈴ちゃんの話と、実際にあの男女を消したのを見た限りでは、落ちているどころか熟練された異能のように見えた。



「それ情報が間違ってるんじゃないの?」



 この矛盾を解決するなら、これが一番単純な答えだろう。



つまり、前提が間違っているのではないか? ということ。



しかし、金鈴ちゃんは首をフルフルと振って否定した。かわいい。



「情報元は異能庁だから信用できると思う。改竄された形跡もなかったから」



「そっかあ」



 情報の出元が異能庁と言うならば、確かに信用できる。異能者に関する記録は出生届の時に記される。その時に異能特性が記録され、厳重に管理されている。データと紙面の二重記録なので改竄なんてそう簡単にできることじゃないし、できたとしてもバックアップがあるのですぐわかる。



「でも、気をつけて。八十神の怖さは異能じゃない」



「そうなの?」



「奴の怖さは人間性だよ。人のあらゆる感情を理解し受け入れる。たとえどんなものでもね」



「それは……」



 言葉だけを聞けば何だか良いように聞こえたけど……どこか危険を感じる。まるで命懸けの仕事の時のような、本能が訴えかけてくる警告のよう。



「どんな感情でさえも理解し受け入れるのは並大抵のことじゃない。人間には価値観があり、それは人の根底を成す重要な柱。人間は自分を保つために価値観を脅かすものを敵と認識して攻撃する。

 それを無視するのは、人間性の喪失に繋がる。一方で、自分の価値観に共感されたとき人間はその人を迎え入れる。価値観は人それぞれだから現実には万人に好かれる人間なんていない。だけど奴は万人に好かれるという資質を持ってる。それだけなら良かったんだけど……」



「?」



 金鈴ちゃんが慈愛のような憂いのような顔つきになる。こんなちっちゃい子がしていい顔じゃない。



「奴は人の心に入り込み、全貌を知ることでその人間の行動を支配する。心が弱ってる人ほどね。一種の洗脳だろうね、あれは」



思い返してみれば、師匠も八十神の言葉に従っていた。



「だから、奴と関わらない方がいい。人間じゃ奴には勝てない。人生を滅茶苦茶にされたくなかったら逃げるしかないね」



「……教えてくれてありがとう」



金鈴ちゃんに聞いてなかったら、さっきのイメージが定着するところだった。



「聞かれたから答えただけだよ」



 くわ~~っ、と伸びをして返事をする金鈴ちゃん。めっちゃかわいい。



「……携帯、持ってる?」



「え、うん」



「じゃあ登録しようか。もし八十神と遭遇したら呼んで。あたしが逃がすぐらいはするから」



「え、いやでも……」



「人間じゃ奴には勝てないって言ったでしょ? まああたしも戦闘向きじゃないけど」



 ニシシ、といたずらっぽく笑う金鈴ちゃん。



「うん、分かった」



 金鈴ちゃんと電話番号を交換した。幼女の連絡先、ゲットだぜ!



「じゃあ、一緒にお風呂入るか!」



「え、お風呂!?」



なんでお風呂!? もしかしてあれか、裸の付き合いってやつか!



「え、でも私着替えとか持ってないし……」



「大丈夫、あたしの……はサイズ合わないから、紅葉の服適当に借りればいいよ!」



 金鈴ちゃんが私の腕をつかみ引っ張る。くっ、こんないい笑顔の幼女にこんなことされたら断れるわけないじゃない!



 と、いうわけで、半ば強制的な感じで一緒にお風呂入りました。



 すごく……大きかったです(浴槽が)。



 そして、お風呂から上がった後、紅葉さん? という方の服を借りて帰ることにした。本人に黙って借りて大丈夫? と聞いたら金鈴ちゃんが任せてと言ったので、任せることにした。それはそれとして今度直接紅葉さんにお詫びしないと。



結構長い時間、師匠のお宅にお邪魔しましたが、師匠は部屋に閉じこもったままだった。心配だなあ。師匠の事だから心配なんてする必要ないのかもしれないけど、あんな状態の師匠は初めて見るし、どうしても拭いきれない。



 こういう時、弟子としてできること……。



 ……や、やっぱりえっちなことかな。師匠だって男の人なんだし、その、溜まってる? と色々大変だと聞くし……。



 帰宅途中の往来だというのに、イケナイ想像をしてしまい顔が赤くなる。



 も、もしかして金鈴ちゃんとか翡翠さんとかと……?



 あー! ダメです師匠! 私どうすればいいのかわかりませーんっ!



 こうして、悶々としながら家に帰るのであった。



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